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「本物」のストーカー

 仕事が終わり着替えると、篠宮隊長の指示通り休憩所で待っていた。

 まだ「本物」達は仕事が終わっていないのか集まってはいなかった。

 さっき昼休みに篠宮隊長が帰った後、沙織達に「おいwwwwwwwww『寝取らレーゼ』しに行くなwwwwwwwwwwwwwwwwwwww」などと篠宮隊長の呼び出しに応じないように止められたのだが、「仕事の話しだから大丈夫だよ」と言ってなだめたのだ。

 てっきり休憩室に「本物」達は集結していて何かするんじゃないかと思っていたのだが、どうやら諦めたようだ。

 全員異常なまでに殺気立っていたのでヒヤヒヤしたが、さすがに何もするわけないか。

 だいたい篠宮隊長が何もするわけないだろう?

 あいつらも少し落ち着いた方が良い。


 それにしてもいったい何の話しだろうか?

 ちょっとした仕事の話しならわざわざ呼び出さないだろうし、何か重要な話でもあるのだろうか?

 あと、数日でこのアルバイトも終わるのから、あまり悪い話でなければ良いのだけれど…


 そう思いながら待っていると、篠宮隊長がやってきた。


 篠宮隊長はいつもの作業着ではなく、キッチリとしたパンツスーツを着ていた。

 こうしてみると、普通に会社勤めしているOLに見える。


「おお、悪いな。じゃあ行くか。近くに良く行く店があるから、そこで飯でも食うか」


「はい。普段はスーツ着てるんですね」


「ああ、通勤時はいつもスーツだ。仕事しに行くんだからしっかりとした服装をしなくてはというのもあるんだが、スーツだといちいち服を選ばなくて済むし楽なんだ」


 僕は休憩所を出て篠宮隊長と歩き始めた。

 篠宮隊長は工場を出てもしっかりとした面持ちで、カツカツと歩いていた。

 服装が違うので印象が違うが、中身はいつも通りの篠宮隊長であった。


「健二さんが褒めてたぞ。おまえ佃煮は作れるようになったらしいな」


 歩きながら篠宮隊長が話しかけてきた。


「いや、まだ自信はないですが、大体できると思います」


 あれに関しては正直まだ自信がない。

 作り方の手順だけなら、何とか覚えている。

 でも、今日は後ろで健二さんに見ていてもらったからできただけで、1人で完璧にやれと言われたらちょっと自信がない。

 分からないことが分からないといった感じだ。

 それに自分が作ったものが、健二さんが作るものに並ぶとは思えなかった。


「そうか。おまえ、やっぱり優秀だな。私は期待してるぞ…ところでだ…あれはなんだ?」


 篠宮隊長はピタリと足を止め後ろを振り返った。

 僕もつられて振り返ると、そこには暗黒オーラを燃え上がらせた「本物」達が50mくらい離れた位置に立っていた。

 分かりやすい…わざと見つかる位置にいて、こちらにプレッシャーをかけているんだろうな…

 結構距離は離れているんだけど、あいつらの呪いのような「本物」の黒い殺意が目に見える。

 あらゆる周辺のものを呪いに巻き込み腐らせて行くようだ。  


「あの…多分…つけてきてるんだと思います…」


 僕はあいつらをフォローしようにも何も打つ手がなかったので、頭を低くして正直にそう言った。


「そうか…さっきからつけれれている気がしていたんだが、本当にそうだったんだな…」


 それからたまに振り向きながら、篠宮隊長と歩いて行ったんだけど、僕達が10歩進めば「本物」達も10歩進む感じで一定距離を開けながらあいつらはストーカーしてきた。

 振り向く度に「本物」達の暗黒オーラが巨大化し、もうそのオーラが悪魔の様な形に見えてきた。 


「おい、差身。あいつらはずっとついてくるつもりなのか?」


 訝しげな顔をして篠宮隊長は聞いてきた。

 そりゃそうだよな…僕はあいつらの「本物」レベルを知ってるから大丈夫だけど、普通の人がこんな脅迫的なつけられ方したら嫌に決まってるよな…


「はい…多分…ずっとついてくると思います…」


 僕はめっちゃ恐縮してそう言うと、篠宮隊長は「本物」達の方へカツカツと歩き始めた。

 ああ、なんか場が荒れそうだぞ…

 何か起こってからでは遅いので、僕も篠宮隊長について行った。  

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