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詐欺師とヒーロー  作者: しゅう
2/5

二話 仕事

自分投稿遅いですね。善処します。

新キャラの子は眼鏡でもかけてると思ってください。

店を閉めた。二人でリビングに居る。でも夫婦ではない。さて、今宵はゆいが新しいカモを連れてくるということもあり、気合が入っている。

「ゆい、今更だけど流れの確認をしよう」

「臆病ね。いつも通りよ」

「慎重なだけだよ。それに最近はそればっかりじゃないか。たまには原点回帰するのもいいと思うんだ」

「相変わらず出任せはお得意ね」

「そういう仕事だからね」

卑屈な才能だよほんと。

「そう……。じゃあ、ちょっとだけ。私が新しい人を連れてくる。その人をあなたが言いくるめてあなたがコネとなって仕事に就かせる。そこで稼いだうちの一部を横領、違和感がないようにね。そのあとはあなたに任せるわ。私はそこから貰えるだけ貰えればそれでいい」

「うわ、いつも通りだね」

「そう言ったじゃない」

「それもそうだね」

とは言うものの、そこまで頓珍漢な脳みそは持っていない。敵を欺くにはまず味方から。ゆいが味方だと言い切るつもりは無いが、自分が仕事を全うするには、少なからず彼女を味方として欺く嘘も必要だと思っている。つまりは、営業活動だ。

一応僕は表向きには呑気な人を演じようとしている。今のも少しこれに由来していると言っていい。自分の本性は、僕にもよくわからない。

「じゃあ、連れてきてくれる?」

この家は一階が喫茶、二階がリビングや仕事場などの共用スペース、三階はそれぞれの部屋と物置だ。今は二階にいる。家にいる殆どを、ここで過ごしている気がする。仕事相手とほぼ一日中いるということが、それなりに不思議な状況だと気付いてから如何程になるのか。そう思いつつ一緒に暮らしている。

待ちながらカップにコーヒーを三人分注ぎ、自分のを揺らして虚無に埋もれる。落ち着くな。案外、こういう時間が好きなのかもしれない。

目の前にディバリオが見えた。つまりは切られたのだ、空間が。

「お疲れさん。それにしても良くもこんな薄気味悪いところにのこのこ入れるね」

「あら、お仕事いらないのね。先に言いなさいよ」

「ごめんごめん、皮肉じゃないんだ。にしても凄いとは思うよ」

「平気よ、こんなとこ。あの頃よりマシ」

「そう……。野暮ったいこと聞いたね」

少しばかり反省しつつ、ゆいがディバリオを通って人間界から連れてきた"社畜"と呼ばれる人間を騙す。社畜というのはゆいから聞いた言葉で、死にそうなくらい働いている人のことを言うのだそうだ。当然、疲労していて、判断力は鈍り、異世界に夢を抱いている人が多い。中にはチートだ主人公だと宣う人もいたが、よくわからないし、何より鬱陶しかったから殺してディバリオに捨てた。あの人達の狂って死にそうな目は、もう見たくない。今回はそうでないことを祈る。

「じゃあ、起こそうか」

掌を、横になった人間に突き出し、術を展開する。僕は粗方の術を心得ているが、主に使うのは妖術とかだ。小手先のことを行うには、便利なのだ。

術式は術となって営力を生み、術は魔法陣として具象化され、外的な力となる。術弾とか。……取り巻きのことは忘れろ、僕。

今回では、催眠を解く目的で妖術を使っている。掌の魔法陣から、ゆいの催眠術を解く術式が、人間の体内に送られていく。そう言えば、なぜ魔術以外も魔法陣と言うのだろうか。今度図書館にでも行ってこよう。

そんなことを考えている間に、人間が起き上がった。見たところ、女だ。

「やあ、お目覚めかい?」

「す、すいません!プログラムを修正していたら……って、どちら様ですか?」

おお、これまた見事なこじらせっぷりだ。

「僕は悠斗。こっちはゆいだ。残念ながら、君は元の世界で倒れたそうだ。その結果、運悪く頭を打って亡くなったんだ」

「はぁ…」

「そりゃ、信じられないよね。でも、こっちも他の言い方が出来ないんだ。とりあえず、コーヒーどうぞ」

「ありがとうございます。別に倒れたことも死んだこともさほど違和感はありません。働き詰めの毎日で、いつもいつもパソコンとにらめっこしながらクライアントの無茶な要求にそったプログラムを打って、実行、修正、実行、修正……、誰だって倒れますよ。だから、死んだことはしっくりきました。でも、私がいなくなったことで、チームのみんなが……、先輩や後輩が、過労死するのかなって思ったら、なんかっ、辛くてっ」

話しながら嗚咽を上げ始め、ゆいがあやしている。

「ああ、カフェイン美味しい」

コーヒーをコーヒーとも思えないほど窶れているのか。かわいそうに。でも、今後は休めるよ。お金はかかるけど。悲惨だなぁ。

「それで、死んだ私が何故ここに?」

「死んだ後どうなるか、少し先入観が過ぎないか?」


─── ・ ───


穏やかな彼が豹変する。狡猾さが滲み出た瞳孔は、死んで間もない小鳥をメデューサの如く射竦める。彼は小鳥に、死後を尋ねた。しかし答えを求めようとはしない。

小鳥は生前に酷使していた頭脳で、怪物の悪戯を興味なさげに小考する。

「君は、死んでいない。君という魂は、世界を変えて生き続けているんだ」

「異世界転生、ですか?」

「せっかく雰囲気出したのにそんな簡単に見抜かないでよ。まあ、だいたいそんなとこだよ。そこで、転生すると一つ、プレゼントが貰えることがあるんだ」

「プレゼント?」

怪物の目は、いつしか好奇心、いや、邪念に満ち満ちていた。詭弁家の本領発揮だ。

「アニメとかで魔法が出てきたりするよね?あれが使えるようになることがたまにあるんだ。試してみる?」

実際、アニメが何かもよくわからないと言っていた。使えるものならなんでも使うタチの悪さが痛いほどよくわかる。

「それを使ったら、元の世界に帰れますか?」

「わからない」

意外……。ここは嘘を吐くと思っていたのだけれど。

「ならやります」

「そう。じゃあ、明日の朝、それを確かめよう」

私にはわからないけど、何か感じ取ったのかもしれない。

「すぐ出来ないんですか?」

「僕は君と違って眠くなったら寝るんだ。それに、今日は少し疲れててね、この調子だと君の能力の確認に支障が出る。君もたまにはしっかり寝てみたらどうかな?スッキリすると思うよ」

「あ、そっか、寝ていいんだ……」

毎度彼女のような人を連れてきて思う。よく死なないなと。

「今日はここに泊まって下さい。明日はこっちの世界の話をします。どうぞ楽にして下さい」

「ゆいさん、でしたっけ。なんで私なんかをここに?」

「なんとなく、ですかね」

「よかったぁ。もしこんなことを故意になさってたら……、恨んでましたよ」

悪寒がした。何もされていないのに身動きが取れなくなる、そんな恐怖に苛まれた。本能的に、震えが収まらない。

社畜、怖い。目が、虚だ……。

「脊椎の触ってはいけないところを直に触られた気分です」

「どんな気分?」

「ゾッとしたのよ」

「最初からそう言いなよ」

「別にいいじゃない」

「仲のいいご夫婦ですね」

「そんなことないです」

最近なぜ夫婦と間違えられるのだろう。それに、悠斗といえば、たははと苦笑いをする程度で、否定しない。正直厄介だ。は、恥ずかしいし。でも悠斗は人受けがいいと営業しやすいとでも言うのだろう。尤も、私とは価値観が違うのだからそこを咎める気はない。

「ゆい、部屋まで連れて行ってあげて。そう言えば、君、なんて名乗りたい?ここは今まで君がいた世界とは違うんだ。名前は同じじゃなくていい」

一考の末、彼女は言った。

「亢宿……椛です」

聞きなれない言葉ね。

「そう。じゃあ椛さん、着いてきて。明日からは彼が仮の家を用意してあるから。今日だけね」

椛さんは立ち上がりつつありがとうございますと呟き、私の背後を歩き始めた。

「お二人はずっとこの世界に?」

「いえ、私達も椛さんと同じで人間界からこっちに転移したんですよ。でも、昔のこと過ぎて、もう忘れてしまいましたけどね」

暫くの沈黙の末、ある部屋のドアノブに手を掛けた。

「ここが、あなたの……」

あれ、何?どうなってるの?急に……力が……抜けて……。

「あなた達、私に、『グノーシス』に、連行される心当たりはあるわよね」

グノーシス……。『距星の砦』と呼ばれるのギルドの集まりに所属する有力ギルド。そんな人が何故ここに……。

「明朝、あの男も連れてギルド本部に行く。安心しなさい。無闇に危害を加えたりはしない」

何を……言って……。ああ、そっか。さっきの……悪寒。捕まえに……来たのね。

因みにこの世界にコンタクトはありません。

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