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お願い!大好きな従者に初料理!!



「お願い!」



「ダメです。」



いま、目の前で起こっていることを簡単に説明すると、床の上で目をキラキラさせながら懇願している姫様と


それをにこやかな笑顔で拒絶するメイドさん。


このメイドさんはアイリーンの専属従者のジーネット・ゴンヌさん。アイリーンが脱走して毎回迎えに来ているため


顔馴染みになってしまっている。このやり取りは姫様が毎日ここにきてゴンヌさんが迎えに来るたびに行われている


恒例行事だ。詳しく話すと姫様が毎回脱走してくるのは面倒だからここで住み込みで働きたいっていうことらしい。


いやいやいや、姫様何言ってるの?普通に考えて無理でしょ?あなたナフィベルタ帝国の王女ですよ?


そして毎回ゴンヌさんに断られるまでがセット。



「なんでダメなのよ!ケチゴンヌ!!」



おっと、口が悪いとこがでましたね、昨日は確かバカゴンヌだったけど。まぁそれだけゴンヌさんとの信頼関係が深いってことなのだろう。



「お嬢様、毎回説明しておりますが、一国の王女がどこの馬の骨、いえどこのペンギンの骨とも知らぬ人と一緒に暮らすなんて許可できるわけありません。」



このメイドめ。まぁほぼ毎日会ってるから徐々に仲良くなって今ではこんな冗談もいえる仲に。冗談だよな?



「知ってるペンギンの骨なんだからいいでしょ!」



いや、姫様。その返しはおかしい…。


結局その日はゴンヌさんが姫様を抱えて帰って行った。すごい力だなぁ。



翌日、今日も今日とてアイリーンは(脱走)やってきた。



「ねぇペンさん、どうやったら私ここで働けるかなぁ。ペンさんもゴンヌ説得してよ。」



俺が出した水を飲みながらテーブルに頬杖をつきながら座っている。こうしてみると王女様なんだなぁって思えるくらい美しい。


悩んでる内容は本当にくだらないけど。



「そういえば、アイリーンはどうしてここで働きたいんですか?ぶっちゃけまだ店らしいこともしてないから給与も払えないし何もしてないですよ?」



そう、この店はまだ営業してないし、どんな店にするかもほぼ決まってないのだ。


そんな店で働きたいって言ってる姫様の気持ちが正直わからない。城からの隠れ家にしたいとかの理由だったら出禁も考えないと。



「それはあなたがいるからよ、ペンさん。」



ん?俺?なんかしたかな?って思っていると



「まずあなたは私を助けてくれた、恩を返したいし。ペンさん面白いし。それに…。」



にこにこ話していた姫様が急に真面目な顔になって続きを話し出した。



「城では私は何もできません。従者や執事が全部やっちゃうから。私だってちゃんとできるってことを証明したいの、役に立ちたいの!」



その言葉を聞いて俺は衝撃を受け脳裏に過去の自分がフラッシュバックした。


なにをやっても上手くいかない、邪魔者呼ばわり、誰かの役に立ちたくてしたのに受け入れられない。


ただ、ただ誰かに認められたかっただけなのに。


「ペンさん?」とアイリーンが呼ぶ声で俺はハッと意識を戻した。心配したように顔を覗き込んでいる。


数秒間固まってしまっていたそうだ。俺は謝りながら姫様の頭を撫でた。



そしてまた翌日。アイリーンがやってきて俺はキッチンに姫様を呼んだ。そして呼びのエプロンを姫様に差し出した。



「今からアイリーンに料理を教えるから一人で作ってみるんだ。」



俺は姫様の気持ちを汲んで協力することにした。その作戦として姫様一人で料理を作ってもらう。


そして従者に食べてもらい、姫様も一人でできることを伝えないと絶対に許可は下りないだろうと思ったからだ。


そう姫様に伝えるとやる気満々になってエプロンを手に取り、着替えはじめた。


正直、料理を作ったからといって許可が下りるとは思っていない。そんな簡単な話ではないことも。


でも姫様には自信をつけてもらいたいし、従者も姫様にもできることがあるとわかってくれたなら城の生活にも改善があるかもしれない。


だからこの作戦を実行する。



「ペンさん、準備できたよ!何つくるの?」



そう、初心者がつくる料理といえばこれでしょ。



「今日はカレーを作るよ!」



俺は昨日アイリーンと別れた後に、裏山にいってライさんに会っていた。そこでこの山に野菜があるところはないか尋ねたところ


モモンガのレイドさんが農家をやっているそうなので必要な野菜を購入させてもらった。


最初は譲るって言ってたけど、大切に育ててた野菜を貰うわけにはいかないからしっかり支払った。


ジャガイモ、ニンジン、玉ねぎ。とりあえずこれだけあれば具材には困らないだろう。


レイドさんがおまけって言って野菜の種をくれた、これで裏の畑で自己栽培すれば助かると思いありがたく受け取った。


そしてアイリーンには野菜の皮むきと切ってもらう作業をお願いしたのだが、初めての作業だから見ててヒヤヒヤした。


しかし、その眼は真剣そのもの。玉ねぎで涙し、指を包丁で切ってしまう場面もあったが、処置しつつ野菜をすべて切り終えた。


次は玉ねぎを炒めよう。先ほど切った玉ねぎを寸胴に入れ油で炒めていく。泣かされたのが悔しいのかかき混ぜる際にこんにゃろって言いながら混ぜてる。


いい色合いになったらジャガイモとニンジンを入れてさらに炒める。適度に炒めたらそこに水を入れてって


コラコラ、ポン子。その水はカレーに使う水だから飲んじゃダメ!


ポン子に別の水を与えてから、寸胴に水を入れてコトコト灰汁をとりながら煮込む。


そして肝心のカレー粉なのだが庭に生えてた香辛草!あれに塩を混ぜて使えばカレールーになったのだ。


昨日のうちに作っておいたからそれをいれてまたコトコト煮込めば、はいカレーの出来上がり!


それをレイドさんから別途購入した炊いたご飯の上にかけたら完成!



「お嬢様、お迎えにあがりまし…あら、なんか香ばしい匂いがしますね。」



ほんとピッタリなタイミングでゴンヌさんが姫様を迎えにやってきた。


タイミングばっちりすぎて逆に怖いんだけど、どこかで覗いてたわけではないよね?


俺は姫様に目配せをしてカレーの器を持ちながらゴンヌさんの前に行き



「ゴンヌ、いつもありがとう。これ私が作ったの。食べて?」



「お嬢様が…私に?」



ゴンヌさんを席に座らせ、目の前にカレーを置きスプーンを手渡す姫様。


緊張のまなざしでゴンヌさんを見つめている。姫様、気持ちはわかるが食べにくいだろうからやめたげて。


スプーンでご飯とカレーを一緒にすくい口の中に入れモグモグ。



「美味しい、ほどよい辛さがとてもおいしいです。」



それを聞いた姫様はホッとした表情を浮かべ、ゴンヌさんに作っていた時の話をしている。


作ってよかった。これで城の中の生活も少しは改善されるといいな。


でもそしたら姫様がここにくることもなくなってしまうかも、それはそれで寂しいな。



「だからねゴンヌ!私ここで働きたいんだけど!」



「はい、いいですよ。」



は?俺の頭の中の時が止まった瞬間だった。

今週もありがとうございます!

次回の予定は6月19日を予定しています。

よろしくお願いします。

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