プロローグ ハッピーエンドに導いてみせます!
私、ネリ=ディーンには、前世の記憶がある。
そんなことを言い出したらいよいよ頭がおかしくなったのかと周りの人々に心配されてしまうので、平凡な女児を装っているけれども。
私が住んでいる、ラフネカース王国のヴィグレント城。
その第一王子である、エルシオ=ラフネカース=ヴィグレント様。
太陽の光を編んで作った金の髪。
ルビーよりも紅い、切れ長の瞳。
絵本から抜け出してきたかのように美しく、誰よりも孤独な王子様。
前世の私は、彼のことを知り尽くしていた。
それもそのはず。
ここヴィグレント城は、前世に日本の女子高校生であった私がその身を捧げてやりこんでいた乙女ゲーム『ときめき★王国物語』の舞台であり、彼がその攻略対象だったからだ!
前世の私は、いわゆるヲタクだった。
それも『ときめき★王国物語』限定のヲタクであり、とりわけエルシオ様の熱狂的な崇拝者だった。
ゲームをしながら布団の上でのたうちまわり、画面に頭を打ちつけて額にコブを作ってしまうほどのキモヲタである。
そんな病的ともいえる想いが、前世に十六歳という若さにして交通事故で逝った私の魂を、『ときめき★王国物語』の世界に連れてきてしまったらしいのだ。
私が転生したネリ=ディーンという少女は、ゲームの登場人物ではない。
つまり、モブキャラですらない。
だけど、幸い、ディーン家には代々王家との縁があった。私の母は召使長として、今の王子様方の乳母をつとめている。
私がネリに生まれ変わった意味があるとするならば、それはただ一つだろう。
エルシオ様をハッピーエンドに導くことに違いない!
彼の背負っている運命は、あまりにも過酷すぎる。
エルシオ様は、今から十五年後に現れるこのゲームのヒロインと恋に落ちてこそ、初めて幸せになれるのだ。
乙女ゲームなので、もちろんエルシオと結ばれるハッピーエンドだけが全てではない。第二王子ルート、第三王子ルート、それぞれにバッドエンドまで用意されている。
けれども、この世界に限っては、エルシオハッピーエンドルート一択! それ以外はありえない、この私が回避してみせる。
なぜなら、エルシオ様が幸せになることこそが、私の幸せであり本望だからだ。
エルシオ様。
ネリが、貴方を必ずや、ハッピーエンドに導いてみせます!
三歳にして強く決心したあの日から早二年。
ついに、この世界のエルシオ様と対面する時がやってきた。
お読みいただいて、ありがとうございます♪( ´▽`)
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