第14話 ダーティラットの正体
覚えている方はもう居ないかとは思いますが、皆様お久し振りです。ちゃんと諦めずに連載していきますので、皆様どうか気長にお待ち下さいませm(_ _)m
敵陣を1つ突破した所で遭遇した4匹の上位種。そいつらとの戦いは思いもよらない方向に向かっていた。
「さてどうしよう、僕等の方が多いから獲物が1人足りないよ。誰か先にヴォルトの所に行きなよ」
「やだよ、オイラは沢山遊びたいんだよ。コイツらとも遊ぶんだよ!」
「1人抜けて誰かやられでもしたらダーティラット様に怒られてしまうがな、ブハハハハハ!」
「ぼっ、ぼぼっ、ぼくはヴォルトよりも、ここ、ここの女の子達とあ、遊びたいんだな、ハァハァ」
何か向こうでも誰が誰と戦うかで揉め始めていた。これが漫画なら誰と誰が1対1で戦うか決まるまで待ってやるべきなのかもしれんが、生憎そんな時間も余力も無い。ここは先手を打って一気に行かせてもらう──!
「誰か、後ろの大岩を砕いてくれ! ユリーシャがその岩をあいつらにぶつける!」
「あ、オリハルさん、それなら……」
「それなら、ユリーシャさんよりフェリス向きかな?」
「そうね、あたし向きかな。お、オリハル、さん。ぶつけるのもそのままあたしが、やりましゅ!」
あ、噛んだ。真っ赤になっちゃって可愛いなあこの娘は。まだ俺相手には人見知りが発動するのね。
すぐに気を取り直したフェリスは地面に魔法陣を浮かび上がらせ、その中心に掌を当てた。
「──アースナックル!」
「よし、今の内に突っ込むぞ!」
フェリスがそうした途端、一瞬にして大岩が4つの巨大な拳へと姿を変えた。地面から生えた4本腕はそのまま動き出し、ジャガーノルドと同じ上位種のソルジャーリカントと思しき4匹に襲い掛かる。
結果は見ない。多分これだけでは牽制にしかならないだろう。でもその間にリカントの集団に紛れてしまえばコイツらをスルー出来るハズ──
「全く酷いな、僕等を無視しようとするなんて」
「ちょっと面白かったけど、まだまだ遊ぶよ!」
「ブハハハハハ! あの程度足止めにもならんわ!」
「に、にに、逃がさないんだな、ハァハァ」
そう上手くは行かないか。ふと見るとどの拳も粉々になっている。どうやら避けた訳では無く正面から粉砕したようだ。
「……ユリーシャ、フェリスとローシェルの実力は?」
「ええ、昨日大体の内容は聞いてるわ。彼女達ならソルジャーリカントが相手でもひけを取らないと思う」
「そっか、それを聞いて安心した。今の攻撃を簡単に防いだコイツらは放置しちゃいけない敵だと思う。倒してから進むぞ」
気持ちは同じだったのか、直接戦う訳でもない俺の言葉に全員が同意してくれた。今の攻撃をあっさりとあしらってみせたコイツらを侮ってはならない。
だから、気が変わった。コイツらはここで倒した方が良さそうだ。今コイツらを何とかスルー出来たとしても、絶対にダーティラットと戦う時に邪魔になる。だったらここで全滅させる。
「向こうはまだ誰が誰と戦うか決まってないハズだ。俺達はさっき決めた奴に狙いを絞って一気に行くぞ」
「そうね、後ろでヴォルトさんとエルフ達が頑張ってくれてるんですもの。さっさと倒しちゃいましょう」
「じゃあ、ユリーシャさんが大きい魔法を用意してる間、ボクとフェリスで足止めをすればいいかな?」
「そうね、あたし達は大規模魔法は使えないから、ユリーシャさんにトドメをお願いします」
「……分かったわ。気を付けてね」
ユリーシャはローシェルとフェリスに前衛を任せ、魔力を集中させ始める。どんな魔法を使うかにもよるが、フレイムテンペストの時は1分程度集中してから10秒程詠唱して魔法を発動させていた。
ちなみにさっきのフラッシングバーストの時は詠唱だけで発動していたように思う。ただ、移動中にこっそり魔力集中は済ませていたかもしれないので確実ではない。
「さて、行こうか」
「うん。……あのね、ローシェル」
「うん? どうした、フェリス?」
「2体ずつ相手しなきゃいけないし、しょうがないからあたしがイノシシの相手をしてあげるわ」
「ああ、頼むよ。サルはボクが相手をしよう」
戦い方が変わったので戦う相手も変わったらしい。
フェリスとローシェルはそんな会話を交わすと、まず先にフェリスが駆けた。
それを見届けた後、ローシェルはユリーシャの方に向き直り、保険ですとか何とか言って俺達の周りに魔法を掛けた後、敵の方へと駆けて行った。
「ところでユリーシャ、どんな魔法を使うつもりなんだ?」
「そうね……向こうで様子を見てるリカント達も同時に倒せるようなのを使うつもり。でもやり過ぎると人質も巻き込んじゃうかな……どうしようかしら」
その時間稼ぎの結果、どんな魔法を使うのか気になって尋ねてみたが、ユリーシャはまだ決めかねているのか、魔力を集中させながらも思案顔だ。
そんな表情を眺めながら魔法の発動を待つのもまた魅力的な話だとは思うが、俺は後学の為にローシェルとフェリスの戦いぶりを眺める事にする。
「おいおい、コイツは…………」
2人の戦いぶりを見るつもりだった俺は、そこで繰り広げられていた光景に唖然としてしまう。
さっきの話の通り、最初に話した時とは組み合わせが異なっており、ローシェルはサル型とゴリラ型、フェリスはゾウ型とイノシシ型を相手にしている様子だったのだが、2対4で戦っているのにも関わらずローシェル達は敵と互角以上の戦いを見せていた。
まずフェリスは、見るからにパワーファイターっぽいゾウ(略)とイノシシ(略)を相手に真っ向からやり合っていた。
速度は相手のリカント達がそんなに速くない事もあってか人獣族とのハーフであるフェリスが完全に上回っており、更に土魔法で作ったであろう岩の拳による攻撃で力負けもせずに戦えていた。
しかも先程とは異なり、岩の拳はゾウとイノシシの攻撃でも砕けない。岩の質が違うのか、それともさっきより魔力を多く使っているのか。
続いてローシェルの戦いぶりだが、腰に提げていた2丁拳銃を巧みに使って2体を相手取っていた。
恐らくあの拳銃そのものがローシェルの魔法の増幅器なんだろう。ちなみにフェリスは……多分腕輪かな?
彼はどうやら水系の魔法を得意としているらしく、2丁の拳銃から強烈な水鉄砲を放ったり、時には水の剣を創り出したりして近接戦闘も中距離戦闘も満遍なくこなしていた。
サル(略)が3本の剣を巧みに操って攻撃を仕掛けるが、ローシェルは完全に見切っているのか、全く当たらない。
「くっ、このガキ……っ!」
「剣を3本持ってればビビるとでも思ってたんですか? 全く幼稚ですね。ボクよりもガキじゃないですか」
「ブハハハハハ! だからワシ等も言ったじゃろう、使えもせんモノを持つなと!」
「あ〜もう分かったよ! ちぇっ、つまんない。真面目にやったらすぐ死んじゃうじゃんか。──返すよ!」
サルはそう言うと、両手に持っていた剣をゾウに向かって投げた。あの剣は元々ゾウのなのか。とすると、尻尾にあった剣は……?
「さて、何秒持つかな?」
「──っ! うわっ!?」
……と、俺が疑問の答えを考える間も無くサルがローシェルに襲いかかった。
その動きはさっきとは段違い。先程は本当に3本の剣をバラバラに振り回してるだけって感じだったんだが、その剣が尻尾にある1本だけになった途端に洗練された動きに変化した。
飛び上がって宙返りをしながら尻尾の剣を振り下ろしたかと思ったら、逆さになってブレイクダンスのように回転しながら尻尾の剣で斬り掛かったりと、その動きは変幻自在。
さっきまで余裕があったローシェルも一気に防戦一方に追い込まれてしまった。
「あはははっ! お前、思ったよりやるじゃん! いいねいいね、どんどん行くよっ!」
「くっ、一旦距離を──」
「ブハハハハハ! ワシを忘れるなよ若造!」
「し、しまっ──あぐっ!」
たまらず一旦距離を取ろうとしたローシェルを狙い打つようにゴリラ(略)がその手にあるゴツい棍棒でローシェルを殴り飛ばした。
ローシェルは咄嗟に2丁拳銃を盾にして直撃は防いだがその衝撃は凄まじく、20m程吹き飛ばされてしまう。
「ローシェル!?」
「気持ちは分からないでも無いですが、仲間の心配をしてる余裕はありませんよ?」
「ぼぼっ、ぼくの事も見て欲しいんだなっ!」
「うわっ!? ──きゃっ!?」
その一方で、フェリスの方でも形勢が傾こうとしていた。
その理由は実に単純。さっきサルが投げた2振りの剣が元の持ち主であるゾウの手に渡ったからだ。
それがゾウの手に渡った途端、フェリスが作り出した岩の拳がいとも簡単に粉砕されるようになり、更にローシェルが吹き飛ばされた事に動揺した瞬間を変態に狙われてしまった。
砕けた岩の拳の影から飛び出して来たイノシシの突進を避け切れずフェリスも吹き飛ばされてしまう。
フェリスの方がローシェルより軽いのか、それともゴリラよりイノシシの方がパワーがあったのか、フェリスは30m近く吹き飛ばされてしまった。
って、これヤバくない? あいつらを足止め出来る奴が誰も居ない空白の時間が出来ちまった。ユリーシャの方に標的変更されたらこっちの作戦が台無しになっちまうぞ。
「ねえ、そんな所で見てないでお前も遊ぼうよ?」
「──っ! ユリーシャ、避けろ!」
「──えっ?」
うおっ! 言ったそばからもう襲って来やがった!?
ヤバいヤバい! ユリーシャはローシェルの方は見てなかったのか、反応出来てない!
俺にはどうする事も出来ない──!
「……お前、今どうやって避けたの? 絶対首が飛んだと思ったのに……」
「そんなのいちいち言う訳無いでしょ? ……っと!」
「わっと! 危なっ!」
ユリーシャが無詠唱で火球を3連射し、サルは華麗にバク転で3発ともかわしてみせる。
サルは警戒しているのか、迂闊には近付いて来なくなった。
……俺からすれば不思議な話だ。俺達は何もしていないのに、サルがただ目測を誤って空振りしただけにしか見えなかったんだから。
と言っても、勿論種も仕掛けも無い訳じゃない。
「……さっき掛けた保険が効いたな」
「ええ、ローシェル君は凄いわね。ここまで繊細な水魔法は中々出来るモノじゃ無いわ」
ユリーシャがローシェルを褒めるのも無理は無い。
俺は勿論として、ユリーシャだってこの魔法は中々再現出来ないだろう。
──ミラージュミスト。確かローシェルはそう言っていた。
その霧はほんの1m程だけ距離感を狂わせる蜃気楼を発生させる。それの何が凄いって、誤差が少ないからか像がほとんどブレていない所為でサルが自分の距離感が狂わされている事に気付いていない事だ。
もう後何度か攻撃されたら流石にバレるだろうが、今の状況ではそれだけの時間があれば十分だ。何故なら──
「……フェリスちゃん、ローシェル君、飛んでっ! ──来たれ風の精! 天空にて吹き荒びし其の風を、我が元に運び来たりて眼前の障害を叩き伏せんとせよ! ──ダウンバースト!」
「うわっ! 何この風……立ってられない……!」
「ブハハハハ、情けないのう! だがワシも立ってるのがやっとじゃ……!」
ユリーシャの準備が整ったからだ。
ダウンバースト。飛行機事故のニュース等で聞いた事のある単語だと思うが、上昇気流の反対の下降気流の事で、台風と同等かそれ以上の凄まじい風が上から叩きつけるように吹き、更に周囲数kmに渡って爆風が吹き荒れる自然現象だ。
それをユリーシャは目の前のリカント達に標的を絞って叩きつけたのだ。実際のダウンバーストは風速40〜50m程度の風が吹くそうだが、ユリーシャが使ったモノはそれよりも強い。恐らく風速70〜80mはある。放った術者自身がその余波でちょっと立ってるのが辛そうにしてるぐらいなのだから。多分、リカント達の身体能力を考えて普段より威力を上げているんだろう。
フェリスとローシェルは詠唱直前に指示したおかげで背中の羽で飛翔。一瞬で30m近く飛び上がった。よって、風はユリーシャの狙い通りにリカント達だけに直撃する。
だが、この魔法ではダメージはほとんど与えられない。流石に風が強い為に上位種の連中も動けないで居るが、言ってみればそれだけだ。
一体何の為にそんな事をしたのかと思っていたら、案の定ユリーシャのターンはそれだけでは終わらなかった。
「──来たれ水の精、土の精! 契約に従い、集い来たりて大いなる大地を鳴動させ、我が前に立ち塞がる障害を圧し流さんとせよ! ──デブリーフロウ!」
デブリーフロウ……正直聞いた事の無い単語だったが、詠唱の内容から大体の想像は着く。多分、土石流だろう。
目の前の地面が突如10m近く盛り上がったかと思うと、いきなり砕けた土砂が水を伴ってリカント達を圧し潰さんと襲い掛かる。
通常であれば、リカント達の高い身体能力であれば土石流をかわす事も可能だったかもしれない。上位種ならユリーシャが居る所まで飛び越えて来る事も可能だったかもしれない。
……が、しかし。先程の風がリカント達にそれを許さない。
「くそっ、動けん! うおおおおおっ!」
「あ、あの女の子、かっ、可愛いけど、ここ、怖いんだなっ」
体の動きを封じられた上で大質量の物体が押し寄せて来る光景。その恐怖は如何程のモノだろう。
人間で言えば檻に入れられた状態で電車に轢かれるぐらいの恐ろしさだろうか……うわっ、ユリーシャ恐ろしい子!
更にユリーシャは確認の為か、風の魔法を無詠唱で発動させつつ10mぐらいの高さまで飛び上がった。
そうして上がった空からの光景は、敵ながら無惨なモノだった。
蟻の大群に向かってホースの口を絞った水をぶつけて押し流す。そういう今から思えば残酷な遊びを小さい頃にした事は無いだろうか。それを人間大の規模でやっていると思えば俺の何となく複雑な心境を分かってもらえるんじゃないかと思う。
しかもアレは蟻が声を出さないからまだ良いが、今回のは違う。悲鳴とも怒号ともつかないような呻き声があちこちから響いて来るんだ。あんまり見ていて気持ちのいいモノじゃない。
「……なあユリーシャ──」
「……ええ、さっさと行きましょう。フェリスちゃん、ローシェル君、このままダーティラットの所まで飛んで行くわよ」
「ふぁ……は、はいっ!」
「凄いなユリーシャさんは……こんな規模の魔法をあんな簡単な詠唱で──」
そんな俺の心境を知ってか知らずか、ユリーシャはそのまま空中を飛んでダーティラットの元まで向かうつもりのようだ。
勿論俺としては何の異論も無い。理想を言えばギリギリの距離までは気付かれずに行きたかったが、どうせ向こうには雷属性の魔法ではない時点でヴォルトの攻撃でない事はバレているだろうし。
「それよりユリーシャ」
「何、オリハルさん?」
「これ、規模デカ過ぎじゃね?」
「え? そ、そんな事無いと思うけど……」
ユリーシャはそう言うが、わずかに声が上ずっている。
ユリーシャったら、絶対敵さんの本丸に居るであろうエルフ達を巻き込むかどうか考えずに全力でかましやがったな。
これじゃあもしこれでダーティラットごと殺れたとしてもあまりすっきりしない決着になっちゃうぞ。いや、最悪なのはダーティラットは避けて囚われのエルフ達だけが巻き込まれちまった場合か。そんな事になったら本当に最悪だな。
「土石流がダーティラットが居そうなトコに辿り着くまで後300mも無いな。最悪、撃ったユリーシャ自身がどうにかしなきゃならないかも……」
「うっ……確かにあの勢いだと届いちゃうかも。ダウンバーストも普通より威力を上げたからあの辺まで届いてるかもしれないし──」
「──────」
「──っ!?」
「フェリス? どうかした……の……!?」
俺とユリーシャが、魔法の威力を過信してるとも取れるような会話を交わしていたその瞬間。何か声が聞こえたような気がした。
人獣族とのハーフだからだろうか、フェリスにはその声がはっきりと聞こえたようで、その身を一瞬強張らせた。と同時に、彼女の表情が驚愕の色に彩られる。
その意味を本人に問うよりも先に、その答えは俺達の眼前に示された。そしてその答えを知った時、俺達もフェリスと同様に驚愕せざるを得なかった。
何故なら、恐らくダーティラットが居るであろう辺りの地面がまるで土属性の魔法でも使ったかのように盛り上がり、ユリーシャが放った土石流の魔法がそこで塞き止められていたからである。
そして、それは『まるで』では無く本当に魔法を使ったモノであるという事は、恐らく敵の魔法詠唱が聞こえたのであろうフェリスの反応からしても明らかであった。
「どういう事だ!? リカントが魔法を使ったってのか?」
「ひゃうっ!? は、はい……確かに今、魔法の詠唱が聞こえたので間違い無いと……思います……」
「信じられない……けど、そうとしか考えられません。しかもただ魔法が使えるってだけじゃなくて、ここまで大規模な魔法を使えるリカントが居るだなんて……!」
「まさかとは思うけど、やっぱりダーティラットが使ったのかしら?」
「だろうな……いや、他にこんな厄介な奴が居るとは思いたくないってのもあるんだけど」
だからむしろ、この魔法を使った奴は是非ともダーティラットであって欲しい。まだ他にも面倒臭い奴が居るなんて、もう考えただけでもうんざりする。
……と、そんな事を祈っていると、ヴォルトからの通信魔法が飛んで来た。今回は全員に向かって飛んで来たらしい。突然脳内に聞こえて来た声に全員揃ってちょっとビックリしていた。
『今の魔法、まさかダーティラットが使ったのか!?』
「ああ、確認はまだ出来てないが、恐らく」
『だとしたら厄介だな。魔法を使えるリカント──獣魔道士族──は稀少種で、他の奴よりも頭脳に優れ、且つ狡猾な奴が多く、しかも他のリカントと違って魔法への耐性が高い』
「耐性が高い? ってのは、どのぐらい高いんだ?」
『そうだな……ユリーシャが洞窟でリカントを100匹程焼き殺してた魔法を3回ぐらい撃ってようやく倒せるぐらいか』
「えっ──?」
ヴォルトのその話を聞いて、思わず固まってしまう。
炎の暴風を3発も撃ち込まなきゃ倒せないってのか。それはマズイぞ。ユリーシャの魔力がそこまで残ってるかどうか……。あんなに色々やってたんだから、むしろほとんど残ってないんじゃ……?
「ユ、ユリーシャ……魔力は後どれぐらい残ってる?」
「えっと……ギリギリで3回撃てるかどうかって所かな」
「良かった、それならあたし達が頑張れば何とかなりそう」
「えっ、でもそれって直撃させた場合の話ですよね?」
『そうだ。勿論今の魔法のように色々な魔法を使うだろうから、全部直撃させるのは至難の業だろうな』
「………………」
アカン、これ詰んだ。