「本物」の仕事
沙織のパパ…
あなた!なんだか!凄く悪い顔をしてるんですけど!!!!
もしかして、沙織にわざとメチャクチャなことをさせたのも、何か考えがあってのことなんじゃないんですか!!!
悪巧みでしょ!!!悪巧みしてるんじゃないんですか!!!
全てが用意周到過ぎて、計画的な犯行に見えるんですけど!!!!
沙織達は実は操られてるだけで、この事件の「本物」の黒幕は沙織のパパ!!!あなたなんでしょ!!!!
それから、下に転がってる反社会的組織の人達をどこかに運び去っている東南アジア系の人達は誰!
そんなに大勢どこから連れてきたの?!
そして反社会的組織の人達をどこに連れて行くの?!
準備してなきゃ、そんなことできないでしょ!!!!!!!
まあ、いいや…
細かいことまで考え始めると、自分の心が壊れてくる…
引きずられてはいけない…
引きずられてはいけないんだ!!!
何にも悪いことしてないのに、巻き込まれてこっちの方が狂ってくるからね!!!!
ともかく、危機は去った。
何か後々、ヤバいことになる気もするんだけど、それは考えないことにする。
足は痛いけど、それ以外はまあ元気だし、僕も何かできることは手伝うか。
クビになってるかもだけど、そんなのこの状況じゃ関係ないだろうしね。
仕事なんだ。
お金はもらえないかもしれないけど、困ってるみんなを見過ごすことはできない。
僕も少しは協力して、みんなの役に立つのだ。
それが今回僕がこの工場で学んだ1番重要なこと。
そんなに儲からないかもしれないけど、みんなで頑張ればどんな辛いことも協力してやる切ることができる。
もちろんお金も大事だけれども、それだけだったら苦しい仕事は乗り切れないし楽しくない。
人との繋がりが1番大事で、みんなで頑張るから心から燃え上がるような達成感を得ることができ仕事にも誇りを持てるのだ。
そこを忘れてしまうと、多分仕事とは何かが分からなくなってしまう気がする。
「篠宮隊長!僕も着替えて、できることだけ手伝いますよー!」
僕が屋上の柵越しに下にいる篠宮隊長に向かってそう叫ぶと、篠宮隊長は嬉しそうに満面の笑みを浮かべた。
「差身!ありがとう!でも、無理しないで!」
篠宮隊長が普通の女の子みたいに下から手を振った。
いつも通りの爽やかな朝に戻った。
今日も工場の1日が始まる。
なぜだろう、みんなが慌ただしく働く姿を見ている篠宮隊長は、何だかとても嬉しそうに見えた。
あの小さい居酒屋で篠宮隊長は「工場を家族のように考えている」と言っていた。
嬉しそうにしている篠宮隊長は、僕達作業員とだけではなく、今も亡くなった篠宮隊長のおじいさんと一緒に働いているのだろう。