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ちょうど八つ時を迎え、気候も良いから庭先でちょっとしたティータイムを過ごそうという話になった。
洋風な佇まいにふさわしい白いガーデンテーブルとチェア。淹れたての香り高い紅茶と、ティースタンドには可愛らしい小ぶりの軽食が程よく盛られている。
「へえ。スコーンなんて初めて食ったが、案外イケるな」
クロテッドクリームをたっぷり乗せて豪快にかぶりつく雄に、そうでしょうと紡は自慢げに頷いた。
「生クリームとか、ジャムだけとかでも美味しいんですけどね。でもどれもクロテッドクリームを乗せたものには敵いません」
そう言って自らもクロテッドクリームと、少量のジャムも乗せて囓る。堪らない、と満足気に嚙みしめる姿は彼女を少しだけ幼く見せた。
「そういや、慈、甘いモン大好きなくせにあんま食わねぇな。なんでだ?」
「ちゃんと食べてるわよ。お夕飯が食べられなくなると申し訳ないから、セーブしてるだけ」
日没までの短い時間では敷地内を見て回るだけで終わってしまう。だから今日は屋敷内を調べるだけに留めて、客間を借りて泊り込むことに決まっていた。
「ねえ、本当にいいの? もう一室くらい、すぐに用意できるよ?」
紡が眉を下げて尋ねる。
いいのよ、と慈は肯定した。
困ったように雄に目を向けるも、彼にも無言で頷かれてしまう。
「よくあることだから、本当に気にしないで」
「そう、なの?」
「ええ」
間を置かず答えると、紡はまだ納得いかない様子だったが不承不承諦めた。
それを見届けて、慈はさくりとスコーンに歯を立てた。二人が絶賛するだけあって、確かに美味しい。食べ過ぎないように気をつけなければ。
「さすが、紡のお祖母様ね。お茶するにはうってつけだわ」
「そう言って貰えると祖母も喜ぶわ。……ああでも、当然よって胸張るかも。薔薇の前は朝顔だったらしいよ」
それはまた……。雄は思わず庭を見渡した。
朝顔のアーチ、朝顔の生垣。蔦を這わすには定番の植物だが、どうにも重みに欠けるというか、洋風な景観に似つかわしくない。
実際目にしたら何とも思わないかもしれないが、少なくとも今を見た後では違和感を禁じ得ない。
あからさまに口をへの字に曲げた彼に、紡もですよねぇとけらけら笑った。
「紡は?」
「え?」
「紡なら、何を植えるの?」
問われても、すぐには答えが浮かばない。薔薇のままでもいいと思っていたこともあるが、何より紡はそこまで植物に興味はないのだ。
「ちゃんと考えておきなさい、大切な場所なんだから」
「…………うん」
頷いた顔に僅かな翳りを残して、彼女は堪えるように噴水を見上げた。
水甕を持つ女性像が彼方を指差している。石膏が指し示す先では、古時計が静かに時を刻んでいた。




