「本物」の嵐の前の静けさ
「差身wwwwwww歩けそうだなwwwwwwwwwww先に帰ってくれwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww私達はやることができたwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww」
僕達は工場の外に出ると沙織がそう言った。
沙織の後ろに他の「本物」達も立っていた。
何かやるつもりなんだろうけど、僕のためだとしたら何もしなくていいのに。
確かにさっきの事務所の人は凄く感じが悪かった。
でも、篠宮隊長も健二さんも、他の工場の人達も、何も分からない僕達に親切にしてくれた。
それを優先したいのだ。
みんなが困るようなことは沙織たちにして欲しくないのだ。
「おい、沙織。僕のミスで怪我したんだから、何もしなくても大丈夫だぞ。一緒に帰ろう」
僕がそう言っても、沙織はうんと言わなかった。
1度「本物」の魂に火がつくと誰にも止められない。
それは僕が一番分かっていることだ。
それでも止められるのは僕しかいないのだ。
「帰らないwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww私の「本物」の愛が殺せと言っているwwwwwwwwwwwwwwwwwwういぃぃぃっぃぃぃっぃいいwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww」
駄目だ…もうこれは止まらない。
直感的にそう感じた。
警察に連絡した所で、何もしていないんだから動いてくれない。
なるようにしかならないな…
「どちらにしても早めに帰らないといけないwwwwwwwwwwwwwwwwwww差身は心配しないでゆっくり休んでwwwwwwwwwwwwwwwwww早く怪我を治さないと南の島で遊べないwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww私達もすぐに帰るwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww」
沙織がそう言うと4人で工場の裏の方に歩いて行った。
まあ、どうすることもできないし、すぐ帰るって言うなら少しいたずらする程度だろう。
僕も正直、足も痛いし体も疲れていたので、早く帰って寝たかった。
「沙織、篠宮隊長と会ったら怪我したから明日から来れないって伝えといて」
僕に背を向けて歩き出した沙織にそう声をかけると、こちらを振り返り病んだ笑みを浮かべながら片手をあげた。
「ニャンパスwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwああwwwwwwwwwwwwwwwwww分かったwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww会ったら伝えておくwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww隊長は悪くないwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww」
そう言うと沙織達は、また歩き出した。
僕は家に帰ると倒れこむようにベッドに乗った。
色々あったせいか、足の痛みなんて関係なしに、一気に意識が飛んでいた。
気がつくと少しだけ休むつもりが外が真っ暗になっていた。
沙織がちゃんと家に帰っているかどうか心配になったので、バックからスマホを取り出しラインで連絡した。
「沙織、ちゃんと家に帰ってるのか?」
そう文字で送ると、ラブライブのスタンプでOKと送ってきた。
そして、沙織の部屋で他の「本物」達と一緒にいる集合写真を送ってきた。
ああ…何ごともなく遊んでるんだな…
明日、工場ないし、昼まで寝こむか…
嵐の前の静けさ。
爆発する「本物」の愛。
沙織達の本気を見てしまうのに、そんなに時間はかからなかった。