魔法学院 2人の差
「水よ、渦となりて相手の動きを封じる水流となれ ウォータースワール」
トラビスが詠唱するとアルナの周囲に水の渦が現れアルナの手足に絡みつき動きを邪魔する。
「さらに行きます。火よ 短剣となりて相手を裂く攻撃となれ ファイアダガー」
更に詠唱を行い火の短剣を作り出しそれをアルナに向けて飛ばすトラビス。
トラビスとしてはこれで倒すことはできなくてもそれなりにダメージを与えられると思っていた。
しかし、現実はそう甘くなかった。
「風よ、我を縛る渦と火の短剣を消し飛ばせ ウィンドストーム」
アルナの詠唱によりアルナにまとわりつく水の渦と向かってきていた火の短剣があっさりと吹き飛ばされる。
「相手の動きを邪魔して数の攻撃でダメージを与える戦い方はすごくいいと思うわよ。」
戦っている相手のはずなのにまるで先生であるかのようにトラビスの攻撃について良かった点を告げるアルナ。
「次はこっちから行くわね。しっかり防いでね。火よ 数多き矢となり 相手を打て ファイアアロー」
アルナの詠唱により周囲に数多くの火の矢が現れる。
その数が100近くになった時にトラビスに向かって発射される。
「!水よ我を守る壁となりて 火の矢を防ぎたまえ
ウォーターウォール 」
火の矢が発射される前に水の壁を発現させたトラビスだったがその数の多さから焦りが見える。
何本かの火の矢は防いだものの水の壁は破られ何とか躱す動きを見せるも10本程度は直撃してしまったトラビス。
しかし、致命傷ではなかったようでまだ勝敗は決していなかった。
「なかなかやるわね。もう少し早めに壁を破って今ので勝敗が着くと思ってたのだけど。」
素直にトラビスを褒めるアルナ。
「ここまで差があると思っていませんでした…」
そんなアルナとは打って変わってかなりギリギリのところで立っているトラビス。
戦う前に見せていた余裕は今ではもう見られなくなっている。
「そんなに落ち込むことないわよ。多分だけど私が優秀生試験を受けた時の私と同じくらいの実力だと思うから。」
追撃する前に少し会話する余裕を見せるアルナ。
「それではこんなに差ができるほどの努力をしたということですか…天才なのですね貴方は。」
いつ追撃が来てもいいように備えながら会話するトラビス。
「天才ね…私がここまで強くなったのは圧倒的な差を見せつけられたからなの。今の貴方に言ってもあんまりピンと来ないかもしれないけど私が目指すその人は今の私と貴方の差よりももっともっと強さに差があるの。自分が強くなる程その差を感じて落ち込むこともあるくらいよ。」
どこか遠い目をしながら語るアルナだった。