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第6話 出立前夜

 ユリーシャと出会ったその日の夜、俺は一旦ユリーシャの首から外されて食卓の上に放置されていた。

 何故かって? 今、ユリーシャはママと入浴中である。それが終わるのを待つ間、暇だろうからって事で残されたのだ。いつもは1人で入るらしいが、今夜は特別らしい。……アリシアさんも、やっぱり心配は心配なんだろうな。

 ……べ、別に残念だなんて思ってないよ? 覗きは趣味じゃない……っていうか俺から提案したんだからね? 風呂に入るならここに置いてってくれって。

 それで今、俺は食事の片付けが終わって一段落して寛いでいるクラウスとクラリス、それからまだ眠るつもりは無いのかゼブと雑談をしていた。



「──そういえばオリハルさんは、元の世界で人間だった時はどんな風に過ごしてたんですか?」

「そうだな……こう言っちゃ何だけど、生きてただけって感じだったかな。働いて、食べて、寝て、っていうそれだけの生活だった。聞いてもそう面白い人生じゃなかったよ」

「いや、そんな事は無いでございましょうオリハル様。そういう表現で済ませてしまえば誰の人生でも似た物になってしまいます。誰の人生も必ずその人にしか無い出来事があるのですから、その違いが面白さになるのですよ」



 長く生きてそうなクラウスが言うとやはり深みがあるな。

 確かに誰しも全く同じ人生は歩んでないだろうから、その理屈は解るんだけど……。



「だけど、特別何かを成し遂げた訳でも無いし、本当に面白くないと思うけど……」

「もう、いいから話しなさいよ。あたし達自身は転生した事無いし、みんな貴方に興味があるんだから」

「こらクラリス、お客人に向かってその口の聞き方はなんだ」

「ああ、そんなに口うるさくしてやらないで下さい。前世で高い位になった事も無いので、あまりにも汚い言葉じゃなければ俺は気にしませんから」

「恐縮です、オリハル様。この子はご主人様にも奥様にも同じように話してしまうので、私は気が気ではなくて……」

「大丈夫だって、お父さん。みんな面白いからって許してくれてるんだから」



 いやそれ、メッチャ綱渡りなんじゃないかな。

 それ多分機嫌は別に損ねないけど、許容範囲のギリギリ目一杯の所だぜ? ほら、クラウスさん青くなっちゃってるよ。

 ま、俺はそこまで気にしないから、今は絶対大丈夫だと思うけどね。



「そこまで言うなら、いいですよ。でも、正直何から話したらいいのか分からないので質問してくれませんか?」

「いいですよ〜……じゃあですね、オリハル様のお嫁さんはどんな方だったんです?」

「ぶおっ!?」



 吹いた。いや何も飲んでないんだけど。飲めないからね。

 つーかこのメイド何て事訊いて来やがるんだ……! 俺は偉大なる魔法使い様だぞ……そんなの居る訳無いじゃないですか。

 さっき絶対大丈夫って言ったの、撤回しようかな……。



「オリハル様は30歳で死んじゃったって聞きましたけど、30歳ならもうお子さんも何人か居たんじゃないですか? どうだったんです、その辺?」

「あ、それは僕も気になる! 早ければ僕とおんなじぐらいの歳だよね?」



 うおおおおいっ! 勝手に期待すんじゃねええええっ!

 ダメだこいつら、早く何とかしないとどんどん俺の実態が話しにくくなって行くぞ……っ!



「いや、その……14歳の時に1回だけ付き合った事があるだけで、俺は──」

「14歳からの付き合いの方と結婚されたんですか!? 長い付き合いなんですね、何だかロマンチック〜」

「じゃあじゃあ、子どもはひょっとして僕より年上なのかな? 兄さんが生まれた時父さんは22歳だったらしいから、それより早いね!」



 ぬおおおおおっ! プラス思考過ぎんぞこいつら!

 つーか考えちゃダメだ! どうやって話そうか考えてる間にこいつらがハードルを上げやがる! もうどんだけ情けなかろうと余計な事は考えずにストレートに言うしか無い……っ!



「──子どもは居ないし結婚もしてないっ! 14歳の時に1回だけ付き合ったって言ってもデートを1回しただけだ! っていうかアレは付き合ったって言えるのかも分からん! とにかく俺には妻も彼女も居ないっ!」

「あっ………………」

「ご、ごめんなさい…………」



 空気が死んだ。クラリスもゼブも絶句しちゃった。

 ……って、いや俺は何も悪くないよね? 何かまるで俺が悪いみたいな空気に感じるのは俺の気のせいだよね?

 だって、向こうが勝手に期待して来ただけなんだもの。それをちょっと強く否定しただけなのに、何なのこのいたたまれなさは。……童貞だった俺が悪いんですかねえ……?

 あっ、否定ついでに言っとくと、デートってアレな。夏休みにとある映画を観に行ったら偶然同級生らしい女子に出会いましてね、その日の夕方まで一緒に遊んだんですのよ。我ながらかなり意気投合してたと思うんだけど、お互い携帯も持ってなかったから連絡先も交換しなかったし、それっきりで2度と会う事も無かったっていうね。



「も、申し訳ありませんでした、オリハル様。ずっと独りでいらっしゃった所でお亡くなりになって、もう未来永劫誰とも結ばれない御姿になってしまわれたなんて…………あたし、今まで何て酷い態度を……っ!」

「ちょっ、急にやたらと丁寧な態度にならんで下さいよ! っていうか何、ひょっとしてクラリスは相手がリア充かどうかで態度変えてんのか!?」

「何だか本当にごめんなさい、全然関係無いけどもう付き合っててごめんなさい!」

「うおいっ! 止めろゼブ! 謝られると余計にみじめになるだろうがっ! ちくしょおおおおおおっ!」



 ちくしょう流石はユリーシャの弟、モテモテだなこいつ!

 そういえば訊いてなかったけど、ユリーシャは1人で行くつもりなんだろうか。あれだけいい娘なんだ、彼氏とか、気の合う仲間とかも一緒に旅に付いて来てくれたりするんじゃないだろうか。何しろ世界を救うんだから、戦力は多いに越した事はない。

 正直に言って、よく小説とか漫画に出て来る何故かフリーな美少女なんてものは都市伝説だと思ってるしね俺。美少女なのにモテない奴なんて、よっぽど変な奴しか有り得ないだろ。もしくは家族に余程の奴が居るか。後は……どう見ても恋人同士にしか見えない男友達が居るとか、誰かに一途に片想いをしていて相手にしていないとか……って、あれ? こうやって考えてみると結構思い付いちゃうな。



「……だっ、大丈夫だよオリハルさん。姉さんも恋人出来た事無いハズだから」

「いやいやいやいや何言ってんだお前。お前の姉ちゃんあんな可愛いのに恋人が居ない訳が無えだろ!? お前が知らないだけで絶対居るって!」

「………………オリハルさん? 世の中に絶対なんてそうそうありませんよ?」

「まあ、そりゃそうだが……って、え? うわあっ、ユリーシャ!?」



 ゼブが座っているのと全く逆の方向からバスローブ姿のユリーシャが戻って来ていた。しかも何か顔がメッチャ怖い! 旅立つより前に先立っちゃうんじゃないのこれ?

 って、よく考えたら俺ってば既に1度先立っちゃってたよ! ゴメンよ父さん、母さん。貴方達の息子は今は人外の存在ですがそれなりに元気にやっています。



「そうなのよ〜オリハルさん。この子ったら、主人やベルディオスを見てる所為かしら、理想が高過ぎて恋人どころか普通の友達すらほとんど居ないのよ。だから、オリハルさんは仲良くしてあげて下さいね」

「え? あ、はい。……え?」

「ちょっ、ママ! は、恥ずかしいから止めてぇ〜!」



 と思ったが、ユリーシャの更に後ろからやって来たアリシアのお蔭で助かりそうだ。

 成程そういうパターンか。肩書きとしては魔王の近衛師団長の一人娘、か……何か色々と想像出来るな。取り入ろうとしてくる奴なんかがわんさと居てうんざりしてるユリーシャとか、そんな感じの学校生活が。



「え、と……ユリーシャ、本当に恋人居ないの?」

「……パパは物凄く強くてカッコいいし、ベル兄さんは天才って云われるくらい頭が良くて、その上剣術も一流だし……2人と同じぐらい凄い人じゃないと、つい比べちゃって学校の同級生ぐらいじゃどうも……」



 ……こらアカンわ。話だけ聞くと何か、ただのファザコンでブラコンなだけっぽいぞ?

 いや、単に対等以上の存在が居なかっただけか? 魔法で1番の成績ってのも、ひょっとしたら比べるのがアホらしくなるぐらいぶっちぎりで1番だったのかもしんないな。

 ふむ、もしそうだとすると友達や恋人は居なかったかもしれないが、ファンクラブとか親衛隊とかは居て、女神として崇め奉られてたりしてたのかも。



「だったら、ひょっとするとこの旅でいい人が見つかるかもな。世界中を回るんだから、凄い奴だってきっと沢山居るさ」

「……そうですね、……うん、そうかも」



 あら? 旅の楽しみが増えるかなと思って言ったのに、あんまり興味無かったのかな?

 この娘はいい子だから、世界を救うついでに男探しなんて不謹慎だと思っちゃったのかも。だとしたらちょっと反省。

 でも1人と1個で世界を救うのは絶対厳しいし、仲間も探さないとな。その中に丁度良さそうな奴が居たらユリーシャを薦めるアシストをしてやろう。









 夜も更け、時刻は午前0時。

 あ、そういえば何も触れてなかったが、この屋敷に来て初めてこの世界の時計を見かけた。いやあ、この世界にも時計があって、しかも前世の時計に負けないぐらい種類が多いのには驚かされた。流石に電波時計は無いみたいだったが、ソーラー電池はあったり、この世界ならではな感じの魔力吸収式なんてモノまである。

 ちなみに時間をどうやって合わせるのか訊いたら、いい時計には時の精霊が宿ってるので狂わないって言われた。微量でも魔力を帯びてる物で時を刻む物を作ると、自然と時の精霊が宿り管理してくれるらしい。……何か、間違った時を刻む物を見ると直さずに居られない神経質なキャラクターを想像した。

 そんな時計談義はともかくとして、俺は今、ユリーシャ・デビローネさんの枕元に来ておりま〜す。ユリーシャさんはもう眠りに就いており、俺の目の前で可愛らしい寝息を立てておられます。

 まあ、要するに俺を枕元に置いて時計の話をしていたらユリーシャが寝落ちして今の状況になったって訳です、ハイ。しかしこの状況、元々俺は寝られない体になってて寝られないけどこれはドキドキするな。



「……さて、と。どうせ寝られないんだし『魔力操作』の訓練でもしますかね」



 とは言っても魔法をぶっ放す訳じゃない。

 魔力を集める力がこの場所に来てからは10倍に、今の姿になってからはその更に10倍の合計100倍になっている訳だけど、魔力が集まるのがあまりにも早くなり過ぎて、集まった魔力に酔いそうになってちょっとビビったので、現在は20倍の速度に落としている。

 しかし、魔力を集めるのは早ければ早いに越した事はないので、少しでも早いのに慣らしていかないといけない。

 場所によっては魔力がもっと早く溜まる場所があるかもしれないし、反対に草原に居た時以上に魔力が集まらない場所もあるかもしれないのだ。その中でも遅い方はともかくとして、早い方は折角早く溜められるのに溜められないなんて勿体無さ過ぎると言わざるを得ない。だけど──



「じゃあまずは25倍で行ってみっか。……う、く……ぐぅ……」



 ちょっと速くしただけでこの有り様ですよ。100倍になった時程じゃないが、やっぱりキツい。

 しかし自分でもよく分からないのが、魔力を溜め込める量にはまだまだ余裕があるのに、何故溜める速さにはこうして限界があるんだろう? 1度に扱える魔力の量がそれだけしかないから、何て事は絶対に無いハズ。ソナー撃つ時や、ペンダントになる時に結構な量を一気に使えたし。そういえばユリーシャに魔力を流してもらった時は何とも無かったな、アレも考えてみたらおかしな話だな。

 ……いや、1つ仮説を思い付いた。魔力を集めながら体内に溜め込むのが難しいからっていうのはどうだろうか? 言葉で上手く説明出来るか分からないから、ちょっと実験してみよう。



「今思い付いたこの仮説が正しければ、100倍速でも多分大丈夫なハズ…………出来た。やっぱりそうか」



 今、何をしたのか説明すると、100倍速で魔力を集めるだけにしてみたんだ。それから集めるのを止めて、集まっていた魔力を一気に体内に取り込んだ。

 それだけじゃよく分かんないよな。まず、一言で『魔力を溜める』って言っても、やってる事は2つの行程がある。魔力を集める事と、その集めた魔力を体内に取り込む事の2つだ。

 それを同時に進めると、今の俺では20倍速ぐらいでしか処理しきれない。そういう事だったんだ。



「結局、ただの俺の力不足だって事だ…………あいつが神かどうかは知らねえけど、感謝しなきゃな。この『魔力操作』の能力には、まだ先があるって事なんだから」



 つまり拡大解釈になるけど、俺はただ能力を使って持ち主を助けるだけの道具じゃないって事だ。

 能力の使い方のアイディアを考えるだけじゃダメで、最初の印象よりチートだと思ってたこの能力もちゃんと使いこなさないとダメなんだ。世界を救うなんて大事を成し遂げるなら、絶対に使いこなせるようにならなきゃ。ユリーシャは勿論、この先増えるだろう仲間も絶対に守ってみせる。


 ──手始めに、21倍速をモノにする事から始めよう。少しずつやっていけばその内出来るようになるハズだ。









 旅立ちの朝が来た。

 結局23倍速までモノに出来た。というか細かい話、22倍速までは普通に大丈夫だった。23倍速から少しキツくなって来て、24倍速はもう大分ツラい。そこで俺は、24倍速と23倍速を繰り返して慣らしていった。イメージとしては柔軟体操に近いかもしれない。


 朝、ユリーシャが起きたらいきなり部屋を追い出された。何故なんて言わないよ。お着替えタイムですよね。昨日は普通の私服って感じだったけど、旅の服装だとどんな風になるんだろう? ちょっと楽しみだな。



「そういえば、旅に行けるような服なんてあるのか? 買い物に行ったりしなくても?」

「一応あるのよ。といっても旅の為の服ではなくて、戦いに備えた服なんだけど。魔鉱石を細かく砕いた物をちりばめた布を使って作られた服だから、あの子の魔力を受けると高い防御力を発揮するわ」



 ここで俺はアリシアに『魔鉱石って何?』だなんて野暮な事は訊かない。どうせ魔力と親和性が高くて魔力を流せば色々といい感じになるとかそんな所だろう。

 それよりも何でそんな服を持っているのか詳しく訊くと、子どもが生まれてからは1度も戦争は起こっていないらしいんだが、家柄が軍事関連な為に万が一に備えて戦闘用の服を常に仕立ててあるそうだ。

 ちなみに、1年前に旅に出たベルなんとかさんもその用意されてた戦闘用の服で旅に出たらしい。

 さて、ユリーシャはどんな服で出て来るのかな?



「オリハルさん、お待たせっ」



 出て来た出て来た。どれどれ……ほう、これはこれは。

 まず目立つのは、裏地が焦げ茶色で表が黒いマント。中の服は黒を基調としていて、要所要所が赤で装飾されていていいコントラストになっていると思う。魔力を通しやすくする為だろうか、体のラインがかなり強調されるデザインではあるが戦闘においては動きやすそうな服だ。これでもし長袖で、下まで全身を覆ってたら、ロボット系アニメに出て来そうな新しいデザインのパイロットスーツっぽいな。半袖だし、下はスカートだからそんな事は無いんだけど。ちなみに肘から下には手の甲辺りまでを覆う赤いアームバンドをしていて、それぞれの両手の中指だけを金色の指輪のようなモノに通していて、手のひらはそのまま見えるタイプの構造だ。

 その下だけど、赤いキュロットスカート……いや、よく見たら前にボタンがあるし、キュロットパンツかな。まあパンツの方が動きやすいだろうし、いいと思う。パンツだけど遠目に見たらスカートっぽく見えるのがまたいい。さっき自分もスカートだと思ったしな。

 更にその下は白いニーソックス。これも多分例の鉱石が混ざっているんだろう。守りを考えたら生足は危険でしかないからな。ニーソックス万歳。厳密には違うけど傍目には絶対領域に見えるのがまた良し。

 そして1番下は黒いブーツが足首の上10cmぐらいを覆っている。こちらには赤ではなく白でラインがいくつか入っている。



「うん、いいね! 可愛いしちょっとエロいし大事な所はちゃんと見えにくくなってるし、とてもいい! ディ・モールトベネ!」

「ぷっ! あはは……もう、何言ってるのオリハルさんってばエッチ!」



 その反応は実に心外だ。ちょっとエロいとしか言ってないのにエロい人認定されるだなんて。

 だけどまあ、そこまで本気で言った訳じゃないんだろう。そのまま俺を首に掛けてくれた。先程観察した格好の胸元で輝くクリスタル……うむ、ますます似合うな。デザインを変える必要は無さそうだ。

 しかし……服はそれでいいとして、後は旅に出るんだから色々と物が要ると思うんだが、見たトコ手ぶらだ。荷物はどうするんだろう? 今から準備するのかな?



「着替えとか食糧とか、後はお金とかそういうのは準備しなくていいのか? 旅なんだから戦いの装備以外にも色々と要るだろ?」

「大丈夫よ。荷物なら、ほら」

「おお、すげえ! このマントって魔道具だったのか! これは便利だな」

「この服も含めて、パパの親友のエルフとドワーフの合作なんだって。マントに仕舞える荷物の量はわたしの魔力の総量に比例するらしいわ」



 出ましたお約束と言っても過言ではない便利道具!

 マントに仕舞う辺りは某討滅の道具を彷彿とさせるな。そういえばあのキャラも眼が赤かったんだっけ。あっちは髪も赤くなってたけど。ユリーシャは剣は使わないって言ってたし、あの中から刀が飛び出して来たりはしないだろう、多分ね。とか言って安心してたら『剣は使わないけど刀は使う』って言い出したらどうしよう。別にどうもしない……っていうか何も出来ないけどさ。

 そして今気付いたけど、俺のポジションってペンダント的な意味でも某天●の劫火なんじゃ……いや、服は全然違うし、パクりとか言われたりはしないハズ。……言って来る転生者が居たらどうしよう。



「3年後、絶対帰って来てね!」

「ユリーシャ様、オリハル様、いい旅を」

「私めはいつでも帰りをお待ち申し上げておりますぞ」

「行ってらっしゃい。もし途中でベルディオスに会ったらよろしくね」



 皆がちゃんと見送ってくれている。だけど、この声に応えるべきは俺じゃない。俺はただ良くしてもらっただけの客であって、ここに帰って来るべきなのは彼女なんだから。



「ママ、ゼブ、クラウスさん、クラリスさん……わたし、必ず帰って来ます。だから……行ってきます!」



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