第一話 終わった仕事
「清水義道さん、あなたはつい先ほど不幸にも亡くなりました。短い生涯でしたが、あなたの人生は終わってしまったのです。」
どこまでも続く真っ白な空間の中にいる俺は唐突にそんな事を告げられた。
唐突のことで何がなんだか分からない。
俺に人生の終了を告げてきた相手は俺の目の前にポツンと置かれた椅子に座っていた。
白装束のようなものを身にまとっていたその少女は、神々しくも決してその美しい顔の主張を邪魔しない銀色の髪に包まれていた。
この世の物とは思えない空間も相まって、女神というものが存在するならそれは目の前にいる少女を指す言葉である、そう思えた。
もしここが本当に死後の世界だというなら俺はいつ死んだんだ、そんな素朴な疑問を解決するために先ほどまでの記憶を思い出す。
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ゲーム制作会社に勤める俺は大きな仕事を終え、長期の休みに入った。
法にうるさいのはいいと思うが無理やり有休取らせるのはどうなのか、、
そんな無駄なことを考えながら俺は帰路についた。
帰宅した俺は、
「よーし、新作ゲーム徹夜でクリアまでやるぞー!」
声を出して気合を入れ、俺はゲームを始めた。
ところがどう頭を捻ってもその後が思い出せない。
そんな俺に目の前の少女が突然話しかける。
「あの、、、亡くなった理由が知りたいですか?」
庇護欲を駆り立てるような声で話しかけてくる。
そんな欲も彼女のすべてを見透かすような瞳を見ると、スッっと引いてしまった。
「そうですけど、教えてくれるんですか?」
ビビりながら答える俺に彼女は、
「はい、天界規定により死因を知ることは権利として定められています。
それと死者に対して、危害を加えることは禁止されていますので安心してください」
そう答える彼女に俺は顔を引きつらせることしかできなっかった。
「ちょっと、勇者きゅんビビってるでしょ。やめてあげなよテュケちゃん」
どこからか現れた金髪の豊満な胸を持った少女がそう話しかけてくる。
おいおい嘘だろ二人目も来るんだよ、、そう考える俺に。
「私はノルン、あなたが勇者として活動する世界を管理してるよー」
もしかして、俺の心が読めてないのか?そう思いその瞳を見るも銀髪のそれとは異なりすべてを見透かされる、そんな気持ちにはならなった。
緊張がほぐれ少女が言っていることが理解できた。
勇者!?勇者やらされるの俺?たぶんこの空間にいるより数億倍ましだと思うが、、、、
「そしてこっちが・・・・ほら自己紹介しなさいよ」
ノルンと名乗った少女は自己紹介をするように促す。
「私はテュケ、あなたが生きていた世界を管理しているわ」
虫の居所が悪そうに答える彼女はノルンというらしい。
「このチチに栄養がいってない腹黒は置いといて、君の死因を教えるね]
後ろで「ハァ?」と言って殺意をバラまいてるのは放っておいて少女は続ける。
「きみは死ぬ直前までゲームをしていた・・・・・ しかし何時間たってもラスボスがたおせなかった・・・」
「もしかして、あとちょっとのところで倒せなくて、台パンして死んだとか?」
チッチッチッと舌を鳴らしながら指を左右に動かして少女は答えを示す。
「惜しい、、台パンしたところまではあってるけどそれだけじゃ死ななかったんだ。
君めっちゃボロい机使ってたでしょ?」
「中学時代からのを使ってましたけどそれがどうかしたんですか?」
少女の問いに俺は答える。
[その机がねー、台パンしたらぶっ壊れちゃってね、、、、」
前からかなりボロいと思ってたけど思ってたけどそんくらいで壊れるほどだったとは、、、
でも机が机が壊れたくらいで死ぬっておかしくないか、そう疑問に思ったそう疑問に思った俺は声に出す。
「でも机が壊れただけで俺は死んじゃったんですか?」
「そこに気づとはさすが勇者きゅんだねー。
こほん、君は死ぬ直前までオニューのパソコンでゲームをしていた、
が、台が壊れたってことは上に乗ってたパソコンも当然壊れるよね?」
「なっ。」ボーナスやらなにやらをたくさんつぎ込んで買ったパソコンを壊してしまったことを知った俺は俺はショックで声を上げ声を上げる。
「さすがの勇者きゅんでもショック受けるよねーわかるよー
自分にそんな金使ったのは人生でも初めて、
そして女を除くと人生で一番金かけたことだもんね」
「なっなんでそれを、、、」
人生最大の汚点を暴露された俺はうろたえ、そんなことをこぼす。
「このノルンちゃんを前に隠し事ができるとは思わないことだねー」
自慢げに話している少女に少し不快感を覚えた俺は少し強めに問う。
「で、結局死因は何なんですか?」
「おっとごめんごめん、君の死因君の死因はショック死だよ。
パソコンが壊れて相当ショックショックだったんだろうねー」
「は?はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ?」
あまりのことに驚いた俺はそんな情けない声を出す。
「わかるよわかるよーそれなりに頑張ってきた人生がこんなしょぼい終わり方だもんねー」
その時少女の後ろから殺意を感じる。
そういえばテュケとか名乗ったのがいたよな、なんで忘れてたんだよと自分自身を恨みつつ次の手を考える。
そうだ勇者がどうたらとか言ってたよな確か、、
「終わったことはどうでもいいんですよ、、勇者がどうたらとか言ってたと思うんですけどそれって何なんですか?」
「おっ過去のことにとらわれないタイプなんだねーそうやって女の事を忘れたのかな?」
「俺勇者になっても世界とか救わずにぐーたら暮らしちゃいますよ?」
「わぁーーーごめんなさいホントに上にどやされるからそれだけは勘弁してー」
「じゃあさっさと説明したらどうなんです?」
コホンと少女は前置きして答える。
「あなたは勇者に選ばれました、すなわち世界を救う運命を背負わされているのです。
誠に勝手なことですが、これは覆すことはできません。
一応ここで私たちと一緒に働くって選択肢もありますけど、どうします?」
「はぁ、そうですか」
結局これだ、、、いつも選択肢ありそうでないクソみたいなやつだ
「わかりました、勇者でもなんでもやってやりますよ」
ヤケクソになりながらそう答える。
「わーお決断早いねー。じゃ早速行ってみよー」
少女がそう言うとあたり一面が光り始める。
「は?ちょとまっt」
「それじゃあ、快適な異世界ライフを!」
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「さあ、君は世界の勇者たりえるかな?」
金髪の女神は不気味に笑う。