次はない
「……全くどのように詫びればいいか」
彼は自分の前で土下座して謝っている。
周りには、様々な職に就いていはる人らがいた。
要は、組の直参や幹部連中である。
「昔から言うやろ。人は過ちを犯す、とな」
自分、河菱組組長が、直参の一人の詫びを受けているところであった。
「まあ、ええわ。一度は許そう。なんや言うても人は人やからな」
土下座している直参が顔をあげる。
「あんたところの組員へ、どういう落とし前をつけさせるんかは知らん。組へと損害を出したことは、わては許してやる」
やけどな、と自分が直参を立たせて全員の前で静かに言う。
「次は、あらへんで。やらかしたときには……な?」
「はい、このたびは申し訳ありませんでしたっ」
再び土下座しかねない勢いで謝りだしたから、自分は脇にいた一人に言って、酒を持ってこさせた。
「これでも飲んで、落ち着けや。期待してるで」
「は、はいっ」
もう、何を謝っているかすら分からないほどの謝りっぷりである。
それで、手打ちとした。