初依頼!リスの親子にお薬を!!
建物の中を散策していると、倉庫のような部屋がありそこを開けると丸テーブルと木製の椅子が複数置いてあった。
天井に目をやると縄梯子があり、そこには扉があった。屋根裏部屋だろうか?また後から調べてみよう。
倉庫を出て大広間に戻り、今度はキッチンに向かった。やはりここは飲食店だったのだろう、キッチンは大きくて広い。
それに大きな冷蔵庫がある。この国って電気あるんだなぁって思いながら引出しをあけたりと散策していく。
電子手帳に仕事場を提供って書いてあったし、俺にカフェとか開けってことなんだろうか。
でもカフェを開くにしても問題はある。まずは食材をどうするか。飲み物にしても食べ物にしても
どこからか仕入れなければいけないが、俺にはまだそんな伝手もない。
そしてここにお店を開いたとしてお客さんは来るのかわからないし、ニーズもわからない。
とにかくお店をするにしてもしないにしても情報が足りないのが現状だな。もう少し調べてみよう。
俺は家の外に出てみた。家の横にはスペースがあり、草が生い茂っていた。
「んー、草むしりとかした方がいいのかな。」
雑草をむしろうとしゃがみこむと電子手帳が突然『ブーブー』とバイブレーションが鳴った。
電子手帳を開いてみるといつものテトSPではなく新しいページの鑑定が点滅している。
「鑑定?対象物をかざせってあるけど。」
どのようにすればいいのか悩みながら電子手帳を動かしていると雑草と電子手帳が重なった時に『ピコン』と電子音が鳴った。
画面を見てみると雑草の写真が映っており薬草と書いてあった。
「なるほど、調べたいものにかざすと種類と使い方とかが載るのか。」
どうやらこの雑草に見えるのは薬草らしい。細かくすり潰して熱湯で溶かしてろ過するとポーションになるか。
しかもここにあるのは薬草だけでないみたい、眠り草、香辛草、煙草。
同じような草なのにいろいろな種類があるんだな、使えるかもしてないしこの辺りのは採取しておこうかな。
俺は草の種類をわけながら採取して袋に詰めていった。30分ほど採取していたら袋がいっぱいになったのでそろそろやめようとすると
どこからか声が聞こえる。辺りをキョロキョロしていると、建物の裏側から微かだが聞こえてきたのでそっと覗いてみると
「グスッ、ママァ…うぅ。」
見たところリスの子供が泣いている。迷子にでもなったのかな?心配になった俺はリスに話しかけた。
「こんにちは、こんなところで泣いてどうしたんだい?」
突然話しかけられ驚いたようだが、自己紹介するとリスは落ち着いて答えてくれた。
この子はリスの翠ちゃんといい、泣いていた理由を尋ねるとどうやら迷子ではなく病気のお母さんを治すために薬草を取りに来たのだがどれが薬草かわからないとのこと。
「それなら、俺がさっき薬草を採取したから分けてあげるよ。」
「いいんですか?でも薬草を手に入れても、そのあとどうしたら…。」
翠ちゃんはどうやらポーションの作り方がわからず、ただ治すには薬草が必要だと言われたから探していたらしい。
そんな翠ちゃんはこっちをじぃっと見つめている。
さてどうしよう、俺はポーションの作り方を知っている。でも作ったことはないし、、俺なんかが役に立つわけがない。
申し訳ないけど、薬草だけ渡して他の人に頼った方がいいだろう。俺は翠ちゃんにそう伝えた。
「お願いします!ペンさんが頼りなんです!ママを、ママを助けてください!お願いします!」
涙ながらに俺にすがりついてくる翠ちゃん。俺なんかが役に立てるのか?と思っていたが今まで誰にも頼りにされなかった俺が頼りにされている。
お母さんを治したいって気持ちを無下にするなんて俺にはできない。俺は覚悟を決めた。
「わかった、ポーションを作ってみる。だから泣かないで待ってて!!」
俺は翠ちゃんの頭を数回撫でてから、薬草の入った袋を持って家の中に入った。後ろから翠ちゃんもついてきている。
まずキッチンに行き、棚にかけてあった鍋の中に水を入れてコンロに置き火をかけた。そして倉庫に入ると入り口横の棚にさっき薬を潰す道具があったのをみていたので
それを取ってからキッチンに戻った。薬草を袋から取り出して潰す道具の中にいれてゴリゴリと薬草を潰していく。
はたしてこれくらいでいいのだろうか?と思いながらすり潰していくとお湯が沸いたので薬草を湯の中に入れ混ぜていく。
そして湯の中に入れた薬草をゆっくりとヘラで混ぜていく。翠ちゃんは俺の作業を見ながらソワソワしている。
この方法で合ってるのかわからないが、思いつく方法でやっていくしかない。
ある程度煮込むと俺は火を止めて少し冷ましてから、同じく倉庫にあったろ過器を持ってきてそこに鍋の中身を入れて濾していく。
濾されたまるで緑茶のような液体がビーカーの中に落ちていく。俺は電子手帳を取り出し、ビーカーの中に入っている液体にかざしてみた。
鑑定すればこの液体の正体がわかるはずと思い、電子手帳の画面をみるとそこには『ポーション』との文字が出てきた。
「やった!翠ちゃん!ポーションができたよ!!さっそくお母さんのところに持っていこう!」
翠ちゃんは喜びながら、一緒に家を出て裏の山を先導しながら登っていく。
20分くらい山を登っていくと、翠ちゃんは一本の木をトコトコ登って樹洞の中に入って行った。
どうやらここが翠ちゃんの家らしい。俺が樹洞を覗くと体調が悪そうなリスが一匹丸まっていて、その横に翠ちゃんが涙目ながらにいた。
「ママ!お薬持ってきたよ!これ飲んで早く元気になって!!」
どうやらかなり衰弱しているようで起き上がり飲むことも出来ないようだ。翠ちゃんの泣き叫び声を聞いたのか他の動物たちも集まってきて心配している。
俺はここまできたら助けてあげたいと思い、カバンの中を必死になにかないか探った。
「なにかないか、ん?これだ!」
俺はカバンの中に入れていたハンカチを取り出し、ポーションを湿らせてリスの母親の口元にそっと置いて飲ませた。
この作業を数回繰り返したところ、リスのお母さんの表情は少しずつ良くなっていった。
するとリスの母親が身体をゆっくり起こして俺に話しかけてきた。
「ありがとうございます。私はこの子の母親でリンと申します。あなたは命の恩人です。なんとお礼をいえばよいか。」
「ペンさん!ママを助けてくれて本当にありがとう!!」
リスの親子から、周りにいた動物たちから感謝の言葉を告げられて俺は泣きそうになった。
感謝の言葉なんて以前の俺はいつ言われただろう、誰かの役に立てた…。こんなうれしいことはない。
俺は抱き合い喜びあうリスの親子を見ながらこの国で誰かの役にたてることをもっとやろうと誓ったのであった。
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次回は5月29日を予定しています。
よろしくお願いします。