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裏ボス始めました~転生したら化け物だったので、異世界人を使って勇者と魔王を育てる育成ゲームを始めます~  作者: まんじ(榊与一)
第3章 蠢動してみた

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プロローグ

「う……くっ……。くそっ……すまない……許してくれ……」


約束したのに……

守ると約束したのに……

大事なこの子を……何があっても守ると……そう約束したのに……


「すまない……父さんを許してくれ……」


何よりも大事な宝物だったのに……守れなかった。

涙が止まらない。

悲しくて……悔しくて……


命の炎を奪われ、どんどんと冷たくなっていく我が子を強く抱きしめる。

何もできなかった俺は、唯々慟哭を上げる事しか出来なかった。


「ぅっ……ぐぅぅ……」


何かが落ちてくる音が聞こえた。

だがどうでもいい。

もう何もかもが――


次の瞬間、俺の体は炎に包まれる。


だが熱による痛や苦しみは感じなかった。

そんな間すら与えず猛火は俺を一瞬で灰に変え、俺の命を燃やし尽くす。


無力感と後悔。

そして絶望だけを残して――俺は死んだ。



「随分苦しい思いをしたようだな」


男に声をかけられ、はっと気づく。

目の前には一人の大柄の男が椅子に腰かけ、テーブルに肘を乗せて頬杖をついている。

男は黒衣を身に纏い、その背にはカラスを思わせる漆黒の翼が生えていた。


「だが喜べ。お前は選ばれた」


何が起こったのか理解できず驚き戸惑っていると、男が再び口を開き、俺の前に立つ。

その綺麗な人差し指が俺の眉間へと押し付けられた。

俺は咄嗟にその指を掃おうとするが、体がピクリとも動かない。


「な、なにを……」


男の指先から、何かが体の中に入り込んでくる。

不安の様な。

安堵の様な。

何とも言えない感覚が、俺の中を這いずり回った。


「転生し、新たな人生を送るがいい」


――転生。


その言葉を耳にした瞬間、自分の身に何が起こっているのか気づく。

この何とも言えないむず痒い感覚。

それは生命誕生の瞬間であり。

男は新たな生命へと、俺を生まれ変わらせようとしているのだと。


「お前は生前、竜の様な強大な力が欲しいと願っていたな。その願いを叶えてやる。喜べ」


竜。

俺の生まれ育った村では、竜神を信仰していた。

竜は村の守り神であり、力の象徴だ。


男の言う通り、確かに俺は力を欲していた。

信仰していた竜神の様な強大な力を……

だが……俺が力を求めたのは、村の仲間や息子を守る為だ。


大事な物を守る。

その為に力を欲したのだ。


だがそれらが全て失われた今。

今更力を得る事に何の意味もない。

無意味だ。


「転生したら、思う存分うっぷん晴らしに暴れるといい」


男は物騒な事を爽やかな笑顔で勧めてくる。

強大な竜の力で暴れまわれば、どれ程の被害が出る事か。

この男は俺にそんな真似をしろと、本気で言っているのだろうか?


だがそんな事より――


「うっぷん……を……晴ら……す?」


聞き逃せない言葉に、口を開く。

だが体が熱を持ち、上手く言葉が話せない。

俺は必死の思いで言葉を絞り出した。


「ああ、そうだ。今生の恨みつらみを暴れてすっきりさせるといい。気持ちいいぞ、暴れるのは」


今生の恨みを暴れてすっきりさせる。

それは転生をしても、生前の事を覚えているという事を意味していた。


最後の……息子が冷たくなっていく感覚を思い出す。

辛く、苦しい絶望が再び胸にこみあげてきた。


――冗談ではない。


あの悲しみを胸に抱いたまま、俺に新たな人生を送れと言うのか?

そもそも俺は転生など望んではいない。

大切な者を失った今、生きる意味など無いのだから


だから俺は息子の元へ――


「転生……なん……か……いら……ない」


「それは無理だな。もう転生は始まっている。今更中止など出来ん」


「そん……な……」


「だが俺も鬼ではない。お前の息子も転生させてやろうではないか。それも再び、お前の息子として。どうだ?」


息子が生まれ変わる……

それも再び俺の息子として……


会える……

生きて再び……

息子と……

あの子に生きて……もう一度……会える。


「あり……がとう……ございます……神様……」


男は自身の事を何も語らなかった。

だがきっと神に違いない。

俺は心から目の前の神に感謝の祈りを捧げる。


「お前の息子の転生はオマケだから、竜の様な力は与えられん。それと、代償としてお前の記憶は封印させて貰う」


記憶を失ってしまう。

それは悲しい事だ。


だが息子と生きて再び会えるのなら。

あの子をもう一度抱きしめられるのなら。

それは些細な事でしかない。


「おね……がい……しま……す」


言葉とほぼ同時に俺の体が崩れ落ち。

そこで俺の意識は温かい闇に閉ざされた。



◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



「あれ?ここ何処だっけ?」


寝ぼけ眼を擦りながら起き上がり、辺りを見回す。

辺りには鬱蒼と木々が生い茂り――

そして数えきれない程の魔獣の遺体が転がっていた。


「ああ、そうか。暇潰しに魔族領の魔獣の巣を襲ったんだった」


暇で暇で。

暴れたくて仕方がないのに、魔族には“まだ”手出しするなと言われていた。

それで仕方なく、魔獣の住処を襲って暇潰ししていたのだ。


――ぐぅ~と、お腹の虫が鳴り響いた。


取り敢えず腹ごしらえに落ちている魔獣――狼型――を拾い、臭う。

どうやらまだ腐ってはいない様なので、そのまま腹部に噛り付き肉を毛皮ごと引き千切って咀嚼する。


「あんまり美味しくないなぁ」


しかし他に食べられる物を探すのも面倒臭いので、我慢して食べる。

ある程度お腹が満たされ、大きく伸びをしている所に魔法のメッセージが届いた。


≪元気にしていたか?≫


≪酷いよ。全然連絡くれないんだもん≫


≪ははは、悪い悪い。用事が無いようなら、久しぶりに会うか?どれぐらい成長したか確かめてやろう≫


≪うん!会う会う!僕、美味しいお菓子がいっぱい食べたい!≫


口直しに美味しいものが食べたいとねだる。

魔獣はまずかったし、甘いお菓子を食べたい気分だ。


≪じゃあ1時間後、菓子を持って行ってやろう。楽しみに待っていろ、オメガ≫


≪やったぁ!グヴェル大好き!≫


≪ではな≫


そこで魔法の通信は途切れた。


僕は体を動かし柔軟運動を始める。

約束の時間まで1時間もある。

腹ごなしも兼ねて、又魔獣狩りでもするとしよう。


「よーし!1時間で何匹狩れる挑戦だ!」


そう言えば、少し変な夢を見た気がする。

何だか悲しい夢。

ま、別に何でもいいか。


所詮は夢。

そう結論付けた僕は魔法で生命反応を感知し、見つけた場所へと向かって駆ける。


さあ、狩りを始めよう。

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異世界転生帰りの勇者、自分がいじめられていた事を思い出す~何で次から次へとこんなにトラブルが起こるんだ?取り敢えず二度と手出ししてこない様に制圧していくけども~ 異世界から帰って来た主人公が、ふざけた奴らを力で無双制圧して行く話になります。 ハーレム学園に勇者として召喚されたけど、Eランク判定で見事にボッチです~なんか色々絡まれるけど、揉め事は全てバイオレンスで解決~ 異世界召喚されEランク判定の外れ認定された主人公は、実は神様からチート能力を貰った超人だった。ハズレ野郎としてボッチで学園生活を送る主人公が、ムカつく奴らを鉄拳制裁して行く物語になります。
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