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 ーーーガァンッ‼︎

 「ぎゃっ⁉︎」


 轟音を立てた鉄扉の奥で、明らかに人間の悲鳴がした。どすん! と倒れこむような音を耳に止めつつ、鉄扉を勢いよく開け放つ。

 すると、何か黒く細長い物が飛んできた。雄が横に避ければ、ガツンと硬質な音が響く。見れば、正体は鉄パイプだった。目線のみで辿れば、反対の先を野球のバットのように人の手が握っている。

 持ち主は肩で息をし、血走った目で睨め上げる小太りの男だった。

 男は逃げるでもなく、再度大きく腕を振りかぶって攻撃を試みる。

 雄はそれを冷ややかな目で見極め、半身をずらすだけの最小限の動きで躱した。空振りした鉄パイプを掴む手を捉え、強く捻りあげる。その痛みに相手が体勢を崩したところを利用して今度は関節技をしかけて身柄を拘束した。


 「ぐぅ……っ! 畜生、なんなんだ、お前は!」

 「あなたは……(ただし)様……⁉︎」


 亀山の驚愕の声を聞きながら、雄は捕縛した男を見下ろした。

 糺と呼ばれた男は歪な唸り声を上げながら拘束から逃れようともがいている。その血走った目が、亀山をぎょろりと捉えた。


 「おい亀山! この俺にこんなことをして、許されると思っているのか!」

 「っそれは此方の言葉ですぞ! 貴方は上条家を追放された身、この屋敷に立ち入ることは許されません!」


 怒号にも等しい叱責に、亀山が負けじと反論した。燭台を握る彼の指先は白っぽくなっている。かなりの力が込められている証拠だ。


 (なるほど、こいつが件の叔父か)


 仮にも血縁関係にあるはずなのに、外見も中身も紡とは到底似ても似つかない。亀山との関係も良好ではないようだ。

 ……それもそうだろう、彼は遺産を正式に相続した紡に(くみ)している。そんな彼にとっては、主人を害そうとする者は何人たりとも敵に他ならない。


 「住居への不法侵入と暴行未遂、だな」

 「ふざけるな、ここは俺の実家だぞ! 自分の家に帰ることの何が悪い!」

 「この屋敷は貴方の家ではございません!」


 亀山が絶叫した。


 「貴方は何十年も前に戸籍から抜かれ、遺産相続権も剥奪されている。そんな人間にこの屋敷を家と言う資格はない!」

 「黙れ! 使用人の分際で、誰に物を言っている!」

 「黙るのはお前だ。不法侵入はともかく暴行未遂は現行犯だ、言い逃れなんざできねぇよ。その身柄は拘束させてもらう」


 淡々と、雄が宣言する。糺が何がを喚こうとする間際には拘束を強め、無言のうちに黙らせた。


 「亀山さん、警察に通報を」

 「はい。…………ありがとうございます」


 消え入るような亀山の謝辞に、雄は何を言うでもなく目を伏せ、受け入れた。

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