3話 ともだち100人できるかな!
今日はあたしの小学校の入学式!
あたしがこれから通う小学校は、『一央市北小学校』っていいます。幼稚園よりもすっごく大きい建物と、あと広い園庭・・・じゃなくて校庭があって、しかもプールまであります。
「ぃよしっ、可愛く出来た!じゃーん、パパー、見てあげてー」
「どれどれ?おお、いつも以上に可愛いなぁユキはぁ♡」
「えへへー」
「ほら、ランドセルも背負ってみて」
「似合ってる?」
「「似合ってる似合ってる♡」」
入学式だから、ママに手伝ってもらっておめかしです。髪の毛も、いつもはあんまり結んだりしないけど、今日は結んでもらいました。ママに聞いたら、”ツーサイドアップ”っていう髪型だって教えてくれました。なんか技の名前みたいでかっこいい名前だけど、見た目はすごく可愛いです。
パパがぎゅーってしたそうにしていますが、ママが本気でパパのことを止めています。服がしわしわになっちゃうから、あたしもパパに我慢して欲しいです。
「お母さーん、そろそろ出るわよー」
ママが呼ぶと、ばあちゃんもカメラを持ってきました。どうやらパパもママもカメラを持っていくのを忘れていたみたいです。うっかりさん。ゴンゾーもお見送りに出てきてくれました。
準備が出来たから、さっそく出発です。本当は歩いて学校に行くのが普通だけど、今日は特別だからパパの車で行きます。
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「わぁ、ママ、さくら!」
「そうだね、綺麗。お天気だし、最高の入学式日和じゃない。ユキが良い子にしてたからかな?」
「うん!」
学校に着きました。大きな桜の木があります。満開でピンク色が可愛いです。
もう、たくさんのおともだちが小学校に来ていました。みんなあたしと同じ1年生です。すごい、幼稚園のときはこんなにいなかったのに。100人くらいいるかもしれないです。
昇降口では、おともだちと、それからみんなのお父さんとお母さんたちが並んでいました。受付の人とお話をしたあと、おともだちと、お父さんお母さんたちは別々の方に行くみたいです。
「ユキ?」
「え、えへへ、なんかひとがいっぱいできんちょうしてきちゃった」
「まだ入学式は始まってないぞ?」
「そうだけどー」
「大丈夫、ユキは強い子だからな」
パパが頭を撫でてくれました。ホッとしたけど、髪の毛くしゃくしゃになっちゃってないかな?あたしが心配していると、ママが後ろから直してくれました。
あたしたちの順番が来て、あたしもパパとママとばあちゃんとバイバイしました。6年生のお兄さんと一緒に教室に行くみたいです。お兄さんと手を繋いで、連れて行ってもらいました。
教室には、もうたくさんの子がいました。しかも、まだ教室は3つもあるみたいです。入学式が始まるまで、あたしたちは教室で待つみたいです。テレビで見たみたいな、木の机とイスがたくさん並んでいて、あたしは前の子の次の順番の席に座りました。
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「うー・・・きんちょうする」
さっき先生に言われた通りに出来るかな?前の子が体育館に入ってから3つめのお花がついた輪っかをくぐってから体育館に入って、それから、前の子の横のイスに座るんだったよね?
なんて考えている間に、もうそろそろあたしの番が来ちゃう!で、でも大丈夫、あたしはスノー・プリンセス、強い子だもん!これくらいへっちゃらだもん!こういうときは”しんこきゅう”をするのです。
「すー・・・ふー・・・」
あたしが”しんこきゅう”していると、うしろの子があたしの肩をツンツンしてきました。
「ねぇ。まえのこ、もういっちゃったよ?」
「へ?・・・わわっ、ごめんなさい!」
ちょ、ちょっとだけ間違っちゃったけど、あとは大丈夫だったからオッケーだもん!
おともだちみんなが座ったら、入学式が始まりました。校長先生のお話はちょっと難しい言葉があってよく分からなかったけど、卒園式のときよりいっぱい偉い人も来ていて、小学校ってやっぱりすごいんだって思いました。
それから、6年生のお兄さん、お姉さんたちから歌のプレゼントをもらいました。とっても上手に歌っていてかっこよかったです。あたしもあんな風になれるのかな?なれるように頑張らなくちゃ。
最後に、”こうか”っていう学校の歌を歌って、入学式は終わりました。思ったよりもすぐに終わっちゃいました。
○
入学式のあとは、みんなのお父さんお母さんたちも一緒に教室に戻りました。
先生が、これからの学校生活でどんなことをするのかとか、他にもいろいろ教えてくれました。何人かのお友達は途中から飽きて遊んじゃったけど、あたしはちゃんと最後までまじめにお話を聞きました。
「それではみなさん、明日からはお友達と一緒にたくさんお勉強を頑張って、たくさん遊んで、たくさんの思い出を作りましょうね。ご入学、おめでとうございます!」
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「よーし!きょうからべんきょうもあそぶのもがんばるぞ~!」
今日から本格的にあたしの小学校生活が始まるのです!まずは友達を作るところから始めないと!
お友達を作るには、”コミュニケーション”が一番大事だって、パパが言っていました。”コミュニケーション”っていうのは、おしゃべりすることだってばあちゃんが教えてくれました。それならあたしは得意です。だって、お友達とおしゃべりするのは幼稚園のときから大好きだったから。これならクラスのみんなとお友達になれるはず!
「おはようございまーす!」
そんなわけで、まず、あたしは元気いっぱいの挨拶をして教室に入ってみました。
・・・でも、誰もおはようって言ってくれませんでした。あっれー???あたしの方は見てくれたのに、おかしいな。もしかしてイジワルされてる・・・?いやいや、魔法少女はそんな最初っからおともだちを疑ったりはしないんだよ。
あたしは諦めずに、とりあえず教室のドアの近くの席の子に、もう一度おはようを言ってみました。
「ねぇねぇねぇ、お・は・よ・う!」
「お、おは・・・ぅ」
「うん、おはよう!」
それから、あたしはその近くの席の子にも、おはようを言ってみました。そしたら、みんなちゃんとおはようって言ってくれました。声はちっちゃかったけど。
「わかった!みんなきんちょうしてるんだ!なんだー、もー、しょーがないなー。でももっとおはなししないと、ともだちにはなれないんだよ?」
「そうなのー?」
「そうだよ、だってばあちゃんがそういってたもん。ばあちゃんはなんでもしってるから、たぶんそうなんだよ!」
あたしが教えてあげると、ちょっとずつみんな、近くの席の子たちとおしゃべりを始めました。なんだか良いことをした気分です。・・・って、あれあれ?あたしのおしゃべり相手は?
「がーん!もしかしてあたしだけおともだちできない!?」
ですが、ショックを受けるのはまだ早かったのです。
「おはよー!」
バシッとドアを開けて、あたしと同じくらい元気におはようをする子が教室に入ってきました。おでこのところで髪の毛を結んだ女の子でした。あたしはちゃんとおはようってお返事してあげることにしました。
「おはよ・・・・・・あ!!」
「なあに?」
「そのふく!」
「もしかしてスター・プリンセスすきなの?」
「すき、だいすき!まいしゅうみてるんだから!へんしんステッキもかってもらった!」
「うちもまいしゅうみてるしステッキももってる!」
おでこの女の子が着ていた服は、『魔法少女☆スター・プリンセス』のスター・プリンセスが描いてある服でした。良いなぁ、羨ましいなぁ、カッコいいし可愛いなぁ。
「あげないよ・・・?」
「ひとのものとったらドロボウだもん、いらないよ」
「ドロボウにはアルティメット・スター・スプラッシュをおみまいしてやるんだから」
「じゃああたしはスノーバリアだもーん」
「えー、スター・プリンセスはそんなまほうつかわないよ?スターバリアだよ?」
「しってるよ!あたしはね!まほうしょうじょスノー・プリンセスなの!」
「スノーじゃなくてスター!」
「ううん、スノーなの!」
「スター!!まちがってる!!」
「まちがってないもん、あたしはスノーだもん!ほらみて!『スノウ』!」
あたしは、魔法で教室に雪を降らせました。まだパパとママみたいにたくさんの雪は作れないけど、これがあたしの魔法。雪だけじゃなくて、ものを冷たくしたり、氷を作ったり、いろいろ出来るんです。
おでこの子だけじゃなくて、クラスのみんなもビックリしてあたしの魔法を見てくれました。卒園しても、パパとママに教えてもらって、あたしは魔法の練習をしていたから、その成果なのです。いつかとしなりくんにもビックリしてもらえるくらいすごい魔法士になるためには、とーぜんの努力だけどね!
「どう?」
「わぁ・・・・・・わぁ!!ゆきだ!!」
「ふっふーん♪しってる?ゆきってね、えいごで”スノー”っていうんだよ。だから、あたしはスター・プリンセスじゃなくてスノー・プリンセスなんだよ!」
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「ただいまー!」
「お帰り、ユキ」
「学校どうだった?」
「パパ、ママ!ともだちいっぱいできた!!」
次回更新:9月13日(日)
今後は月1,2回くらいのペースで更新するかもしれないし、しないかもしれないです。同時連載中の作品の進行ペースに合わせて、ね。
今年から小学生になった子たちは、1学期も半分以上なくなっちゃって、きっといろいろ大変な思いをしてるんだろうなぁ。友達は出来たかな、勉強はついていけてるかな。今は夏休みかな?でも遊びに行けてるかな?どうか一日でも早く、当たり前が戻って来ますように。