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プロローグ

毎週月曜日に投稿できるように連載していきます。

久しぶりの連載なので緊張しますが、よろしければ感想お待ちしております。



……やめろ!



「黒牧くん!君はいつも営業成績悪いよ!」



…やめろ!



「黒牧!お前この書類ミスが多すぎるぞ!」



…お願いだから!



「颯太!頼んだの買ってきてって言ったじゃん!」



やめてくれ!!




「「「ほんと、役立たず」」」




バン!!!!!!!




夜中に響く鈍い音。走馬灯のように頭の中を駆け巡る状況を払拭するかのように1人の男が電信柱に拳を叩きつけた。


俺の名前は黒牧 颯太。今年で30歳になるどこにでもいるような会社員だ。ただ今は上司に怒られ、同僚に怒られ、彼女にも怒られ。


メンタルが地底の底まで落ちてしまっている。今に始まったことじゃないが俺は幼き頃から何をやっても上手くいかない。


その結果、みなから「役立たず」の称号を手にしてしまっている。毎度なので慣れてもいるが、やっぱり精神には響く。


そして俺は朝彼女に買ってくるように頼まれ、忘れたままに帰宅したため、再度買い物に出かけ購入したトイレットペーパーの袋を握りしめ帰路につく。


忘れた俺が悪いけど徒歩で行ける距離とはいえコンビニは結構距離がある。明日じゃダメだったのかなぁ…。


そんなことを考えながらも自宅近くの交差点に着いた。この横断歩道を渡れば自宅につくのだが、ちょうど歩行者信号が赤に変わってしまった。


横断歩道手前で信号を待っていると一匹の白猫が交差点の真ん中の道路へトコトコと飛び出した。とても綺麗な整いの猫だったので見入ってしまったが、


奥の方からは軽トラックが走ってきている。猫に気付いてる様子がなく、スピードは落ちていない。




「危ない!」




そう思った時には俺は道路に飛び出し猫を抱きかかえていた。そこに俺に気付いた軽トラックのブレーキの音が聞こえはじめ身体に衝撃がはしったとき、


俺の意識がゆっくりと遠のいていった。微かだが猫の声が聞こえた気がする…。


意識が戻るとそこは真っ白の世界だった。前も後ろも右も左もどこを見ても真っ白。


正確に言えば見えてはいないのだが、そう俺には実体がない。身体がどこにもないのだが、間違いなく「俺」はここにいるのだ。


よくフィクションの世界で真っ白の世界にいくみたいなのがあるが、そんな感じの場所だ。


俺は死んだのだろうか?やっぱりあの軽トラにはねられて死んだのだろう。そして今の俺は魂だけになったと考える方がいいだろう。


なんかフワフワしてるし、落ち着かないが。逆に冷静になれている気がする。


つまり今から俺は天国か地獄に連れて行かれるってことなのだろうか。天使も悪魔もどこにもいないけどこれから迎えが来るのだろうか。


そういえばあの時に助けた白猫はどうなっただろうか?無事ならいいが、まぁ最後に人助けならぬ猫助けができたから本望と思うべきかな。




「余が助けた、猫なら無事じゃよ。」




先ほどまで誰もいなかったところから声がして、俺は意識をそちらにむけた。


そこには神々しい気配を放つ一人の女性が佇んでいた。白髪に透き通るような肌、真っ白のワンピースとストールのようなものを纏っている。


絶世の美女といっても過言ではないだろう。




「そう、褒めるでない、まぁ事実だから仕方がないがのぉ。」




先ほどからこちらの思考が読まれているのか、思ったことを答えてくれる。少し高飛車だが事実だからまぁいいだろう。




「すみませんが、あなたは誰で、ここはどこなのでしょう?それに猫は無事って本当ですか?それから…。」




「まぁ落ち着くがよい、そんなに捲し立てて質問せんでもよかろう、気になることが多々あるだろうが、ワッチが答えていくから安心するがよい。」




俺の怒涛の質問攻めを軽くあしらい、微笑みを返される。くそっ、なんか子ども扱いされている気分だ。


とりあえず、言われた通りに落ち着きを見せ、女性の方を向くと、女性はゆっくりと話し始めた。




「ワッチの名はテト。余が助けてくれた白猫がワッチじゃ、感謝するぞ。」




彼女、テトは淡々と俺に話してくれた。俺はやっぱりテトを助けて死んでいた。

どうやらテトは人間界に遊びに来ていた猫の神様で0時までに帰らないといけなかったのにギリギリになってしまったので


急いでいたらトラックの前に飛び出してしまったとのこと。そして轢かれてしまったとしても死ぬことはなかったとのこと…って




「てことは、俺死に損じゃねーか!どうしてくれるんだよ!!」




「まさか余がワッチを助けるとは微塵も思ってなくてのぉ、許してたもれぇ。」




てへっと両手を合わせ、舌を少し出して謝罪って可愛いなぁ…じゃなくて!まぁ死んじまったのはしょうがないとして。これからどうなるのか。




「余は生き返させる。が、元の世界にというわけにはいかんからのぉ。別の世界にということになるのぉ、それに仮にもワッチを助けてくれた礼として

特殊な力を一つ余には捧げよう、なんでも申してみるがよい。」




なるほどってこれってあれじゃん!小説とかでよくある異世界転生ってやつ!どんな世界なのかな?


特殊な力ってチート能力ってやつだろ!?何がいいかなぁ…


勇者みたいに剣を奮ってみたいし、魔法使いになって空とかも飛んでみたいし、賢者になって知恵の限りに才能を発揮したいし…


いろいろ考えてみたとき、俺の前世の記憶が脳裏に浮かんで俺は呟いていた。




「誰かの役に立ちたい…。」




俺は今まで誰の役に立つことはなかった。もし人生をやり直すとしたら誰かの役に立ちたいとずっと思っていたから。


って、せっかく異世界に行くんだもんな。もっといい能力をもらわないと生き残れるかわからない…。




「かっかっかっ、余は本当に面白いのぉ。気に入ったのじゃ!余には役に立つであろう能力を付与するのじゃ!」




あれ~?なんか違う能力に変えにくい空気になっちゃってるぅ!


しかもなんかニヤニヤしてるし、そうだよ人の思考読んでるんだから確信犯だよこの猫!




「そう怒るでない、余を気に入ったのは本当じゃ、サービスで何個かプレゼントしとくから楽しみにしておくれ。」




正直不安しかないが、もらえるものはもらっておこう。そんな気がする。うん。




「余が行く世界の名はルベルスカイ。気を付けて行ってくるがよい。」




テトにそう言われ、俺は「ありがとう」と礼を告げるとテトは笑顔で手を振って俺を見送ってくれた。そして俺の意識は再度なくなっていき、


白い部屋から完全に消滅した。










「すまぬ、頼んだぞ。」




ボソッと呟いたテトの言葉は誰にも届くことなく、スゥッとテトもその場から消えていった。



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