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「本物」のカラオケ屋さん前

 興奮して叫ぶ沙織を僕は愕然として見ていた。

 止まらない…「本物」は止まらない…

 僕はいつも通りことの成り行きを見守ることにした。 


 しばらく、歩くといつものカラオケ屋さんについた。

 僕は財布の中からカラオケ屋さんのメンバーズカードを探し取り出した。

 沙織は頭は良いんだけど物を失くしやすいので、この類のものは全部僕が預かっている。


「ついたwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwいつものカラオケ屋さんにwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww」


 沙織がカラオケ屋さんの前で、パパに買ってもらったであろうオシャレなバックの中をガサゴソと何かを探し始めた。


「沙織、カラオケのカードは僕が持ってるよ」


 沙織にそう声をかけると、沙織は病んだ目つきでこちらを見ながら首を振った。   


「それを持つのは差身の係wwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww今wwwwwwwwwwwwwwwwww違うものを探しているwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwあったwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww」


 沙織はバックの中から青い太めのペンを取り出した。

 ペンのキャップにはハートの形をした飾りが付けられていた。


 おい!!!!沙織!!!!それってあれだろ!!!!

 最近リメイクされた伝説的なあれだろ!!!!!

 知らないぞ…おまえ…かなりシャレにならない所に足突っ込んだんじゃないの!!!!


「おお!!!すごいな!!!!○ー○ーマー○○○ーなのだ!!!!!」


 かなっちがそう言って羨ましそうに、沙織が握っているペンに近づいた。


「なんだ、それは?変身するのか?」


 良く意味が分かってないであろう篠宮隊長が沙織にそう尋ねると、沙織は自慢気に「ああwwwwwwwwwwwwwwwwwwww」と言った。


「それは『モルダイバー』か何かか?メタモルフォースか?」


 篠宮隊長が真顔でそう沙織に聞くと「本物」達全員が唖然とした表情で固まった。

 数秒固まったあと「本物」達は一斉にそれぞれが持っているスマホやタブレットなどを取り出し、物凄い速さで『モルダイバー』を検索し始めた。


「『モルダイバー』1993年に発売された『OVA』作品」


 1番最初に検索しヒットした天使がポツリと言った。

 天使にしてはめずらしく少し驚いたような目で篠宮隊長を見上げた。

 

「隊長は本当に20歳なの?」


 天使が篠宮隊長に確認するように尋ねると篠宮隊長はおかしそうに笑った。


「あははははは、ツインテールはおもしろいこと言うんだな!私は20歳だぞ。このあいだ誕生日が来たんだ」


 良い笑顔の篠宮隊長に7インチタブレットを手に持った清城京が恐る恐る近づいていった。

 

 あれ…おかしいな…清城京はさっき手を後ろに縛られたはずじゃ…

 まあもう、そういう細かいことは関係なくなってるんだろうけどね…

 考えてみたら2年位前もこんな感じだったよな…


「あの…篠宮隊長…今2015年ですわよね?」


 清城京がそっとそう聞くと、篠宮隊長は不思議そうな顔をした。


「ああ、そうだ。それがどうかしたか?」


「篠宮隊長は1995年生まれですわよね?どうして1993年に作られたアニメのことをご存知なのですか?…しかもテレビでは放送されていない『OVA』なのに…」


「たまたまだろ!そういうこともある!あはははははははっ!」


 隊長…凄く若く見えるんだけど…あなた本当は何歳なんですか…

「本物」達ですら知らない昔のアニメを知ってるってどういうことなんですか!!!!

 しかも『OVA』!!!!!

 おかしい…絶対なんかおかしいよ!!!!!!! 


「ああwwwwwwwwwwwwwwゆかなのデビュー作なのかwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwそういや神が我々をないがしろにして書き始めた『ステレス アイドル エージェント』のヒロインの名は『篠宮ゆかな』だったなwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww神の趣味が伺えるwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww」


 沙織がスマホで検索した何かを見ながら、1人で納得した様子でそう言った。


「みんなwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww今からみんなに魔法をかけるぞwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww私のニャンパススターパワーが炸裂wwwwwwwwwwwwwwwwwwww」


 沙織がカラオケ屋さんの入り口から外れた所にみんなを誘導し並ばせた。

 

「沙織!魔法ってなんだ?」


 僕が沙織のそう問い正したが、沙織は返事をせず自信ありげに笑っていた。


 おい!!!!一体何をするつもりなんだよ!!!!

 なにするんだ!!!!!魔法なんて今まで使ったことなんかないだろ!!!!!

 というか、魔法使うとかってなに!!!!!


 不安になる僕をあざ笑うかのように沙織は僕を見つめた。


「差身wwwwwwwwwwwwwwwwwかかれば分かるwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwみんなでその辺に固まって立っていてくれwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww」


 沙織は右手で青くて太くてキャップにハートの飾りが付いているペンを高々と突き上げた。

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