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第11話 エルフの里

 俺は正直テンションが上がっていた。

 その上がりっぷりと来たら、ついさっきまで2人との魔法の実力の差を見せつけられてヘコんでいたのも忘れてしまいそうな程だ。

 あ、ちなみに今はペンダントに戻っております。



「うおお……ここがエルフの里かあ……!」

「あ…………ふふっ、そうですよ……って、わたしも初めて来たんですけど」



 里の様子を眺めていて感じた印象は、ぶっちゃけ創作物に出て来るエルフの里と大差は無いように思う。

 自然を可能な限りそのままに、高い魔力でもって独自の工芸品等を作って得た富で慎ましやかに日々を過ごしている。そんなイメージだと思うが、それは概ね正しいと思う。

 ある者は草を組んで作ったような家に住み、またある者は木の上に木材を組んで家を建てて住み、って何その秘密基地的な家。う、羨ましいじゃないか。

 後、ここのエルフ達には珍しい事に羽が生えている。実際に何人かは宙を舞っておられるんだから間違い無い。

 そんな風に物珍しそうに眺めていたのがいけなかったのだろうか、エルフの1人が話し掛けて来た。……いや、俺の表情は絶対に(おもて)に出ないハズだから、ユリーシャがそういう表情をしていたんだろうか。



「ようこそ、旅の方。エルフは初めてですか?」

「あ、はい。やっぱり皆さん綺麗ですね」

「……貴様、我々に対して少しでもおかしな事をしてみろ。ただじゃ済まさんぞ」

「えっ……? ええっ?」



 え? 一体今の台詞のどこに地雷があったの? ユリーシャが普通に答えただけのハズなのに、金髪碧眼のイケメンエルフがいきなり殺気立ってるんですけど!?

 つーか貴様、これ以上ユリーシャを怯えさせるというなら容赦せんぞ。精霊という新たな力を得た俺の魔法が火を吹くぜ。

 ……と、俺が密かに臨戦態勢を整えていたら、イケメンエルフの後ろからナイスミドルな感じのダンディなおじさま系のエルフが割って入って来た。



「おい、よく見ろ、お連れの方を」

「え? ……あ、貴方はもしやヴォルト様? 無事に転生なされたんですね!?」

「ええ、お陰様で。彼女は殺されかけていた私を救ってくれたんですよ」



 一見穏やかに話してるように見えるが、ヴォルトは怒っているように思う。だって言外に「私の命の恩人を悪く言うのは許さない」という雰囲気がぷんぷん漂って来るんだもの。

 それにしても、今の台詞はどういう事だ? 何故ヴォルトの転生に“無事に”という言葉が付く? エルフ達はヴォルトが襲われた事を知っていたのか?



「そ、そうでしたか、大変失礼しました! え〜と……」

「あ、わたしはユリーシャと言います」

「ユリーシャ様、本当に申し訳ありません!」

「……突然のご無礼をどうかお許し下さい。今、里中が殺気立っておりまして……」



 ヴォルトの圧力に屈したとかじゃないと思うが、イケメンエルフはユリーシャに様付けまでして平謝りして来た。お辞儀も漫画でしか見た事無いような90°の奴である。

 そしてイケメンエルフを諌めたダンディエルフがどうも俺達への説明役になるらしい。かなり下手に出た喋り方だ。

 だが俺は許さん。ユリーシャが納得するような説明をしない限りはな。超電磁投射槍(レールジャベリン)でド(たま)ブチ抜いてくれるわ。



「まず、彼女を脅かした理由を訊かせてもらおうか」



 とか思ってたらヴォルトが俺の代わりに訊いてくれた。つーかもしかするとまだかなり怒ってらっしゃるんじゃ……?



「まず、我々エルフは、ヴォルト様もご存知の通り他の種族から執拗に狙われ続けています」

「え? そうなんですか、ヴォルトさん?」

「……ああ、平均的な魔力容量が他の種族に比べてかなり高いからな。更に容姿の儚さが手伝ってか、襲われたり浚われたりというのは確かに多い」

「ええ、そしてその結果、我々の中には様々な種族の血が流れております。更にそれがまた狙われる原因を生むという悪循環が連綿と続いているのです」



 これは、まずエルフ達の事をあまり知らないであろうユリーシャに説明してくれてるのかな? まあ、俺も前世の創作物による知識しか無いから非常に助かるけども。

 ……しかし今の話を聞くと、前世の知識のエルフとは大分違う感じがするな。人間とのハーフどころかもっと色んな種族とのハーフやクォーターが居て、そのハーフやクォーター達がまた凄いんだかで更に狙われてるって話だよな?

 そして更に意外なのが、そんな混血状態の者達を含めた自分達を“我々”と一括りに呼んでいる事実だ。

 よく前世では人間との間に出来たハーフエルフをエルフが忌み嫌い迫害している設定を目にしていたのだが、どうやら目の前の彼等はそういう混血児もきちんと護っているようだ。



「他にも、我々の中には容姿に優れた者が多いので、捕らえて見世物にしようとする輩や、奴隷にしようとする者まで現れる始末で……」

「ひどい……そんな事までされてるなんて、許せない……!」

「……ありがとうございます。そう言って頂けるだけでも嬉しく思います。そういう扱いを受けて来た歴史がありますので、最初にいきなり我々の事を褒める者は、我々を油断させようと企んでいるように思えてしまい信用出来ないのです」

「あ、そうだったんですね……ごめんなさい」

「いえ、ユリーシャ様が謝る事ではございません。褒め言葉を素直に受け止められなくなってしまった我々が悪いのです」



 いや、それも違うだろう。1番悪いのはエルフ達をそういう性格に変えてしまった原因を作ったクソ野郎共だ。

 全く、飯が不味くなるような話である。ユリーシャも苦虫を噛み潰したような表情になってしまっている。



「……まあ、いいだろう。それで、何かあったのか? 先程、皆が殺気立っているという話があったが」

「はい、それが……3日前からリカントの集団に襲われておりまして……」



 3日前から? っていうと確か……ヴォルトがジャガーノルド達に襲われ始めた次の日か。

 この、ヴォルトを襲ったのとそう離れていない距離に現れた別のリカントの集団……どう考えても偶然ではないよな。イケメンエルフが言っていた、ヴォルトが襲われた事を知っていたかのようなあの台詞……この事と繋がるような気がするぜ。



「リカントの集団? お前達なら問題になんてならんだろう」

「そうですよ、リカントは魔法に弱いし、エルフの皆さんは魔法が得意なんですから相性はバッチリです」

「いえ、事はそう単純ではないのです。確かに正面から戦えば我々なら1万のリカントとも渡り合えるでしょう。しかし、今回我々を襲って来ている奴等は統率が取れた集団なのです」



 1万匹のリカントと渡り合えるとか凄えな、エルフ達も。

 エルフ達の数はソナーに引っ掛からなかった連中も入れると……大体100人から150人ぐらいと言った所か。

 その内の全員が戦えると仮定すると1人頭100匹弱か……って、あれ? よく考えたらユリーシャは昨日100匹以上倒してたよな。ヴォルトに至っては恐らくジャガーノルドと戦いながらなのにそれ以上に倒している。ヴォルトはともかく、ユリーシャってやっぱり凄い子?



「統率が取れていると、普通の連中と何が違うんだ?」

「いや、それを問題にしないのはヴォルト様だけですよ」



 ダンディエルフのツッコミに吹きそうになってしまった。

 まあ、確かにヴォルトにとってはリカントごときが何をしようと何の影響も無いのかもしれんけどさ。



「奴等は地形を利用して襲って来るのです。ここが森の中である事を利用して木に隠れながら襲って来たり、半数を囮にして襲い掛かって来たり……度重なる奇襲で既に10人程が奴等に殺され、30人程は浚われてしまいました」

「ひどい……でもそれなら、奇襲を受けても大丈夫なぐらい強い人が戦いに出て、他の人は守りを固める事に専念すれば──」

「いえ、それは出来ません。戦闘が得意なエルフは10人程度しか居らず、たったそれだけの人数では彼等が休む事が出来ません。この3日でも既にかなり疲労が溜まっておりまして、今その中で戦えるのは2人程しか居りません」



 正直な話、その酷い現状を聞いても俺はイマイチ危機感を覚えていなかった。

 今のんびり話せているというのもあるかもしれないが、リカントを全く寄せ付けずに100匹以上葬ったユリーシャなら何匹居ようと何の問題も無いんじゃないかと思ったからだ。

 ……いや、流石にそれは虫が良すぎるか。木を盾にして距離を詰められたらユリーシャも危ないか。魔力がどこまで持つかって問題もあるしな。自然を大切にしていそうな生活をしているエルフの事だから、ユリーシャやヴォルトの魔法で森ごと焼き尽くしたり吹っ飛ばしたりしたら白い目で見られるだろうし。

 森を傷付けずにリカント達を撃退か……このミッションは思ったより難しいかもしれないな。



「──だったら、雑魚は私が引き受けよう。その間に他の者がリカントを統率している者を倒せば問題は無かろう」

「ヴォルト様、お気持ちは大変ありがたいのですが……敵の総数は約4千にも上ります。如何にヴォルト様といえど、それ程の数が相手では──」

「雑魚が何匹居ようと私の敵では無い。それに、統率者はこの者達がすぐに倒すだろう」

「はい? ユリーシャ様が戦われるのですか? それに今、聞き間違いでなければ“達”とおっしゃられましたが……?」

「あ、紹介しますね。わたしのこのペンダントは、実は元人間なんです。オリハルさん、喋ってもいいですよ〜」



 ああ、ヴォルトってば俺の事話しちゃったか。

 もっと里が絶体絶命の危機ってぐらいの状況になったら登場しようかと思ってたのに。



「ワタシハ、オリハル・コンノ。神ヨリ能力ヲ授ケラレ転生シタ元人間ダ。ヨロシク」

「オリハルさん…………」

「…………ゴホン。ところで、統率者が何者なのかは判ってるんですか?」

「え、ええ。実は最初に襲って来る前に1度我々に勧告しに来ましたので……」

「勧告、ですか? その内容は……?」



 俺が変な風に名乗ってユリーシャから変な目で見られる。何か既にお約束みたいになって来たな。いや、だって、ちょっと緊張するじゃないですか。

 ……それはともかく、続きを促したユリーシャに対するダンディエルフの回答はこうだった。



「ダーティラットと名乗ったリカントからでした。『貴様等を守護していた奴はもうここには来れん。貴様等の生きる道はただ1つ、我等に隷属する事だけだ』と」

「成程、そいつがジャガーノルドにヴォルトを襲うように言ったのか、ただそいつがジャガーノルドの襲撃に乗じたのかは判らんけど、あんた達がヴォルトを必要以上に案じていたのはそういう事だったのか」

「え? オリハルさんはそんな事を気にしてたんですか? そんな事より、相手は以前から里に来ていて、それが突然エルフ達に対して殺されたくなければ自分達の奴隷になれって言ってるんですよ?」

「ああ、そっちは何となく気になってな。それに、そいつが言うような事には絶対にならない。そうだろ?」



 俺だってそのダーティラットとかいう奴の言う事に思う所が無い訳じゃない。だが、正直な話ヴォルトも居る以上負ける気がしない。そいつは言葉を話してるし、統率もしているぐらいだから多分上位種のソルジャーリカントだと思うが、同じ種族との2回目の戦いならやりようはいくらでもある。

 ちなみに、どうでもいいかもしれないけどダーティラットの発音は『ダ』がアクセントらしい。前世でフル●タがアニメ化される前、アーバレストのアクセントを『レ』だと思って読んでたので、音声が付いた時に自分が間違って読んでたような感じがして恥ずかしかった思い出がある。

 それよりも俺の懸念は完全にただの杞憂に終わりそうでホッとしていた。というのも、実は俺はエルフ達が敵である可能性を考えていて、ヴォルトが襲われた事を知っているのは、裏でリカント達と繋がってるからなんじゃないか……なんて事を考えていたからだ。

 だけどまあ、ここで話している感じからすると全然そういう事は無さそうだ。実は他にも気になっている事はあるんだけど、……もしかしたらその謎は解けないかもしれないな。今回の2つの襲撃は偶然かもしれないんだし。



「ええ、そんなひどい事なんて絶対にさせないんだから!」

「決まりだな。ならとっとと害獣共を駆逐しに行くとしよう」

「えっ? お2人共もう戦いに向かわれるのですか?」

「うん、そのつもりだけど……?」

「どうした? 善は急げと言うだろう」

「いえ、リカント達はつい先程撤退したばかりですぐには襲って来ないと思いますので、我々の態勢が立て直されるのを待ってから一緒に出撃された方がお2人の戦いが多少は楽になるのでないか、と」



 ダンディエルフの台詞で、2人は一気にフリーズした。

 戦る気満々だった所にそんな事を言われてしまっては気が削がれてしまうのも無理からぬ事だろう。



「……決まりだな。2人共、一旦落ち着こう」

「オリハル、しかし──」

「だけどその怒りは取っておくんだ、ヴォルト。それに不謹慎かもしれないが、すぐに戦えないフラストレーションも一緒に溜めておくんだ。ヴォルトには雑魚相手だけど大暴れしてもらうつもりなんだからな」

「…………それもそうだな、キミの言う通りにしよう」

「ユリーシャもそれでいいか?」

「うん、大丈夫。……そうだよね、敵の数も多いし、勢いで攻めるんじゃなくてちゃんと準備しなくちゃ」



 ダンディエルフの言う通り、2人だけですぐに出撃するんじゃなくて、きちんと準備を整えて必要なら強いエルフと一緒に出撃するべきだろう。

 そう思った俺の説得は双方共に成功し、2人共少しは落ち着いてくれたみたいだ。



「──そういう訳だ。この襲撃に対抗しているエルフ達のリーダーの所に案内してくれないか?」

「……ユリーシャ様とオリハル様、本当に我々に協力して下さるのですか? 見ず知らずの我々の為に──」

「さっきの話を聞いて黙ってられる程冷たい悪魔じゃありませんよ、わたし」

「実は俺達は世界を救う為に旅をしているんだ。エルフの里1つも救えないようでは世界は救えないからな」



 俺がそういうと、ダンディエルフはえらく感銘を受けたような表情をしていた。

 本当にこの世界の連中はこういう話をしても全然バカにしないな。ヴォルトを見てるだけでも、この世界の強い奴はもう相当な化け物なのは想像が着く。仮にヴォルトの全盛期が世界最強の存在だったんだとしてもだ。

 なのに、そんなヴォルトよりも弱い俺達がそういう事を言っても全くそれを指摘しない。本当に……何て言うのかな、この世界は有言実行の奴しか居ないとかなのかな。

 とにかく、バカにされないのは凄く嬉しい。ますますエルフの里は絶対に守り通してやりたくなるな。



「その者達は私を助ける際にリカントの上位種を撃破している。実力は私が保証しよう」

「…………分かりました。案内しましょう」



 最終的にはヴォルトのお墨付きのおかげだろうか、俺達は今回の襲撃に対して備えている作戦本部的な所に案内してもらえる事になった。

 ふと周りを見回してみると、今のやり取りは結構注目されていたらしい。かなりの人数のエルフ達が遠巻きに俺達を観察していた。

 だが、女性のエルフや凄く幼そうなエルフしか見当たらない。やはり、戦えるエルフはみんな既に詰めているんだろう。



「わ〜ヴォルトが来てくれたんだ! ねえねえ、これでもう大丈夫だよね?」

「ええ、かつてはかの“現世十傑(げんせいじゅっけつ)”に名を連ねていたヴォルト様ですもの、きっと何とかして下さるわ」

「一緒に居る悪魔のお姉ちゃんはヴォルトの家来なのかな?」

「そうね……少なくともヴォルト様と一緒にいらっしゃるんですから悪い方では無いハズよ。随分若いみたいだけど、ああ見えてかなり強いかもしれないわ」



 ……ま、まあ、まだ何の力も見せて無いからな。やっぱりヴォルトと一緒に来てなかったら信用されなかったんだろうな。

 それに、もしあの時ヴォルトの言う通りにこっちに来てたとしたら、とてもじゃないがエルフ達に援軍を頼める状況じゃ無かっただろう。

 そんな訳で俺は、あの時の選択は間違っていなかったんだと改めて感じていた。

 つーか今さらっと凄そうな単語が出て来たけど何? げんせいじゅっけつ? ……現世十傑って書くのか? 字面から想像すると、ヴォルトは世界で十本の指に入る強さって事か?



「なあユリーシャ」

「どうしました、オリハルさん?」

「“現世十傑”って聞いた事あるか?」

「ええ、それぐらいは聞いた事ありますよ。誰がランク付けしたか分かりませんけど、世界最強の10人の事をそう呼ぶらしいですよ」

「今エルフ達の話が聞こえたんだけど、ヴォルトってその1人だったらしいぞ」

「えっ? ええ〜っ!?」



 流石に今ランクを作ったらランクインしないだろうとは思うけどな。転生したばかりで全盛期とは程遠いだろうし。









 俺達は里の中でも1番大きな建物に案内された。

 雰囲気的には村長の屋敷、ってトコだろうか。そういや里の長だと何て呼ぶんだろうな。ん〜……里の長だから、里長? いや、でもそんな言葉は無いよな。かと言って村長や町長な訳無いし、……族長?

 ……まあいいや、今は気にしないでおこう。とりあえずエルフ達の長が住む1番大きな屋敷に案内されたんだ。



「フェアンド様、戻られましたか。外が騒がしかったようですが、何だったのです?」

「ああ、その事だが……皆の者、聞いてくれ! リカント達に殺されたと思われていたヴォルト様が、無事に転生されて帰還なされた! しかもそのヴォルト様への襲撃を阻止したというこちらの者も我々に協力して下さるとの事だ!」

「何と! 本当だ、ヴォルト様だ! よくぞご無事で!」

「そして、こちらの少女がヴォルト様を助けたというのか。成程、確かにかなりの魔力をお持ちのようだ」

「おお、これならもしかすると里を捨てなくても済むかもしれんぞ!」



 開口一番、ダンディエルフことフェアンドが部屋の皆に檄を飛ばした。その言葉を聞くや否や、疲れの見える表情をしていた部屋の連中の顔が明るくなる。



「心配をかけてしまったようですまない。まだ全力は出せんが、それでも前世の晩年よりは力を発揮出来る。リカントごときなら何匹でも葬ってみせよう!」

「わたしはユリーシャと言います。ヴォルトさんの所をたまたま通り掛かってたまたま助ける事が出来ただけですが、魔法の実力はエルフの皆さんにも負けない自信があります! 頑張りますのでよろしくお願いします」



 ヴォルトが勇ましく宣言し、ユリーシャは丁寧に自己紹介を済ませる。俺は黙っといた方がいいかな。俺が自己紹介をするとまた話が途切れちまうからな。



「それで、次の敵の襲撃の際、我々の方からも打って出ようと思う! いくらお2人が参加されるとはいえ、敵との数の差は歴然としている。ここは一気に攻勢に出て敵将ダーティラットを倒すべきだと思うが、皆の意見を聞きたい」

「賛成です! 目にもの見せてやりましょう!」

「そうだ! ヴォルト様ならダーティラットごとき赤子の手を捻るようなものです!」

「──いえ、ボクは反対です。攻めに出るとどうしても里が手薄になります。仮にヴォルト様がダーティラットを倒したとしても、その間に里を攻められたらかなりの被害が出てしまいます」



 フェアンドの言葉に大半が賛成の意見を出す中、反対意見を出す者が居た。その言葉を聞いて他のエルフ達は白い目でそいつを見るが、そいつは平然としている。

 そいつは僅かに緑色が付いた金髪をポニーテールにして靡かせ、深緑色の切れ長な瞳。腰には2丁の銃を提げている少年のエルフだった。パッと見ではどの種族とも混ざって無さそうだ。

 後、もしかしたらコンプレックスかもしれんから直接は言わないが、男にしては背が低い。ユリーシャよりも5cmぐらいは低い。見た目はゼブぐらい若く見えるから、まだ成人してないのかもしれない。

 まあ何にせよ、周りには白い目で見られているが俺はこいつに好感が持てた。ちゃんと自分でもモノを考えているみたいだしな。生憎、ヴォルトが考えた策とは違うが……。



「だったらローシェル、ヴォルト様には敢えて里の守りに就いて貰えばいいんじゃない? そしてあたし達で攻め込んでアイツを倒せばいいのよ」

「そうか、その手があるか。名案じゃないかフェリス」



 とか何とか思ってたら、更に別の所から案が出た。

 その案はヴォルトが出した案と同じで、ヴォルトには雑魚の掃除を任せて別の奴がボスを片付けるというモノ。流石にユリーシャを名指しする事は無く、自分達で倒すつもりのようだが……。

 ローシェルという少年エルフの案を訂正したこちらのエルフは、ローシェルとほぼ変わらなさそうな歳に見える少女だった。ローシェルといいフェリスと呼ばれた少女といい、その若さでこの場に居るという事は相当な強さなんだろう。

 フェリスと呼ばれた彼女はというと、肩に掛かる程度の長さの桃色のツインテールがとても可愛らしい少女で、やや目尻が垂れ下がった瞳の色は群青色。そして何と、エルフの特徴である尖った耳が無い。その代わりと言っては何だが、髪の色と同じ色の犬耳と、膝裏ぐらいまでの長さの尻尾が生えている。

 何という事だ……! エルフで妖精の羽付きというだけで萌え要素だというのに、更に若干ロリで獣属性まで持っているだと!? ええい、エルフの雑種は化け物か!?



「獣耳エルフキタ──(゜∀゜)──!!」

「!!??」



 だから仕方ないと思うんだ。

 折角黙ってたのに急に奇声をあげてしまっても仕方ないと思うんだ。

 ユリーシャが凄く変なモノを見る目でこっちを見てくるけど、これで反応しなかったら童貞萌え豚野郎失格だろう。

 ただ、まあ、ええ。この後はえらい事になりましたよ。結局自己紹介もしなきゃならなくなったし、ユリーシャは言葉の意味をしつこく訊いて来るし。それで、要するに可愛いって事だって言ったら何かジト目で睨まれたし。

 ──フッ、美少女はジト目でも可愛いから全然恐ろしくないんだけどな! むしろご褒美と言っていいね!



「…………わたしが超電磁投射槍(レールジャベリン)を使って、地中深く埋め込んじゃおうかしらこの人」



 止めて! そんな事をされたら孤独死しちゃうわ!

 私が悪うございました。それだけは勘弁して下さい!



何かキリが悪い所で終わってしまい申し訳ありません。

作戦会議が終わるまで書こうとしたら今までよりも超長くなりそうだったので無理矢理切ってあります。


そんな訳で次回は多分作戦会議の続きです。

戦いの序盤戦ぐらいまで書けたらいいな…………。



わ~い、ブックマーク2件目です! ありがとうございます!

これからも地道に頑張って行きますのでどうかよろしくお願い致しますm(_ _)m

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