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第22話 ざまぁみろ

「今まで、一人でよく頑張って来たな」


「父さん!」


オメガが息子(イモータル)を抱きしめる。

感動のシーンと言いたい所だが、どうせ直ぐに二人揃ってあの世に行くことになるだろう。


いや、オメガはもうすでに死んでいる身だ。

今の奴は息子の肉体に宿った残滓でしかない。

あの世に行くというのは少し違うか。


――まあ俺にはどうでもいい事だ。


「グヴェルは俺が倒す。お前は下がっていろ」


「父さん」


オメガが俺を睨み付ける。

どうやら自らの手で殺したいらしい。

ま、恨んでいるだろうから当然の事ではあるな。


「なんだ?もう一度息子に自分の手で引導を下したいのか?」


俺は笑って奴を挑発してやる。


「息子は俺が守る」


どいつが俺の止めを指しても結果は同じ、この場にいる者は全て死ぬ。

守る術などない。


「戯言を」


オメガの体が大きく膨れ上がり、巨大な竜へと姿を変える。

その顔が勢いよく俺に迫った。


「成程」


奴の巨大な口に丸呑みされ、俺の視界が真っ黒に染まった。

恐らく魔力の暴走を体内で受け止めるつもりなのだろう。


だが無駄だ。


俺の魔力は、もう既に大陸そのものを吹き飛ばせるレベルにまで達している。

とてもではないが、体内で押し留められるレベルではない。

ましてや只の残痕程度、一瞬で木っ端微塵だ。


「ん?」


高速エレベーターに乗った様な浮遊感が体にかかる。

どうやら俺を腹に収めて飛翔した様だ。


「無駄だな」


どうやらオメガは飛翔して距離を取り、息子を守る積もりの様だ。

流石に、俺の爆発を抑え込むというのが無理だとは理解していたか。

だが残念ながら、奴の飛翔速度より俺の破壊範囲の拡大の方が早い。


いずれにせよ無駄な事に変わりない。


「グヴェル。お前は死を覚悟している様だが。このままでいいのか?」


奴の腹の中に声が響く。

器用な奴だ。


「何が言いたい?」


「お前をコケにしたあの女神を、そのままにしておくのか?」


オメガはムカつく事を口にする。

どうやら俺の様子は全て把握している様だ。


「ちっ、あの糞女神を八つ裂きにしてやりたい所だが……居場所も分からない様では手が出せん」


もし居場所が分かるのなら今すぐ奴の元へと飛んで行き、その直ぐ傍で自爆してやりたい気分だ。

だが奴の居場所は知りようがない。

悔しいが、奴への報復は諦めるしかないだろう。


「もし居場所が分かるとしたら?」


「なに!?どこだ!!」


こいつ……女神の居場所を知っているのか?


「俺はしらん。だが、お前は知っている筈だ。何故なら、お前の片割れは女神によって連れていかれたのだからな。奴がそれを手放していないのなら……」


――言われて気付く。


確かに女神は俺の半身を持って行った。

引き裂かれたとはいえ、あれは俺の体だ。

ならば――


俺は自分の内へと意識を集中する。


「見つけた……見つけたぞ!!」


もう一方の体を動かしてみた。

大きく動けば女神に気づかれかねないので、ゆっくりと瞼を上げてみる。

女神は直ぐ傍にいた。

奴は目をつぶって、何かをぶつぶつ呟いている。


――読唇すると。


「ちょっとぉ。体内じゃ様子が見れないじゃない」と言っていた。

人の窮地を高みの見物とは、いい気なものだ。


千里眼は生物の体内までは覗けない。

今のオメガが生物かどうかは怪しいが、どうやら女神には此方の様子が分からない様だった。


オメガが俺を飲み込んだのは、このためか。


「見つけた様だな」


「ああ、今から目にもの見せてやる」


俺は自分の中の魔力。

その全てをもう一方の体へと送る。

女神は相変わらずぶつぶつと独り言を口ずさみ、自分の状況に気づく様子がない。


自分が狙われる。

神である奴は、それを想像だにしていない様だ。


間抜けめ。


魔力を全て送り終えた所で俺はもう一つの体を起き上がらせ、女神に声をかけた。


「随分と楽しそうだな」


「んな!?なんで!?」


女神がぎょっとした顔で俺を見つめる。

良い表情だ。

その顔が見たかった。


「お前を……殺す」


宣言と同時に時間停止を行う。


「させないわ!」


女神が俺の時間停止に干渉し、妨害してきた。

それはそれで構わない。

時間停止に干渉するには、同じ時間停止の能力を使う必要があるからだ。


そして神であっても、この能力は連発できない。

つまり、間近での自爆から身を防ぐ術はもうないと言う事だ。


「じゃあな」


体内の魔力を暴走させる。

俺の肉体は閃光となって弾けとび、空間に破壊のエネルギーが満ち満ちた。


「そんなっ!?神である私がぁっ――」


女神は逃れようとするが、一瞬で暴走した魔力に飲み込まれる。


いかに神いえど、不意打ちでこれを食らったのだ。

一溜りもないだろう。


「くっくっくっくっく、ざまぁ見やがれ!」


やった!

やってやったぞ!

女神は消滅した!


千里眼で間違いなく確認した。


何より俺の中に――


「終わったようだな。ならば次はお前だ」


真っ暗だったオメガの体内に光が満ちる。

自爆するつもりなのだろう。


女神を殺させ。

魔力が無くなった所で、自爆で俺を殺す。

悪くない作戦だ。


「良いだろう。受けて立ってやる。お前の自爆(おもい)と俺の生命力(しぶとさ)、どちらが上か勝負だ!」


尤も。

この勝負、勝つのは間違いなく俺だがな。


「息子は……あの子は俺が守る!」


オメガが吠えた。

強烈な光が俺の視界を真っ白に染め上げる。


息子は守る……か。

いいだろう。


凄まじい衝撃と熱が俺を焼き。

オメガは閃光となって、大空に紅蓮の花を咲かせる。


オメガ、お前の望みは――

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異世界転生帰りの勇者、自分がいじめられていた事を思い出す~何で次から次へとこんなにトラブルが起こるんだ?取り敢えず二度と手出ししてこない様に制圧していくけども~ 異世界から帰って来た主人公が、ふざけた奴らを力で無双制圧して行く話になります。 ハーレム学園に勇者として召喚されたけど、Eランク判定で見事にボッチです~なんか色々絡まれるけど、揉め事は全てバイオレンスで解決~ 異世界召喚されEランク判定の外れ認定された主人公は、実は神様からチート能力を貰った超人だった。ハズレ野郎としてボッチで学園生活を送る主人公が、ムカつく奴らを鉄拳制裁して行く物語になります。
― 新着の感想 ―
[良い点] 女神ざまああああwwwww
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