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「本物」のしょたこん

 そして沙織はフィギュアスケートの選手のように華麗にスピンし始めた。

 恍惚とした病んだ表情で、踊るように回る沙織。

 その美しさにみんなが沙織を注目した。


「ニャンパスwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwアクアwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwイリュージョンwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww」


 回りながらそう叫んだ沙織は、僕達に右手に持っていた青くて太いキャップにハートの飾りがついてるペンを力強く突き出しポーズを決めるとそのまま停止した。


 しばらく無言の時間が続いた。


 あれ…?何にも変わらないぞ…?

 ただ沙織がクルクル回って止まっただけじゃん…

 なにが魔法だよ。

 沙織がそのペンを持ってクルクル回りたかっただけなんじゃないのか??

  

 みんなも何かが変わると思っていたのか、拍子抜けしたように自分の体を見たり周りを見回したりしていた。


「沙織、なにも変わらないぞ?魔法なんてあるわけないだろ?」


 僕がそう言うと沙織は自信あり気に首を横に振った。


「成功だwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwもうみんなに魔法はかかっているwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwみんなが『20歳』になる魔法をかけたwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwこれで飲酒からなにから自由自在wwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww」


 なんだって…?

 

 僕はいつ「本物」達にやられても大丈夫なように持ち歩いている保険証を財布の中から取り出した。

 確認すると僕の生年月日が『1995年』に変わっていた。

 

 ああ…もうなんでもありだな…

 まあ高校生に飲酒などさせて問題になるよりは、魔法で20歳になって合法にした方が問題ないか…


「あ!!!私、胸が大きくなっていますわ!!!!!!やったのですわ!!!!!!」


 そう言って喜んでいる清城京を見ると、確かに胸のあたりが窮屈になっているようであった。

 それにいつもより落ち着いて見えるというか、清楚で大人びた感じがする。

 元々清城京はいかにも育ちが良さそうなご令嬢ぽいから、「一見」品のある素敵な女性になっていくんだろうな。

 

 これがニャンパススターパワーの力なのか?

 さすが伝説の力を引き継ぐ魔法!!!

 数年後のみんなの成長を見れるという部分に関してはなかなか良いかもしれない。


「私はまた背が伸びた感じがするなwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww」


 沙織はそう言うとモデルのように、颯爽とウォークし立ち止まると病んだ決め顔でポーズを決めた。

 確かにいつもより数センチは大きくなっている。

 沙織もまだまだ成長していくんだな。

 

 人間とは思えない美しいボディーライン。

 女神のようにキレイな瞳。

 そして…大変なことになっている頭の中…


 もしかすると沙織は年を取るにつれ、見た目と頭の中の差が広がっていくのかもしれないな…


「おかしいのだ…20歳になったのに何も変わっていないのだ…」


 かなっちは慌てた様子で自分の体をチェックしたあと、怯えた様子で震えていた。

 すると、天使が無表情でかなっちに近づいてきてかなっちを抱きしめた。


「大丈夫。私も特に変わっていない。きっと成長期はこれから」


 天使がギュッと強くかなっちを抱きしめると、目に涙を浮かべたかなっちが「そうなのだ…」とつぶやき天使を抱きしめた。


 まあ、かなっちも天使も小さいのが売りだから、そのままでも良いと思うんだけどね。

 沙織を見ている限り、体の成長もそうなんだけど、頭の中の成長も重要だからそっちを頑張ってくれ。


「私も腰痛と肩こりが取れたぞ!!!!20歳は良いもんだな!!!!!」


 篠宮隊長がそう言いながらさっぱりとした表情で、ラジオ体操のように体を伸ばし始めた。


 それを聞いて、また「本物」達、そして僕も、唖然とした表情で篠宮隊長を見つめた。


「あの…隊長は20歳なんですよね…?」


 清城京が恐る恐る篠宮隊長に近づきながらそっとそう聞くと、篠宮隊長は不思議そうな顔をして清城京を見た。


「そうだけど、どうしたんだ?」


 篠宮隊長が真顔でそう言うと、ガタガタ震えたかなっちも篠宮隊長に近づいてきた。


「どうして20歳の隊長が20歳になる魔法にかかると体調が良くなるのだ…????」


 かなっちがそっとそう質問すると、篠宮隊長は良い笑顔で大きく笑い出した。


「あははははははははっ!そういうこともあるさ!!!」


 篠宮隊長…

 もう良いでしょ!!!!

 良い笑顔だから誤魔化されそうになるけど、本当は何か隠してるでしょ!!!!

 苦しい!!!!こっちは苦しいんですよ!!!!

 そろそろ本当のことを言ってくださいよ!!!!

 ねえ…ねえっ!!!!!!


「『寝取らレーゼ』は欲求不満の若妻。でも本当の年齢は知れたものではない。差身が見ていた全ての作品でそうだった」


 天使が少し離れた所から笑顔の篠宮隊長を無表情で見つめながら淡々とそう言った。


「隊長wwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww長年の工場仕事で体が傷んでいたのかもしれないなwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww隊長は工場に十何年勤務してるんだ?wwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww」


 沙織が病んだ笑みを浮かべながら、シラッとそう言うと篠宮隊長は何の気なしに沙織に向き直った。


「ああ、そうだな。そろそろじゅうご…」


 篠宮隊長が「じゅうご…」と言った時に全員が驚愕の表情で固まった。

 

 そして、何かに気がついてしまった篠宮隊長の顔に黒い縦線が無数に走り話すのを止めた。

 しばらくうつむき何か考えた後、良い笑顔で沙織を見た。


「ああ、5年だ。工場には勤務して5年だ。あははははははははっ!」


 篠宮隊長…前に中学校を卒業してすぐに工場で働き始めたと言ってましたよね…?

 あなた…まさか大台に乗っちゃってるんじゃないんんですか…

 そろそろ本当のことを言って下さい…

 今さらそれくらいのことでうろたえる我々ではありません…

 自分の口から…

 自分の口から言ってくださいよ!!!!!!


「隊長wwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwもしかしておばさんではないよな?wwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww私の2倍の年齢wwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww」 


 沙織が病んだ笑みを浮かべながらそう言うと、篠宮隊長は一瞬青ざめたあと、猛烈に怒り始めた。


「ばっ!!!!!ばかっ!!!!!!そんなわけないだろ!!!!!!私は20歳だ!!!!!!」


 怒り狂う篠宮隊長に沙織が嘲り笑うように挑発し始めた。


 篠宮隊長!何で年齢のことを言われて、そんなにも必死になってるの!!!!

 もうやめようよ!!!!

 大丈夫だから!!!みんな受け入れてくれるから!!!!

 このくらいにしときたいんだけど!!!!!!


「本当か?wwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww『リアル寝取らレーゼ』が性的衝動を抑えきれずに差身を襲うwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwしょたこんwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww幼い少年差身を必死に襲うおばさんなんじゃないのか?wwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwあああっ!?wwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww」


 沙織がそう篠宮隊長に言い放つと、何かがぷちんと切れた篠宮隊長が沙織に走って襲いかかった。


「おい!!!!沙織!!!それ以上、人の年齢のことを言うな!!!!!私は20歳なんだあああああああああああああああああああああああああっ!!!!!!」


 目に黒い影がかかり凶悪な光を発した篠宮隊長がそう叫びながら沙織に襲いかかろうとするんだけど、沙織が追いつかれないように走って逃げはじめ鬼ごっこが始まってしまった。


「篠宮隊長はwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwおばさんのしょたこんwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww」


 沙織はそう子供のように喚きながらどこまでもに逃げていった。

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