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「本物」の夕暮れ

 暗黒オーラを大噴火させている「本物」達の前に篠宮隊長は歩いて行くと、「本物」達はその場で立ち止まった。


「おい、おまえたち、さっきから何で黙ってついてくるんだ!!」


 篠宮隊長は両手を腰にあて、「本物」達を睨みつけた。

 いつも以上にどんよりと病んだ様子の「本物」達は、それぞれの闇を漂わせながら不気味な笑みを浮かべていた。


「ついてきてないwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww私達はこっちの方に用があるんだwwwwwwwwwwwwwwwwwうひひひひひひwwwwwwwwwwwwwwwwww」


 発狂したかのような病んだ笑い声と共に沙織がそう叫んだ。

 いつ銃機器を乱射するか分からない危険な状態だ!!!!     


「そうなのですわ。私達は向こうのお山の方に用があるんですの…」


 清城京はぼんやりとした目に病んだ光を漂わせながら、僕達が向かっていた方角を力なく指さした。

 その生気を吸い取られた様子は、いつリストカットしたり、僕を刺してもおかしくない感じだ!


「おい、おまえたち何を言ってるんだ…」


 あまりにも病んだ状態に篠宮隊長も一瞬気勢を削がれたが、もう一度体制を立て直し「本物」達を睨みつけた。

 沙織と清城京のヤンデレ2トップの破壊力は凄まじい。

 そりゃそうだよな…こんな異常な状況に追い込まれるなんて、普通の人だったら一生ないだろうからな…


 あまりにも病みに病んで闇が爆発してる2人の前に天使がつかつかと歩みだした。

 いつも通りの無表情とツインテール。

 沙織と清城京の異常さを味わったばかりのせいか、篠宮隊長は目を見開き天使を見ていた。


「隊長。『寝取らレーゼ』は駄目」 


 天使はそれだけ言うとじっと篠宮隊長を見つめていた。

 全く意味が分からない篠宮隊長は、若干動揺した様子で何か言おうとしたがしばらく固まっていた。


「おい、おまえ、何言ってるんだ…」


 もう完全に篠宮隊長の常識外のことが巻き起こっているのであろう。

 信じられないものを見てしまったかのような、かなり引き気味に天使に言った。 

 人間は理解できないものを目の当たりにすると怯え始める。

 それは「本物」達と一緒に行動してきて何度も見てきた。


 あれ?でも、篠宮隊長の素の部分というか、普段は見れない部分が出てきた気がするな…

 考えてみたら篠宮隊長はしっかりしているので、自分で自分を甘やかさないのだろう。

 だからこそ他の人が見ると厳しい感じを受けたりするけど、それと篠宮隊長の素の部分というのは別物なのだ。

 強い心を持っている分、普段は自分を出さないので、篠宮隊長の心の奥底は見えにくい。


「隊長は差身と何をするつもりなのだ?」


 全く空気を読まないかなっちが普通にそう聞くと、一瞬篠宮隊長はビクッとした。

 そして篠宮隊長は腕を組み、しっかりとかなっちに向かって構え直した。


「仕事の話をするだけだ。大事な話だからサシで話すんだ」


 篠宮隊長がそう言うとかなっちは表情が輝いた。


「そうなのか。『寝取らレーゼ』はしないのだな。安心したのだ!」 


 かなっちがそう言って満面の笑みで喜ぶと、疲れた様子で篠宮隊長はうんと頷いた。


「じゃあ、私達はあっちに行く。おまえたちは向こうのお山の方へ向かってくれ。また明日な」


 篠宮隊長はそう言って僕に今きた道を指さしそっちへ歩くように促すと、カツカツと歩き始めた。

 僕も篠宮隊長に遅れないようについていった。

 後ろを振り返ると4人の「本物」達はこちらをじっと見ていた。


「ああ、疲れたな。これでやっと差身とサシで話せるな」


 少し歩いてから篠宮隊長は肩で息をすると、ホッとしたようにそう言った。


 いや…隊長…

 まだ、あいつらを甘く見てると思うんだ…

 世界中どこまでもあいつらは追ってくるんだよ…


 日差しが落ちてきて、どことなく気分の良い夕暮れだ。

 夏の香りのせいだろうか。

 篠宮隊長が少し楽しそうな感じに見えた。

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