「本物」の予知夢
その夜、何だか変な夢を見ていた。
何にもない空間。その暗闇の中。
武装した4人の「本物」達が僕を黙って取り囲んでいるのだ。
亡霊のようにゆらりゆらりと…
それぞれが好きな武器を手に取って僕を見ていた。
沙織はM16A4。
命中精度が高く、光学照準器などのパーツも楽に多数装着可能。
1度引き金を引けば、全てを蜂の巣にするまで止まらないサブマシンガンだ。
米軍御用達。銃身も軽く、また銃弾も小径なので大量に持ち運びやすい。
まさに実践で全てを破壊するには、これ以上のものはないだろう。
天使はテイザーガン。
護身用にも利用されているもので、小さくハンドガンに似たものだ。
殺傷能力は低いものの、天使のような力のない女性にも使いこなせる。
引き金を引くと針がついた銃弾が飛び出し、相手に刺さるとスタンガンのように強力な電圧で相手の動きを封じる。
切り離し可能ではあるが銃弾と銃身はワイヤーでつながっていて、そのワイヤーに触れた者もまとめて凶悪な電撃の餌食となる。
当然、その電撃を浴び続けたとしたら…
清城京はワルサーWA2000。
命中精度が高いオートマチック式スナイパーライフルだ。
恐らくこのスナイパーライフルを日本国内で手にしているのは清城京だけだ。
盗撮で鍛えられた千里眼。
「本物」の遠距離盗撮者が本気で狙った相手は確実に地獄行きだ。
かなっちは25オート沙織改造バージョン。
手のひらに収まるほどの小さな25口径自動小銃。
女性でも簡単に扱えるが、銃弾が撃ち込まれた相手は当然大変なことに…
沙織が改造したことにより、かなっちの25オートはサイレンサー付きだ。
発砲しても銃声が聞こえない。
世界中どこを探しても、25オートのサイレンサーは真っ当なルートでは製造されていない。
全てを闇から闇へ葬りたい時、人知れずターゲットを消すにはもってこいの改造銃だ。
あからさまに異様な様子。
僕は沙織達に声をかけようとしたんだけど、夢の中の僕は声を出すことはできなかった。
するとゆっくりと「本物」達は僕に背を向け歩き始めた。
そしてすぐにその背中は暗闇の中に消え去っていった。
そこでちょうど目が覚めた。
時計を見ると午前4時半。
嫌な予感がする。
沙織や他の「本物」達の携帯やラインを鳴らしたのだが全く応答がない。
あいつら…まさか…
僕は起き上がり着替えると、折れた足を引きずりながら工場へと向かった。