「本物」の労災
昼休みが終わり、僕はまた作業をしに戻った。
重労働が続いているのと、ご飯を食べて少し休んだので、まだ体が重い。
少し眠いが動いていれば、勝手に体が起きていく。
頑張って働いていれば、苦しくてもそのうちなんとかなるんだというのは覚えた。
将来就職して仕事を覚えるまでは色々あると思うんだけど、逃げずに正面から仕事に取り組んでいこうと思った。
「おお、ちょっと来てくれ」
仕事に戻るとすぐに健二さんに呼ばれた。
何事かと思い走って行くと、めずらしく何だか難しそうな顔をしていた。
「忙しいんだ。水飴2つ持ってきてくれ。フタ開けてそこ置いとけ」
あれ?この時間にまだ何か作るのかな?
水飴って一斗缶に入っているやつだよな。
もう慣れたけど一斗缶も両手で1つやっと持ち上げられるくらい重いのだ。
その一斗缶のフタも普通の缶切りを使って手ですべて開ける。
缶切りなんて使ったことがなかったので、使い方を健二さんに聞いたら笑われたんだよな。
でも今は、それもスイスイと使いこなせる。
「今日はまだ作るんですか?」
僕がそう聞くと手を動かしたまま健二さんは頷いた。
「色々あったんだ。急いでやらないといけねえ。悪いが頼むぞ」
「わかりました!」
おお、これは頑張らないといけない。
健二さんにも色々教えてもらったし、少しでも恩を返さないとな。
水飴が入った一斗缶は砂糖が置いてある倉庫の中にある。
僕は急いで置いてあった適当な台車を押し倉庫に向かった。
倉庫の電気をつけると奥の方まで歩いて行った。
隅の方に水飴が入った一斗缶を高く積み上げている場所があるのだ。
それにしてもこの倉庫の中は色んな物が積み上げてある。
大地震とか起きたら、色んな調味料の下敷きになって死ぬんだろうな…
いつも通り一斗缶を1つ取り台車に載せようとした時だった。
多分少しずれていたんだと思う。
一斗缶がほんの少しずれて重ねられ、僕がほんの少し一斗缶を雑に取り上げ…
偶然と油断が重なったのだろう…
全部ではなく、一斗缶が3つ4つ。
一気に僕に向かってガシャンと落ちてきたのであった。