表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
391/439

ゴブリンキングの黎明 その91

バロールの事もフォモールの事も誇りとしているのだという。

そんな彼らの態度を微笑ましく思う。

子が父親を誇るように。



だが。

丘の近くに森に接しつつも、ポッカリと空いている広場が見えた。

広場は仲間の遺体を置き最後のお別れをする場所だそうだ。

しかし、彼らを見ると・・・なにか違和感があった。

先ほど魔王に傷つけられたものも混じっていた。どうやらしばらくしてから死んでしまったようだ。

わしも少し離れた場所から鎮魂お祈りを捧げた。

そんな能力はないが、気持ちだ。

そして、彼らはわしにもっと離れた場所に移動するように言うとわしを連れて離れる。

離れた場所とは、さっき下ってきた丘から広場を眺めている。

皆の顔はなにか怯えているような表情だった。

何かが広場の脇の森から現れた・・・それは、さっきわしが食った果物をたわわに実らせた木の怪物だった。

それは数体現れた。

枝を、たゆらせるように動かした。

枝の先から蔓状のものが伸びると遺体を1つ2つと巻き取っていく。

『おい!』その様子を見て立ち上がって声を出すわしを皆は諌めまたは目で征した。

そこには仕方がないんだとか、苦しみとか、悲しみとか、諦めがあった。

わしは、皆に従って座った。

コイツラにはコイツラのやり方生き方があるんだ。

・・・・いいのか?・・・・なにかが胸をチクリと刺す。


木の魔物は幹に突然開いた口に、モール族の遺体を次々と落としていく。

ある程度落とすとグシャグシャと音を立てながら咀嚼する。

泣き始めるモール族。

その声は死者を悼むものか。

それとも、おぞましさに恐怖に、自分たちの置かれた境遇に対するものなのかそれはわしにはわからなかった。


食べ終わった木の魔物は身震いをした。

自身にたわわになった実をふるい落として、森に戻っていった。

まるで餞別だとでも言ってるようだった。

慌てて丘を下り実を拾う者たちを見て、『そんだけで足りるのか?わしは足らんから森に入ってみる。誰かついてくるか?』皆首を振った。

仕方ない行くか。

『でも、あなたも深い傷負っているのに大丈夫なの?左手もないでしょ。』

『ん?大丈夫だろ??少し血が出てるだけだし。これでチャンと喰わんと血が出来んで余計に辛くなるからな。んじゃ、行ってくる。』

皆唖然とした目で、わしを見る。

そうだろうな。

死んでしまうのではないかと言ってる者もいた。


わしが森に入ってしばらくたった。


かなり奥に入ったからわしが暴れても音も聞こえないだろ。

適当に狩りを終わらせ戻る。

森の外は静かだった。

『あの人死んじゃったかな?』

『まだ、戻ってこないからそうかもな。』

などと話している声が聞こえる中にわしが戻ったものだから、わっ!!っと皆が声出し集まってきた。

『無事でよかった!』とキイに抱き着かれただけではなく、相当心配したのだろう。

まわりに大勢集まってきた。

手ぶらで帰ってきてるわしにも気が付かないほどにだ。

その事態に気が付いた者が『森に入って無事だっただけでも儲けものだよ。』と言ったので、わしはニカッと笑いかける。

先ずは木の実を数種類、《胃袋》から出す。

さっきの木の怪物が落としていった実を指し

『森に入ったら出くわしたから倒して獲った。あとこっちのは、あの動く木じゃない奴だ。』と、その木の実をキイに投げわたす。

キイは急なことに落としそうになりながらも無事にキャッチした。

どうしたら?って不思議そうな顔をするので。

『喰ってみ』と、わしが言うと同時に頷きかぶりつくキイ。

口の端から果汁をほとぼらせながら目を細めるキイ。

次の瞬間目を見張って『おいしい』と連発

それを見た他のもの達が群がる、一斉に食べ始めた我先にと・・・中には二つ三つと多めに抱え込んでいる者もいた。

暫くして落ち着いたころ。

さらに、ブドウのようなものや様々なものを出しながら。

『これは森の浅い場所にもなっていた。』

さらに、小さなネズミのような魔獣やウサギのような魔獣を出しながら。

『このぐらいならお前たちにでも倒せるだろ?』と出してみる。

ゴクリと言う音とおなかの鳴る音の合唱が響く。

わしは『槍を持て!それがなければ棒でもいい。それもダメなら石でもいい。』と、言った。

続けて『森に入れば危険はある。大きな魔獣もいるし。あの動く木もいる。だけどな、実りも多いんだ。分かるな。こんな風にな。』と、お決まりの巨大なイノシシのような魔獣を出す。

お~!!と、声が響く。

『さ~って、解体して喰うぞ!!』

わぁ~!!と、声が上がった。


遠く城からこの様子を見ていた魔王がわしのとった魔獣をいぶかしげに見ていたが別の魔王が

『運よく森から出た魔獣があそこで死んだのだろう。今だけは楽しませてやれ。』と言った。

奪って肉が喰いたかった様子の魔王だったが、渋々あきらめたようだった。


秘伝のたれは、ばーちゃんのところに持っていうものなのだが状況的にここで使ってもいいだろうと思って使う。

モールたちは、肉を口に運ぶたびにうまさに目をむいていた。

まぁ、わしの焼きながら食い続けていたが・・・

『ゴブリンキングさん?』とキイに声をかけられた。

『ん?なんだ??』と、わしは答えた。

『大丈夫?顔色が悪いよ。』と、キイ


そうだ、わし体中穴だらけで調子悪いんだった・・・わしはその場に倒れた。


目を覚ますと、外に出る。

すぐに走ってやってきたキイに支えられた。

『大丈夫?まだ、寝てていいんだよ。』

ここからでも、わしのとった魔獣が見える。

結構大きかったんだなあれ。

もう、骨になっていたが・・・その所々がない。

気がついたら何かを加工している奴が多くいた。

骨や牙なんかを鋭くとがらせたりギザギザを付けたりと加工していた。

槍の穂先の部分にするんだそうだ。

適度な大きさの石も集められていた。

加工に使ったりうまく石自体が割れたら、棒に蔦で括りつけて石斧を作るんだそうだ。

どうもわしが原因らしい。


まだ、食料はありそうだ。

わしが動くまでもないだろう。

眠ることにした。


次に目覚めるときには、もっと一杯こいつ等の喰えるものをとってきてやろうと思いながら眠りにつくのだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ