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「本物」の暗殺者達

 天使はテイザーガンを片手に暗い階段を駆け下りていった。


 ああもう、どんどん取り返しがつかなくなってくる。

 日本なのにどうしてこう気にせず殺し合っちゃうのかなあ!

 僕達は法治国家に住んでいるはずなのに!

 どうしてこう定期的に「本物」の修羅場に遭遇しちゃうのかなあ!


 僕もゆっくりとだが階段を降りて天使の後を追った。

 

「差身!大丈夫なのか!一緒に行くのだ!」


 かなっちはそう言いながら、慌てたように僕の横に駆け寄ってきた。

 

 ああ、多分、工場の中が真っ暗なので怖いんだろうな。

 かなっちはめっちゃ臆病だから、本気でお化けとか出るんじゃないかと怯えるし、1人でこんな所にいられないんだろうな。


「大丈夫だよ。でも、ゆっくりでしか降りることができないんだ」


 僕が優しくかなっちに声をかけると、かなっちはいつもと違って恥ずかしそうにモジモジし始めた。


「お…おい…差身…大変そうだから私が支えてあげるのだ…遠慮したら駄目なのだ…」


 かなっちはそう言うと、めっちゃ怖がっているのか、僕の足が折れてる側にガッシリとくっついてきた。


 いや、多分それ、余計に動きにくいんだけど…

 ぎゅうううっとくっついて離れない。

 僕はその場で立ち止まった。

 かなっちの顔を見ると、眠り始めた子供のように安らかな顔をしていた。

 目を閉じて少し顔を赤らめている。


「これが終わったら南の島に逃げるのだ…学校は行きたくないのだ…差身と遊ぶのだ…」


 良い夢を見ているかのように、かなっちはゆっくりと気持ち良さそうにつぶやいた。  


「差身が温かいのだ…沙織みたいな馬鹿なのと遊んでないで、もっと私と遊ぶのだ…」


「分かった。もっとかなっちとも遊ぼう」


「本当なのか?沙織よりもなのか?」


「ああ、だから早くこんなこと終わらせて帰ろう」


「良かったのだ…沙織ばかりずるいのだ。あいつはいつもいつも邪魔してくるのだ…」 


 かなっちは嬉しそうな顔をして僕を見上げた。


 その時だった。

 階段を駆け上がる音が近づき、僕達の前で止まった。

 見ると男達2人が息を切らしながら、僕達を睨みつけていた。


「おい!!!お前達何してんだあああっ!!!邪魔だ!!!どけええええっ!!!!!!」 


 男達の1人がそう叫ぶと、持っていたバールで階段の手すりをぶっ叩いた。

 ガキイィィィィィーーーン!!!!!

 鉄と鉄が強くぶつかり合う音が工場中に響き渡る!


「うわあああああああああああっ!!!!見たのか!!!!見てたのか!!!!!殺すのだ!!殺すのだ!!バカッ!!バカッ!!!」


 かなっちは涙目になりながら怒りと恥ずかしさを合わせたような感じで顔を真赤にしていた。

 そして、どこからかバタバタと慌てて、25オート沙織改造バージョンを取り出した。


「あ、あの…」


 僕はある異変に気がついたので、男達に声を掛けた。


「ウルセエええぞ!!!何か用か!!!!!!」


 男達は僕にそう凄んできたんだけど、とても大切なことだと思って言うことにした。


「あの…光学照準器の…レーザーポインターが…頭とか心臓だとさすがに当たると死ぬと思うので…逃げた方が…」


 僕は指を指して、どこからか伸びている赤い点の光が、1人の男の体を刺すように照らされているのを教えてあげた。

 男達はその赤い点に気がついたんだけど、一体何が起きているのか理解できていないようだった。


 


 ボンッ!!!!ボンッ!!!



 

 軽めの銃撃音が聞こえたかと思うと、男達は小刻みに痙攣しながらその場に倒れこんだ。

 その後ろというか、階段を少し降りたところの踊り場に、天使がテイザーガンを持って立っていた。

 その赤い光は天使のテイザーガンから発射されていたものだったのだ。

 さすが自分の存在感が薄いのを利用した暗殺術(ステルス キラー)!!!!

 僕達にもその存在を気がつかせないとはさすがだ!!!!!

 針のついた銃弾が人間に刺さると高圧電流が流れ、相手を身動きできなくさせるテイザーガン。

 高圧電流で身動きできなくなった男達を天使は下からじっと見ていた。

 

「死ぬのだ!!!!見たのが悪いのだ!!!!!差身の痛みを思い知るのだ!!!!!!」


 



 パス!パス!パス!パス!





 25オートが静かに火を噴く。

 痺れて倒れていた男達の足に、かなっちが容赦なく発砲した。

 沙織のが作ったサイレンサーのおかげで、かなっちの25オートは銃撃音が最小限に抑えられている。

 

 ほとんど音がしないので急に足に激痛が走ったように感じているであろう。

 2人の男達は何が起こったのか分からない様子でうめき苦しんでいた。


 あーあ、撃っちゃったよ…

 死ぬことないと思うけど痛そうだな…

 この人達と成り行き上戦っているけど、この人達絶対に僕が骨折したこと知らないと思うんだよな。

 かなっち、この人達は僕が怪我した原因じゃないんだよ…


 どちらかというと、一斗缶をちゃんと重ねて積み上げてなかった人が原因だと思うんだよ!!!

  

 あと、僕のことよりも、恥ずかしい過去を消したいがために、撃っちゃったんじゃないの!!!!

 

 とにかく屋上に急ごう。

 沙織は何とかして止めないとならない。

 沙織は僕にしか止めることができないのだ。

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