22話 イレギュラー
「全く無茶をする。死んでも知らんぞ」
倒れたネッドの状態を魔法で確認し、呟いた。
俺の言葉を耳にしてポチが一瞬表情を変えるが、いつもの独り言だと気づき素面に戻る。
相変わらず俺の独り言は健在だ。
下僕が慣れ切ってしまう程に。
俺も最早直す気はない。
やはり染み付いた癖を治すのは、中々簡単には行かないものた。
もう面倒臭くなってきたので、開き直る事にしていた。
まあどうせ周りには配下しかいないのだから、特に問題は無いだろう。
「しかし……」
植物型の異生物を使って、ネッドとオメガの顔合わせでもしておこうと思ったのだが、まさかオメガが出るまでも無く倒してしまうとは……完全に予想外だ。
ネッドが俺の与えた加護の力をより深く引き出して見せたのにも驚いたが、あの女――
レーネ・アルケイル
LV11
筋力:3
速さ:5
持久力:8
器用さ:7
集中力:12
魔力:38
スキル:魔術LV1
気になってステータスを確認し、驚かされる。
特筆すべきはその魔力。
38という数値は異常と言っていい。
これは大魔導師と呼ばれるレベルの魔力だ。
以前ステータスを確認した際は、ここ迄の魔力は有していなかったはず。
この短期間で急激に成長した?
いや、あり得ない。
何故ならレベル自体にはほとんど変動が無いからだ。
高ステータスは高レベルと考えてほぼ間違いない。
それは訓練が経験値の蓄積に直結するためだ。
努力は経験値になり、レベルアップへとつながる。
その為、努力して能力を伸ばしたにもかかわらず、レベルが低いままという事はあり得ない事だった。
例外としては、オメガの様にとんでもない才能を秘めている場合だが……仮に隠されていた潜在能力があったとしても、俺の目はそれを容易く見抜く。
だが確認した限り、彼女にはそれらしい物はなかった。
この女、本当に何者だ?
只のおまけの恋愛要員と考えていたのだが、本の一件といい、不可解過ぎる。
だが――
「面白い」
嬉しさから、思わず笑みがこぼれた。
どんな影響を及ぼすか分からない謎の女。
そういった不確定要素があるからこそ、ゲームは面白いのだ。
少しワクワクしてきた。
「――ん?」
脳内で色々と妄想していると、突如目の前に小さな魔法陣が現れる。
勿論俺の生み出したものでは無い。
正体不明の魔法陣だ。
普通は警戒すべき事なのだろう、が――
俺はそれに迷わず手を突っ込んでみた。
何故なら、面白そうだったからだ。




