プロローグ
光と闇が合わさりし異世界レジェンディア。
光の中人類は繁栄し、闇の中魔族が蠢く。
清濁併せ持つ世界。
そんなレジェンディアの歴史が今、動こうとしていた。
ブルームーン歴184年。
異世界レジェンディアに、光と闇の祝福を一身に受けた一人の王子が誕生する。
ーーブルームーン王国ーー
ブルムーン王国首都レイクリア。
レイクリア湖を中心とした円形に広がる美しい都。
中央に位置する湖畔の城の名はブルームーン城と呼ばれ。青く美しい幻想的なその様は正に王国の名を冠する相応しい景観を誇り、200年近くもの長きに渡りブルムーン国の象徴として愛されてきた。
そして今、その美しい城の中で、世界の運命すら左右しうる光と闇の祝福を受けし王子が誕生しようとしていた。
離宮から声が聞こえる。
王城から6時の方向に橋が伸び、水に浮かぶ離宮。
第6離宮。
今その離宮は王妃ミレイアの出産の為に用いられていた。
この第6離宮では代々の王妃達が出産を行なっており、時代を担う王族が生まれ続けて来た聖なる場と言える。
だがおかしい。
離宮から聞こえてくる声は本来祝福の歓声でなくてはならないはず。
だが聞こえてくる声ーーいや、これは悲鳴か?
離宮からは歓声どころか、悲鳴や世を儚む様な声だけが響いていた。
それもそのはず、ミレイア王妃が出産した第一王子は一言で言うならーー
バケモノだったからだ。
その赤い皮膚は枯れ木の様に罅割れ。
手足の爪は鋭く、肘からは節が伸びてその先には二本の鉤爪の様なものがぶら下がっている。
そして極め付けは目だ。
瞳孔の開ききった様な鋭い紅い瞳はーー
上下2対、つまり4つの目がその顔面に張り付いていた。
どこからどう見ても人外のバケモノである第一王子。
王家はこの子を生まれなかったものとし、地下へと幽閉する。
ブルームーン歴184年。
こうして運命の王子は幽閉され、闇へとその存在を沈められるのだった。