「本物」の告白
「わたし!わたしっ!!!差身が工場に来なくなちゃうって考えてたらっ!!凄く不安になってきたのっ!!!!!ずっと差身に工場にいて欲しい!!!!」
聞いてるみんなが切なくなるような篠宮隊長の心の叫び。
篠宮隊長がそんなことを思っていたとは…
それは工場の労働者としてではなく、1人の人間としてそばにいて欲しいと思われたことが何だか恥ずかしいけれども、僕はとても嬉しかった。
そしてみんな一呼吸置いてから僕に注目した。
「篠宮隊長!」
僕は思わず叫んでしまった。
ああ…かわいいなあ…
デレた篠宮隊長は最高だよ…
凄く好きになっちゃいそう…
もう一生篠宮隊長に育ててもらっちゃおうかなあ!!!!!
仕事も覚えてきたし、この工場で篠宮隊長と過ごすのも悪くないぞ…
「おいwwwwwwwwwww差身wwwwwwwwwwwwwwwwwwww何デレデレしてるんだよwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww殺されないと現実が見えないようだな?wwwwwwwwwwwwwああっ?!wwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww」
ちょっと良い夢を見ていた僕に現実が襲ってきた。
目に黒い影がかかり凶悪な光を発している沙織が、光の速さでこちらに移動してくると、沙織は後ろから僕の首を抱えこみ、僕の喉元にコンバットナイフを突きつけてきた。
駄目だ…この狂った現実からは逃げ切れない…
やはり「幼馴染みの彼女が僕を殺しにやってくる!」という狂った現実から、僕は一生逃げ切れないんだよね!!!!
「ごめん!!ごめん!!!沙織!!!!死にたくない!!!!悪かったから殺さないでくれ!!!!」
分かった沙織!!!もう諦めるから!!!!
余計なことは考えないよ!!!!
もう、お前のことしか考えないよ!!!!
というか、お前のこと以外を考えている余裕はないから!!!!
「隊長wwwwwwwwwwwwwwwwwwwそれだけか?wwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww本当は違うんだろ?wwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwんんっ??!!!!wwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww」
沙織は僕にコンバットナイフを突きつけたまま、沙織は篠宮隊長にそう叫んだ。
ガタガタ震えている篠宮隊長はふらふらと前に歩み出すと、こちらを見上げたままガクッと両膝を折り地につけた。
「さしみっ!!!!さしみっ!!!!わたし!わたしはっ!!」
僕を呼ぶ篠宮隊長の声は悲痛でもあり、どこか喜んでいるようにも聞こえた。
押し寄せる波のように篠宮隊長の思いが伝わってくる。
僕はじっとそれを聞いていた。
「わたしっ!!!差身のことが!大好きなのっ!!!!!だからどこにも行かないでくださいっ!!!」
篠宮隊長の何も混じることのない純粋な気持ちが伝わってきた。
いや、篠宮隊長は、最初から真っ直ぐで裏表がない、純粋な人だったのだ。
同年代の友達と触れ合うことがない、真面目で真摯に仕事に取り組んできた篠宮隊長は、その思いのぶつけ方も知らずに悩んでいたのかもしれない。
「デレの最終進化形。隊長は寝取らレーゼを超えた」
天使が見下ろしながら無表情のままそう言った。
誰もが息を飲んで固まっていたその時であった。
「おっと、そこまでだ!!!」
どこからか、聞き覚えのある大人の男性の声が聞こえてきた。