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間食

作者: 梓ちひろ

『間食』


 お菓子にケーキ、それに合わせて紅茶やココア。甘いものが大好きな私は、カフェで優雅な一時を過ごす。このカフェは当たりだ。オススメのチーズケーキは、卵の風味が後味に残り、私好みだ。ケーキが甘いと予想し、珍しく頼んだカフェラテも、ミルク感が強めで、コーヒーが苦手な私でも、ガムシロップを入れないですむ。個人経営なのに、喫煙スペースもちゃんとある。また来たいと思ったお店は久々だ。


 結婚してから5年。それまでは仕事一筋だった私が、気取って専業主婦になったところで、急に与えられたたくさんの時間を持て余すばかりであった。洗濯は午前で終わるし、掃除も毎日していれば、そう時間は取られない。夕飯の買い物だって、30分もあれば終わる。子供がいたら変わるだろうけど、私も夫も、そんなに乗り気ではない。どちらも、いたらいたで面倒というのを知っている。本当のことを言えば、夫は仕事を、私はこの時間を、他のことに取られるのが嫌なのだ。


 子供ができたら、煙草も吸えないもんね。そう思い、今にも落ちそうな火種を、名残惜しく灰皿に押し付けた。たった30分の間で、灰皿は吸い殻で溢れていた。もちろん、私がこんなに吸ったのではない。目の前に吐かれた煙は、口中に残るバニラのフレーバーとは似ても似つかない、不快な匂いがした。その匂いの発生源は、まだ半分を残して、吸い殻の溜まり場に一押しされた。弱くなった煙が、別れを告げるように揺れている。


「そろそろおやつの時間ね」


「はあ?さっきケーキ食ったばっかだろ。まだ食うのかよ」


 席も戻さずに足早にお店を出た男に、嫌悪感すら感じられる。


 私は、甘いものが大好きなのに。なんでこんなことを、続けてしまうのだろう。


 夕飯前に間食をしてしまった私は、罪悪感に溺れながら、今日もあの男に抱かれる。


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