試験開始
その集まりで何となく会話しているとお迎えが来た。
お迎えは2人で1人は見しった顔のヒューバートだった。
もう1人はなかなか無骨そうな顔をしているが開口一番
「オメェらが今回の候補生だな、よろしくな、ガッハッハッ」
と元気よく挨拶をしてきた。
「私がヒューバートでこのうるさい彼はスタンです。よろしく。」
ヒューバートが丁寧に挨拶をする。
「ようランド、ちゃんと眠れたか?緊張して夜更かししなんかしてねえよな、ガッハッハッ」
スタンはうるさくランドに声をかけた。
ランドのあの傷はスタンの声で反響してついたんじゃないかと思えるくらいうるさかった。
ランドは余裕そうに手をヒラヒラさせて返事していた。
「それでは皆さんを案内いたしますので私たちについてきてくださいね」
そうヒューバートが声をかけ前を歩く、最後尾はスタンがついてくる形となった。
「本来なら案内役は1人なんですけど、昨年は候補生が多く試験に向かう前に最後尾にいた人がいつの間にか連れ去られていて、その時は何とかなったんですけど同じことを起こさないようにと2人体制になったんです。うるさいのが一緒ですみません。」
先頭にたちヒューバートが事情を説明する。
こんなうるさいのがいたらそれは何もできないなと思いながらあっさりとストライプ騎士学院についた。
昨日も見たがやはりとてつもなく大きい学院だ。
何度観ても圧倒されているクロノをよそにこれからの試験を楽しみだと言わんばかりにテンションをあげるノアオがいた。
「さて皆さんようこそ、私は今回の試験全般の担当をいたしますカルナです。」
眼鏡をかけた優しそうな先生が候補生に声をかけた。
「ついて早々ですが時間がもったいないので早速試験を行います。皆さんついてきてください。」
カルナが先導して候補生を連れていく。
「クロノ君はこっちだよ。」
共について行こうとしたクロノにヒューバートが声をかける。
そのまま案内された場所は試験の様子が見える元いた世界のアリーナの2階席のような構造をしていた。
案内をしたあとはここで静かに応援してるんだよといいヒューバートも試験の場へ向かっていく。
そんな中見学席に1人の生徒が座っていた。
1人はつまらないからとクロノが声をかけるとその人は一緒に見ることを了承してくれた。
「子供には優しくしないといけないですから。」
優しそうな笑顔でそういうとエリッツだと自己紹介してくれた。
どこかで聞いたことある名前だと思いながらクロノも自己紹介を返した。
「君のお兄さんが候補生なんですね、見た感じ随分若いですね。すごく優秀なんでしょうね。」
「そうですね、兄さんが負けるのは考えられませんね」
「随分お兄さん思いなんだね、兄弟仲がいいのはいい事だ。」
頭を撫でながらエリッツは優しくほほ笑みかける。
多分冗談だか家族思いな子供の戯言だと思われているようだったけど特に気にしてはいなかった。なんせノアオが負けるのは考えられないというのはただの事実でしかなかったのだから。
「それでは試験を開始いたします。」
そう声がかかって試験が始まった。
体力試験(会場の中を何周もランニング)、筋力試験(とてつもなく重たい剣を何回触れるか)、剣技試験(目の前の鎧相手に好きな武器を選びどれくらい傷が付けられるか)といったものを淡々とこなしていたがノアオは試験が進むにつれてつまらなさそうな態度が見えてきた。
「この後は実技試験とするので一旦休んでてください。」
試験官のカルナが試験生に声をかけて一度見えなくなるところまで下がっていった。
「なんだかやる気が見えないみたいだけどどうしたのかな?」
つまらなさそうな顔をしているノアオに対して心配そうな顔でヒューバートが声をかけた。
「走り回ったり重たいもん持たせたり、更には動かない的叩くことになんの意味があるのかよくわかんなくて、こんなので何がわかんのかなと思ってね。」
ダルそうにノアオが答える。
「まあ、そう言わないで。次はお待ちかねの実技試験だから。実技試験はね今までの試験の成績に合わせて組み合わせを決めて勝った方が先へ進めるってものだよ。」
ヒューバートは試験待ちをしている皆に聞こえるように話た。
「それでは今までの感じだと私とノアオ君になりそうだね。」
キールは申し訳なさそうにノアオに声をかけた。
周りの人もみな一様に可哀想にという顔を向けている。
それもそうだろう、ノアオとクロノとヒューバート以外はキールが勝つ未来しか想像出来ていないのだから。
「あれ?ノアオ君って体力測定2位だったよね?」
「そうだよ、だから残り2つの試験で圧倒的に悪い成績をたたき出したんだ。」
「へっ?もしかして実技試験について知ってたの?」
「もちろん知らないけどこんな試験で何も分かるわけないし、それなら今までのは前座でこれから本番のようなのがあるんだろうなと思ってね。それに毎年半数くらいしか合格者がいないって言うのは候補生同士で勝負して決める試験があるんじゃないかと思ってね。」
「なるほどね、それでわざと手を抜いたんだね。」
「どうせなら少しでも強いやつとやりたかったからね。」
「そっかー、キール君と当たっちゃうか。うーん、キール君なら一般でも余裕で受かるだろうから良いけど、優秀生じゃなくなるって言うのはねえ。」
その言葉を聞いたキールは務めて冷静に振る舞いながらヒューバートに反論をした。