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魔法少女☆スノー・プリンセス  作者: タイロン
4/21

4話 おべんきょうはむずかしい


 「いっせーのーでー、ゼロ!」


 「うがーっ!?またまけたー!」


 「ふっふーん、あたしにかとうだなんて100年はやいんだなー!」


 小学校に通い始めてから、1ヶ月が過ぎました。

 ひらがなとかカタカナは幼稚園の頃からパパとママに時々教えてもらっていたから、みんなよりも早く、上手に書けるようになりました。他にも、算数とか、いろいろな授業があるけれど、ちゃんと頑張っています。先生にもよく褒めてもらいます、えへん。


 それから、お友達もたくさん出来ました。

 今は休み時間で、あたしはクラスのお友達と一緒に遊んでいます。最近のクラスの流行りは、「指スマ」っていう遊びで、あたしはクラスで最強なのです。

 

 「なんでゆきちゃんそんなつよいのぉ・・・?」


 「えー、だってみんなのかお見たら、ゆび立てそうかなーってちょっと分かるんだもん」


 「なにそれズルーい、だったらもっかいやる~!」


 「いいよやろう!いっせーのーでー・・・」


 ちなみに、あたしの一番の仲良しさんは今あたしと遊んでいる「にった ももこ」ちゃんです。仲良くなったきっかけは、『魔法少女☆スター・プリンセス』が好き同士だったからです。おうちも近いから、いつも学校に一緒に行ったり、帰ったりしています。


 「けっきょく1かいもかてなかった・・・」


 「えへへ、でも楽しかったね!」


 「うん!」


 本当はもっと遊びたかったけど、もう2時間目の授業の時間なので、ガマンです。


          ●


 「それじゃあ、今日は足し算のおさらいをしましょう。とりあえず、教科書の問題をやってみるよ」


 『はーい』


 先生は、黒板にも教科書の問題を書きました。

 問題は、こんな感じです。


 太郎くんは、おつかいでリンゴを買いに行きました。

 太郎くんは、まずスーパーマーケットでリンゴを2つ買いました。

 そのあと太郎くんは、やおやさんでもリンゴを3つ買いました。

 問題です。太郎くんはリンゴを、合わせて何個買ったでしょう?


 「じゃあこの問題を・・・ゆきちゃん、分かるかな?」


 「うーん・・・?」


 「ありゃ、難しかったかな?ヒントいる?」


 「ううん。ねぇ先生、なんでたろうくんは1回でリンゴを5こかわなかったんですか?こういうの”ひこーりつ”だと思います!」


 「そこかいっ!?っていうか非効率って・・・ゆきちゃんはたま~に大人みたいな言葉を使うよね・・・?」


 「ねぇ、なんでですか?」


 「えー?うーん・・・あっ!そうそう!太郎くんはみんなに算数のお勉強をしてもらうためにわざわざこんな変なお買い物をしてくれてるんだよ。だからゆきちゃんも、そういうことは気にしなくて大丈夫だからね?ねっ?」


 「おとなのじじょうってヤツですね。べんきょうってむずかしい・・・」


 あたしがそう言うと、先生は変な顔で笑いました。


 

           ●



 給食を食べたので、お昼の授業です。


 「ひらがなとカタカナのお勉強が終わったので、今日はみんなに作文を書いてもらうことにしました」


 「おー?」


 先生が、ノートみたいなマスがいっぱい書いている紙を配ってくれました。でも、ノートみたいに本にはなっていません。


 「作文っていうのは、お題を決めてみんなが思ったこととかを書くことです。今から作文の書き方を教えるよ」


 先生は黒板に、あたしたちに配ったマスのある紙を描きました。この紙は”げんこうようし”っていう名前らしいです。帰ったら、ばあちゃんにどういう意味なのか聞いてみようかな。

 それで、”げんこうようし”には書き方のルールみたいなものが、いっぱいありました。1行目に題名を書いて、次の行に学年と組と名前を書きます。このとき、名前は最後の文字が一番下のマスになるようにしないといけないみたいです。それから、中身を書くときは、”だんらく”の初めだけ、1マス空けて字を書かないといけないらしいです。

 でも、あたしは気になったので手を挙げました。


 「先生、”だんらく”ってどこでかわるんですか?」


 「なんとなくかな?」


 「テキトーってことですか?」


 「まぁ初めてだからそんなに気にしなくて良いよ。自由に書いてごらん」


 「はーい」


 書き方のルールはいっぱいあるのに、”だんらく”はテキトーなんて、変なの。世の中には、算数みたいにきっちりした答えがないこともあるみたいです。


 「―――とりあえず書き方は黒板に書いたとおりです。それじゃあ、さっそく書いてみようか。お題は小学校に入学して面白かったこととか、ビックリしたことについて書いてみてください」


 「小がっこうにはいって・・・」


 面白かったこともビックリしたこともいろいろあったけど、あたしは少し悩んで、お友達が出来たことを書くことにしました。


 題名を書いて、名前も書いて、段落の最初の1マスは空けて、点と丸は一番上のマスには書いちゃダメで、お話を書くときはかぎかっこを付けて・・・。


 「~♪」


 たくさんルールがあって大変だなって思ったけど、意外と楽しいです。

 ももこちゃんとスター・プリンセスごっこをしたり、お天気の日はお昼休みに校庭で鬼ごっことかかくれんぼをしたり、それから、指スマとか、あとは帰り道でかけっこしたり。ありゃりゃ?書きたいことがいっぱいあって大変だ~。全然”げんこうようし”1枚じゃ入りきらないや。


 「先生、もっと”げんこうようし”ってつかってもいいんですか?」


 「お、たくさん書いてるんだ。すごいすごい。どれ、個性派ゆきちゃんの作文をちょっと拝見」


 先生は、あたしの作文を読みに来ました。それより新しい”げんこうようし”が欲しいんですけど。でも、あたしはもう小学生だからそれくらい気にしません。


 「おー、いっぱい友達と遊んだんだ。上手に書けてるね。先生も読んでて楽しくなっちゃった」


 「えへへ~」


 「あ、でもゆきちゃん、ここと~・・・あとここ。漢字は使っちゃダメだよ?」


 「えー、なんでですか???」


 「確かに。なんでだろう?」


 あたしは、最近ばあちゃんと一緒に漢字の勉強もしています。前にパパとママが言っていた「川」の字も教えてもらったからもう知っています。だから、せっかく勉強した漢字を使ってみたかったんだけどなぁ・・・。


 「なになにー?ゆきちゃんのさくぶんみせてー!」


 ももこちゃんも、あたしの作文を読みに来ました。あたしは漢字を自慢したくて、ももこちゃんに作文を見せてあげました。


 「えーっと、『ももこちゃんとスタープリンセスごっこをしたのが』・・・・・・えー、よめなーい、なんてよむの?」


 「『楽しかった』だよ?」


 「『たのしかった』?へー!これが”かんじ”?すごーい!てんさいだ!」


 「ふふーん♪まい日ばあちゃんにおしえてもらってるんだ」


 「あっ!!そーうだよ、うん!」


 先生がいきなり大きな声を出したので、あたしはビックリしました。ももこちゃんもビックリしていました。

 

 「ゆきちゃん、なんで作文で漢字を書いちゃいけないか先生分かったよ」


 「なんでなんで?」


 「それはね、みんなの中にはまだ漢字が読めない子もいるから、ダメなんだよ。ゆきちゃんの作文が読めなくて、ももこちゃんみたいに困っちゃうかもしれないでしょ?」


 「な、なるほど。またおとなのじじょうってことですね!?」

 

 「うーん。どっちかって言うと、みんなへの思いやりじゃないかなー?」


 「そうだったのか・・・!やっぱりべんきょうってむずかしい・・・」


 先生は、また変な顔で笑っていました。


 「でね、先生?あたらしい”げんこうようし”ってもらえますか?」



次回 『えんそく』


更新は10月4日(日)にします。

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