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かたちあつめ

深夜のサイレン

作者: てぃむ


まだ幼い胸が、熱を持ち激しく動くと、それとともに穏やかに潜んでいた息が一気に止まる。



もう何度も何度も、数え切れぬほど繰り返してきたことに、落ち着きと不安が生まれる。




その度に、車を走らせる。


深夜の静かな道を、走る。


バレぬよう、時たまの赤信号無視も、この時は仕方がないと、隣の母は確実に素早く、病院へ走る。



そうして、空気を取り込んだあと、少々の薬と、母の買った飲み物でまた穏やかさを取り戻すのだった。











しかし、その日は少々状況が変わった。



申し訳なくなったのだ。



治ることのない発作、深夜に音を荒立てて、起こし、走らせること。そして、何もできる自身に。



荒れる前にビニール袋を用意し、寝床の横に水分とタオルを置く。時計を見ながら、発作の起こる時間を頭に刻みこんだ。



毛布を深くかぶり、口を、音が漏れるよう押さえつけて、朦朧とする意識の中、その時が止まるよう苦しみも抑えながら。




夜はとても静かで、たまに走り去るトラックのタイヤ音。


近くで眠る兄弟の音。



虫すらも、昼間のように騒がしく鳴いたりはしない。



その中を、ひとりだけ、息を殺して。










3、4時間が過ぎた頃、作戦はあっけなく失敗した。



いつも通り、深夜の静かな道を走り、病院につけば空気をもらい、薬ももらう。飲み物も渡してくれる。


ただ泣きながらも、幼い胸は、安心を得た。



見捨てられてなどは、いない。






それからしばらくして、そのような発作は起こらなくなった。





大人になり、少しずつ世間を覗きながら、幼い頃の大人達の言葉と、そして今の言葉と向き合った。


答えは、きっと見つかるのだろうと、不確定な想いを抱きながら。




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