表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
俺、レベル50になったら、告白するんだ  作者: 田仲ケンジ
第一章 フォー リーフ クローバー
7/73

第七話 付き合ってたりするんですか?

 

 【狩人雑誌(ハンターマガジン)】に、ゼイの活躍が巻頭掲載された翌日。

 ゼイとアスカの二人は、いつも通りロードの町外れにある広場で、戦闘訓練を行なっていた。


「うわっ!」


 ゼイがこれまたいつも通り、アスカの凄まじい攻撃に押され剣を落とす。


「……まいりました」

「……あんたさぁ」

「はい?」

「『オーク』の洞窟で、なんかブツブツ言ってたじゃない?」

「……あー」

「あれ、何て言ってたの?」


 アスカはゼイと『オーク』の戦闘を思い出しながら、そう問い掛けた。


「あの時『オーク』の攻撃が、なぜか見えたんですよ」

「……えっ?」

「ほら、いつもアスカさんが助言してくれるじゃないですか」

「うん」

「その時みたいに、『オーク』の攻撃が赤いエフェクトで先読みできたんです」

「赤いエフェクト?」

「はい。赤い軌道っていうか、そのエフェクト通りに『オーク』の攻撃がきたっていうか……」

「……あっ、あんた、ちょっと【狩人記録(ハンタードキュメント)】見せてみて!」

「あっ、はい。そういえば見てなかったな……」


 ゼイが【狩人記録(ハンタードキュメント)】を取り出し、アスカに提示する。


 ゼイ・デュランダール

 性別 男

 レベル 15

 戦闘能力 D

 補助能力 F

 戦闘感覚 S

 身体能力 E

 スキル 《神速》《心眼》

 魔法 なし

 E 《エクスカリバー》(長剣) 攻撃力 255

 E 《騎士の鎧》(軽鎧) 防御力 72


「えええええええっ!? アッ、アスカさん……!」

「戦闘感覚S!? Sなんて、存在したの……?」

「スッ、スキルもありますね……」

「あんたは気づいていないかもしれないけど、きっと《神速》がたまに凄い速度を出すスキルで、《心眼》がその赤いエフェクトが見えるスキルなんだわ……」

「……マジですか」


――天才。

 アスカが、以前ゼイに言われた言葉。

 その言葉が、アスカの脳裏によぎる。


「でも、アスカさんの攻撃は全然見えないですけどね」

「……あっ、当たり前じゃない! そんなの!」

「ですよねー。でも、Sは凄くないですか!? それに、初スキル嬉しいです!」


 ゼイは頭をポリポリかきながら、照れ笑いをした。

 アスカはそんなゼイを見て、初めて出会った時のことも思い出す。


 確かにアスカは、ゼイの戦闘センスを見てからPT(パーティ)登録を申し出た。

 なかなかの戦闘センスだったので、自分の目的が果たせそうだからと申し出たのだ。

 しかし、オリジンの村の時や『オーク』の洞窟の時など、最初に見た以上の戦闘センスを見せるゼイに、さすがのアスカも気になる程度ではなくなっていた。


「あっ、そうだ。今朝クラウさんから、【伝書精霊(でんしょスピリッツ)】が来ていたんですよ」

「……えっ? ああ、そうなんだ」


 【伝書精霊(でんしょスピリッツ)】とは、狩人協会から【狩人(ハンター)】に連絡がある時に使われる精霊だ。

 精霊自体は【狩人精霊(ハンタースピリッツ)】と同じで、【狩人(ハンター)】達に手紙などを届けてくれる。

 ゼイは朝に、クラウからの手紙を受け取っていた。


「手紙に伝えたいことがあるって書いてあったけど、何なんだろう?」

「……さぁね」

「じゃあ俺、そろそろ狩人協会に行って来ますね」

「私も暇だから、一緒に行くわ」


 二人はいつも朝十時から、二時間程戦闘訓練をしている。

 天気は晴天、時刻はお昼過ぎ。

 こうして二人は、狩人協会へと向かった。


     †


 狩人協会に到着し、二人はクラウの元へと向かう。


「こんにちは! クラウさん!」

「ゼイ君! 驚かないでよく聞いてね!」


 クラウはゼイを見るなり、すぐさま大声で話しかけた。


「どっ、どうしたんですか?」

「私ね、あれから色々調べたの」

「……はぁ」

「でね、ゼイ君はレベル10から15まで、一週間で上がったの」

「……ですね」

「それが、前代未聞の最短記録なのよ!」

「えええええええっ!?」


 ゼイが驚いた表情を見せるが、隣にいるアスカは真剣な顔つきで話を聞いている。


「あの伝説の【狩人(ハンター)】アスカ・ジョワユーズでも、一ヶ月かかってるの。その一ヶ月が、今までの最短記録なんだけどね」

「え……?」

「ゼイ君、あなた凄いことをしたのよ」

「……はぁ」


 自分が伝説の【狩人(ハンター)】の記録を塗り替えたなど、ゼイにとっては信じられないことだ。

 ゼイが焦りながら、アスカの顔をチラッと伺う。

 しかしアスカは、特に驚いた様子でもない。


「今日の呼び出しは、それが伝えたかったの」

「あっ、ありがとうございます」

「私、心配になってきたのよ……ゼイ君、無茶だけはしないでね」


 クラウはそう言って、ゼイの手を握り締めた。


「はひっ!」


 ゼイは突然クラウに手を握られた為か、動揺が隠し切れない。


 クラウはゼイがレベル1の時から、世話をしてきたのだ。

 もちろんレベルが上がると、【狩人(ハンター)】はより強いモンスターと戦闘をするのが常識であり、そんな中亡くなった者達もクラウは見てきている。


「ゼイ君、来週の【狩人雑誌(ハンターマガジン)】発効日の次の日、朝十時から時間ある?」

「えっ?」

「その日、狩人協会主催でレベル20ぐらいの【狩人(ハンター)】を対象にした、モンスターの狩り方講習があるのよ」

「そんなのがあるんですか」

「一緒に行かない? 私も勉強になるし」

「ふぇっ!?」


 ゼイは講習とはいえ、クラウからの初めてのお誘いに、これまた動揺をした。

 しかしすぐさま、アスカがこう切り出す。


「戦闘訓練は、どうするのよ?」

「……あっ」

「あら、カテナさんとの先約があるのね?」

「あっ、いや……はい」


 【狩り(ハント)】に行かない日は、毎日十時からアスカとの戦闘訓練。

 最近は当たり前のように行なっているが、ゼイからすればアスカとの戦闘訓練は最高の贅沢だ。

 アスカとの戦闘訓練か、クラウとの講習か。

 ゼイはどっちか決めきれず、黙り込んでしまう。


「……まぁいいわ、その日は特別にお休みにしてあげる」

「……あっ、ありがとうございます!」

「カテナさん、いいの?」

「いいですよー。こやつのこと、よろしくお願いします!」


 アスカが笑顔を見せ、ゼイの背中を叩く。

 すると、その時であった。


「こんにちは!」


 ゼイとアスカが振り向くと、綺麗なピンク色の髪でツインテール、同じくピンク色の瞳をした、小柄な美少女が立っていたのだ。

 手に杖を持ち、白いシャツと白いミニスカートの上に、これまた白いローブを羽織っている。


「ゼイ・デュランダールさんですよね? 私はフルン・フロッティ、十六歳。ヒーラーやってます!」

「……はぁ」

「レベルは7です! 私をPT(パーティ)に入れてください!」

「えええええええっ!?」


 ヒーラー。

 回復魔法専門の魔法使いで、剣や攻撃魔法を扱うアタッカーをサポートする【狩人(ハンター)】だ。

 ヒーラーの回復魔法は傷も疲労も回復してくれるので、レベルが高い【狩人(ハンター)】のPT(パーティ)には必須でもある。


「【狩人雑誌(ハンターマガジン)】でゼイさんの活躍を見て、ファンになりました!」

「マッ、マジですか……」

「あっ! これが私の【狩人記録(ハンタードキュメント)】です!」


 フルン・フロッティ

 性別 女

 レベル 7

 戦闘能力 F

 補助能力 D

 戦闘感覚 E

 身体能力 E

 スキル なし

 魔法 《回復魔法クラス4》《補助魔法クラス2》

 E 《光の杖》(聖杖) 攻撃力 16

 E 《シルクのローブ》(ローブ) 防御力 39


「魔法のクラスって、8から1の順に高いんだっけ?」

「はい! 一応補助魔法も扱えます! よろしくお願いします!」

「いっ、いやでも、急に言われてもね……」


 うろたえるゼイは、アスカとクラウの反応を窺った。


「ゼイ君、これから先はヒーラーさんもいたほうが安全かもよ」

「……私はどっちでもいいけど、PT(パーティ)のリーダーはあんたなんだから、あんたが決めなさい」


 クラウはPT(パーティ)登録を進め、アスカはなんだかそっけない感じだ。


「……分かりました。よし、フルンだっけ? じゃあPT(パーティ)組もうか」

「あっ、ありがとうございます!」

「でも、一つだけ条件があるんだ」

「はい! ゼイさんと組めるなら何でも!」

「……はは、後で話すよ。じゃあクラウさん、フルンとのPT(パーティ)登録をお願いします」

「はいはい。今日は何か依頼受けていくの?」

「……そうですね、じゃあこれで! カテナさん、いいですよね?」

「いいわよ」


     †


 こうしてゼイとアスカは、フルンとのPT(パーティ)登録を終え、ついでに『リザードマン』討伐の依頼も受け、狩人協会を後にした。

 『リザードマン』が人間に悪行を行なっているという大きな森へと向かう間に、ゼイはアスカとPT(パーティ)を組んでいる理由、すなわちシーンのことをフルンに伝える。


「――って、感じなんだ。それでもいいかい?」

「了解です! 私はゼイさんといれれば、何でもいいです!」

「……はは」

「ところでゼイさんは、カテナさんとその……付き合ってたりするんですか?」

「ええっ!?」

「もしくは、さっきの狩人協会の人と……」


 突然フルンは、爆弾発言をしだした。


「ちょっと、いきなり何を言って――」

「付き合ってないわよ」


 とまどうゼイとは裏腹に、アスカが冷静に即答する。


「そっ、そうだよ。俺は付き合ってる人とかいないから……」

「了解です!」


 笑顔になったフルンは、そのままゼイの腕に抱きついた。

 フルンのスタイルは、アスカ以上クラウ未満だ。

 柔らかい胸の感触が、ゼイの腕に伝わる。


「フルン……胸が当たって……」

「知ってますよー!」


 フルンは、相当なゼイのファンだった。

 これも【狩人雑誌(ハンターマガジン)】の影響といえば、影響だろう。

 ゼイがこの状況をどうにかしようと、アスカにこう切り出す。


「カッ、カテナさん! 今回のシーンのテーマは!?」

「……そうねぇ」


 アスカはフルンにくっつかれているゼイを見て、静かに話し出した。


「怒りね」

「えっ?」

「レベル15になって浮かれている弟子がピンチになって、師匠が怒って剣とはこういうものだと見せ付ける」

「おっ、俺は浮かれてなんかいませんよ!」

「……とにかく、今回から助言はしないからね」

「ええっ!?」

「そうねぇ、そのくっついてる娘に、あんたがこれから助言をしなさい」

「俺が、フルンに!?」

「何事も経験よ。ヒーラーを守りながら戦うのも」


 ゼイに抱きつく、フルンの力が強まる。


「ゼイさん! よろしくお願いします!」

「……って事は、今回はカテナさんがメインで戦う感じですか?」

「……そうね、何か暴れたい気分だし」


 こうして三人は、『リザードマン』がいる大きな森へと入っていった。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ