姫を救え!必殺のおもてなし!!
リスの親子を助けてから3日。俺は庭に生えていた草を使ってポーションやその他の薬を作っていた。
リスの母親のリンさんのお父さんはこの裏山の主でライさんという。そして翠ちゃんにポーションの話をしたのもライさんだった。
俺はライさんに非常に感謝され、なにかお礼をとのことだったので山の一部を貸してもらう許可をもらった。
これで自給自足できることはできるであろう。その他にも手伝いとかあったら山の者で協力するって言ってくれた。
この国でほとんど知り合いがいないから非常にありがたい申し出だった。なのでこちらも何かあった時はまた協力しますとこたえた。
そして俺は早速庭の裏の一部を耕し、何を植えようか考えているところだ。庭の横の草むらはそのまま薬草等の薬畑とすることにしたので
採取した草を今はすり潰しているところだ。これは眠り薬になるらしい。不眠症の人とかにはいいかもな。
「さて、今日のノルマは終わりっと。だいぶ薬を作るのは慣れてきたな。ポーションは翠ちゃんが取りにきたら渡してっと。」
「た、助けてください!!」
勢いよく扉が開いて中に入ってきたのはとても身なりの良い少女だった。少女は貴族が着ているようなドレスを着ていたが
足は靴を履いておらず、ところどころ汚れている感じで、走ってきたのか息を切らし顔はとても神妙な様子だった。
少女を観察していると店の外から人が走ってくる音がした。少女はその音を聞いて身体が震えだし、もしかしたらこの子は誰かに追われているのかもしれない。
そう思っていると少女は焦りながら店の奥まで入ってきてキッチンの流しの扉を開けるとその中に隠れた。小柄とはいえよく入ったな。
「ちょいとお邪魔するぜぇ。」
少女が隠れてしばらくすると黒いスーツにサングラスをかけたいかにも怪しい二人組が店の中に入ってきた。
1人はスラっとしたスタイルでもう1人はちょっと小柄でぽっちゃりしている、よくギャグ漫画に出てきそうな典型的なコンビだった。
辺りを疑っているのかキョロキョロして落ち着きがない。そんな二人に俺は話しかけた。
「いらっしゃいませ、すみませんがまだオープン前なんですよ。せっかく来てくれたのにすみません。」
俺は二人の前に出ると営業スマイルを見せながらペコペコ頭を下げた。前世で培った営業スマイルは今も健在だと思う、姿はペンギンなんだけどね。
「いや、俺たちは客じゃないんだ。小柄で身なりのいいお嬢さんがこっちに来なかったかい?」
どうやらこの人たちが探しているのはあの少女らしい。彼らの話を聞くと2人は商人で旅をしていたところ先ほどの少女が
ぶつかってきて商品がダメになったらしい。その後少女が逃げたため追いかけている。どこに行ったか教えてほしいとのことだった。
俺はさっき店の前で走る音が聞こえたからそれのことかな?といいながら彼らにお疲れ様です、サービスですよとお水を出してあげた。
2人は「お、ありがとよ」といいながら飲みほした。そしてぐっすり眠ってしまった。
俺は2人がこの店に入ってきたときに電子手帳を使って鑑定をしていた。その結果二人が商人ではない、誘拐犯だと知っていたのだ。
だからとっさに二人の水に眠り薬をいれて飲ませて眠らせたってわけ。
さっきまで眠り薬を作ってたからすぐ用意が出来てよかったよ。この二人はとりあえず縛っておこう。
「さて、もう大丈夫、出てきても大丈夫だよ。」
2人をロープで柱に縛り上げると、俺はキッチンにいるあの子に声をかける。するとそっと扉が開き、周りの様子を伺いながらでてきた。
キッチンからそっと覗きこむと、眠って縛られている二人を見てホッとした様子で話してくれた。
「助けてくれてありがとう。あなたのおかげで助かったわ。えっと。」
「あ、俺の名前はペンだよ。まだオープンしてないけどここの店主さ。」
そういえばまだ自己紹介をしていなかったと思い、俺は簡単に自己紹介をする。
すると少女も俺に自己紹介をしてくれた。
「私の名はベアトリス・アイリーン、ナフィベルタ帝国の王女よ。」
少女の名を聞いて俺は目を丸くして驚いた。今目の前にいる少女はこの世界に来てノーランさんと共に目の前まで行った帝国の王女様だと!
道理で着ている服もいいし、気品もいい。さすが王女様だなぁ。
そしてそこで眠っている二人は王女が従者の隙をついて城を脱出した際に、街で声をかけられ誘拐されそうになり、しかし途中で靴も投げ出して逃げてここまできたみたい。
いや、まず脱出してくるなんて恐ろしい王女様だなぁ。
「ふふ、あなたのこと気に入ったわ。これからよろしくねペンさん。」
俺はいったいこれからどうなるのだろう。とりあえず誘拐犯と王女をナフィベルタに送り届けることから始めよう。
ここにきてまだ日が浅いのにいろんなことが起こるなぁ、と感じるペンなのであった。
今回もありがとうございます。
次回の更新は6月5日の予定です、よろしくおねがいします。