ゴブリンキングの鳴動 その8
オークの進軍は始まっていた。
『ん?何か飛んで行ったぞ?』
『あれは、魔神ホーリィじゃないか?』
『なんか・・・?』
『ん?なんだ?』
『いや、男の悲鳴が聞こえた気がしたが・・・・?』
話し合っていたオーク達は一瞬目をあわせ同時に。
『『『『なんか怖いのいたように思えたから、見てらんなかった!!』』』』
『何もいなかったことにしよう・・・思い出しても怖い。』
『そうだな。怖い。』
『とりあえず、魔神ホーリィがあそこにいなくなったでいいのではないか?』
『そうだな。』
『ということは、簡単に潰せるわけだ。魔神の城さえ良ければ簡単に攻め落とせるはずだしな。』
『ですよね?ハイボアオークジェネラル様。』
というわけで進軍する。
魔神ホーリィさえいなければ、あんな小さな領地落とすことなぞどうという事は無いのだ。
魔神の城のある場所を避け進軍する。
まさに群れのような・・・飢えた獣の群れ。
赤い鳥かごのような搾取のエリアを回避しながら、魔神を刺激しないように進む。
だが、いざ魔神とぶつかったとしても数で押し切ることが出来るだろう、もちろん各個撃破の場合だが。
領地に向かう途中気になるものがあった。
魔神の城とも違う。
城壁があるわけでもなく、堀がめぐらしてあるわけでもなく。
実質的に軍事目的には全く機能しない、城のようにデカイ建物・・・
しかし、その建築材料だけではなくさぞ名工が作り上げたのだろうと思われるほどの素晴らしい優美さが有った。
兵士になったばかりの若いオーク達でさえ見ほれている有様だった。
『ここを接収する!』ハイボアオークジェネラルは兵に命令する。
兵たちが城とみがおうこの建物を取り囲む。
兵の一人が素晴らしい出来ばえの豪華な扉に近づきノックする・・・。
『へ~い!ボーイ!!!その○○○のついた手でORESAMAのグレートな扉にさわるとはどういうことだい?~!!!!!』ずびしぃ!!
扉が物凄い勢いで開くと同時に、何やら小さい生き物が飛び出してきた。
よく見れば全身テラテラと光る赤い素材で出来た革のコート、黒い襟にヒダヒダのついた派手なシャツ、コートと同じ材質のブーツ・三角帽子、その服装は動くたびに陽光を反射していちいちまぶしいのでうざい。
ゴブリンの半分ほどの背丈のそれは背中に自分の三倍はあるかと言う柄で同じく自分より5倍はデカイ金属塊がついているハンマーを背負っていた。
『この屋敷を我々で接収する、速やかにあけわたせ!!』オーク達は各々武器を掲げ小さく赤いものをけん制する。
『お~いおぉ~い!!ボーイ達!ORESAMAのグレートな扉に○○○のついた手でさわった責任はどうするんだい?~!!!』ずびしぃ!!!
『われわれが接収するといってるだろ!!出て行け!!』と、ハイボアオークジェネラルは言った。
『へ~い!!ORESAMAのグレートなものを何でお前みたいな○○○見たいな奴にやらなきゃいけないんだ~い??!!』ずびしぃ!!!
『ボ~イ!!汚した扉は洗って返せばいいってもんじゃないんだぜ~ぃ!!』ずびしぃ!!!!
その場にいた者たちの全てがこう思っていたに違いない。
ウザイ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
魔法や矢を一斉にそれに打ちかける気持ちは理解できると思う。
が、それは赤い存在に届くことはなかった。
開いた扉の向こう。
人?らしい存在が《城壁》や魔法の盾、力場の盾を同時に展開したのだ。
次の瞬間、魔法を使った者と弓矢を撃った者のもとにその者の放った魔法の嵐が降り注いだ。
即死だった。
『せっかく命がけで造ったのだ。お前らのような存在にくれてやるのは納得できないな。』とその人?らしい者は告げた。
『へ~い!!そうだぜぃ!!ブラザ~!!!』ズヴィシィ!!!
『へ~ィ!ボーイ達~!大人のルールってヤツを教えてやるぜぃ!!』ズビシッ!!!
ハンマーを背中から取り出しかまえるウザイ赤い奴。
『へ~い!ボーイ!!謝るなら今なんだぜ~ィ。じゃないとこの剣で切り刻むんだぜ~ィ!!』ずびしぃ!!
『剣?ハンマーだろ???』
『だよな??』
『へ~い!!ボ~イ!!こいつが見えないのか~ィ!!』ずびしぃ!!!
と、ハンマーの先についている棘のようなトンガリを見せる。
『もう殺せ!!』ウザイんだ!と、一斉に兵が動いた!!
『へ~い!!ボ~イ!!来るのか~イ!!じゃあ、切り刻んでやるんだぜ~イ!!!』ずびしぃ!!
『れっつ!!ろけんろ~~~る!!!』ズヴィー~~~シィ~~!!!
力場の巨大な両刃の刃を形成したハンマーが振るわれた。
剣風で作られる竜巻に巻き込まれ切り刻まれるオーク軍。
何とか耐えて自軍が斬り滅ぼされているのを見て唖然としているハイボアオークジェネラルも次の瞬間には細切れにされていた。
剣?を背に収め。
人?のほうに向く赤い服。
『ブラザ~!!だいぶ元気みたいだぜぇ~い!!』ずびしぃ!!!
はっとする、人?らしい者。
『いや、ぜんぜん。』とものすごーく目をそらせた。
『そういえば、テラスへ向かう窓の感じと、寝室のドアがいまいち気に入らないんだぜ~ィ!』といいなが背中のハンマーで人?襟首を引っ掛け引きずっていく。
『い~~~や~~~~~!や~~め~~て~~~~~!!!!』
人?を飲み込み扉が地獄の釜の蓋がしまるような音を立てて閉まった。




