ゴブリンキングの迷惑 その11
ゴブリンキング軍と聖騎士との激突が始まっていた。
太ったゴブリンと5メーテはある巨大なゴブリンそして、魔神ホーリィの3人で400人の聖騎士と向かい合っている・・・
脇を抜けようとする東の国々からの連合軍3万それを抑えるゴブリン達。
激しく苛烈な戦いを丘の上から見ている。
聖騎士や連合軍から攻撃要請が矢のような催促で届くが・・・
部下からも戦闘に突入を促す声もある。
しかし良く戦っている。
一秒間に千発の魔法の槍を撃ち、他者の防御にも気を配るとは・・・
それに青い巨大なゴブリンは巨大な斧を聖騎士に振り下ろす、無数の盾の加護を消し飛ばし、城壁の加護に食い込み破壊し聖騎士にダメージを与える。太ったゴブリンは剣を軽く振っただけで聖騎士を軽く吹き飛ばしている。
だが、長くは続くまい。
いかに魔神であろうとも・・・魔力は有限だ。
さて・・・・
重鎮達の集まるこの幕の周りが騒がしい。
『弟に会いに来た、弟はどこだ?』まったくここは臭い。
フレグランスな香りはどこにも無い。
わし等の工房の臭いと親父どものかもす臭いに酒の臭い・・・まったく、こいつ等はいつになったら自分達を鏡に映すのか?
『何だ貴様!!』
『バカ!!兄王様だ。』
『え?リガス様・・・』
『しかし今王は軍儀中。国からお離れになったあなたをお連れするわけには・・・』
『ん?だな~。仕方ないか~。そんじゃこの剣を弟に渡してもらえんか。そんじゃ帰るワイ』と手を振り後ろを振り返りかけるリガス。
『ならぬ!!通せ!!!』ギムリード王の幕のうちからでもわかるほどの威圧を含めた声。
『まったく。性格はそのままか?』とひょこひょこ幕に向かうリガス。
王に頭を下げながら幕を出て行く重鎮達・・・わしには一瞥もなしか。まあそれでいいだろう。
幕に入り弟に会う久しぶりだななどと感慨深く思っている余力は無い。
ギムリードは、ドワーフにしては大きい、まぁ、気配やオーラがそう見せているだけかもしれないが。
赤い髪と髭に黒い鎧が似合っている。
わしとしてはもう少し意匠にこだわるべきだったか今は悩みどころだが父の着ていた鎧をこいつの体に合わせて直したさいにいじくるべきだったなと思ったりもする・・・いやいや、そういうことをしにきたわけでは、でもな・・・うーむ。
『何のようか?』まったく、わしにまで威圧か。巨大な獅子やドラゴンでも相手にしているかのようだぞ?言葉遣いによっては精神がずたずたになる者もいように・・・
『この剣をお前にやる。先ずは抜いて見せろ。』と一本の片手剣白に銀の意匠の鞘に収められた両刃の剣だが・・・
『白か黒い鎧には相性が悪い。』
『まぁ、そう言うな守り刀と思え。』
おもむろに鞘ばしらない・・・剣が鞘から抜けないのだ。
『だろうな』
『なにがだ、わしをたばかるのか兄よ。』
『お前には迷いがある。その剣は迷いがあれば抜けぬ。』
『面妖な。くだらん。』
『お前が何に悩むかわしにはわかる。』
『何がわかるか?』
『ああ。わかる。』
『国を捨て、民を捨てたお前に何がわかる。』
『ドワーフの本分は物つくりだ!わしはお前の言うとおり国を捨てた。だが、鍛冶屋になって物を作っている。だがな、お前は違う!』
『わしも国を作っている』
『いや、お前は国を作っていない父から受け継いだものを守っているに過ぎん。もういいだろう?お前がお前の国を作っても?』
『そんなことを言いに来たのか?』と深いため息をつくギムリード王そのため息さえドラゴンのブレスのようだ。
『ああ、愚弟の心配をする賢兄としてはな・・・あぁ、剣は肌身離さずつけておけよ。』
『ふんっ』嫌そうに腰に剣をつけ。もう一度引き抜くとするりと抜ける。
『威力のあるとか切れ味が良いと言うわけではないが、その剣はいい剣だ。じゃあな愚弟。』
幕からリガスが出て行くのを見送り。
重鎮達が戻ってくる。
それを見ながら。
ギムリード王は小声で・・・
『バカ兄が・・・』
丘を下りきったとこでモースが待っていた。
『おわったのか?』
『ああ、愚弟にあの剣渡してきた。』
『ふ』
『何笑ってるんじゃ?モース』
『弟好きのバカ兄貴・・・』
『違うぞ!!断じて!!』むきになるリガス。
風が変わった。
ギムリード王は、軍に命令をする。
このまま待機!!
これは聖騎士が行う戦いであって、我等ドワーフが率先して行うものではない。
それが理由だ!!以上!!!




