ゴブリンキングの馳騁 その1
(この作品はフィクションです。現代存在する団体や民族を模倣したりしてはおりません。)
第二ゴブリン城で寝ていたら・・・久しぶりにあれが来た。
オークエンペラーを捕食しました。
オークエンペラーになりますか?
んにゃ、なんない。
ダークゴブリンエンペラーを捕食しました。
ダークゴブリンエンペラーになりますか?
なんない。
能力の移譲を受けますが?
使わないのもあるけどもらっておく。
了解しました。
エンペラー種への存在変化が出来ます。
存在変化しますか?
んにゃしない。
もう一度聞きます。
存在変化しますか?
なんで?二回聞いたこのパターンは今までないんだけど。
なら聞きます。どうして、存在変化しないのですか?
だって、この物語ってゴブリンキングの帰還でしょ。
そのまま、ゴブリンキングの~ってやつだよな。
ゴブリンエンペラーの~ってなったらこの話終わっちゃうじゃんか!
そ、そんな大人の理由で・・・・
・・・・・・・・・わかりました。
そう言えば、大魔王とか結構わし食べてたよね。
わし、大魔王にはならないの?
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・大人の事情です。
なんか、今笑われたような気がした。
大魔王になるには、真なる魔王ってのにならないといけないのだそうだ。
どうやったらなるの?
・・・・それは秘密です。
いじわるされた!!いじわるされたぞ!!
なんていうやり取りの後目が覚めた。
あんなに感情的になったあの声は初めてだなぁ~
何だったんだろか?とか、考えていた時、東方北部の王城では。
皇帝ゴア・ドライゴスの怒りが居並ぶ者達にぶちまけられていた。
『イーストエンドの開国もならず。あ奴らの船を一隻も沈めることも出来ず。船も半分以上無事では帰らず。水龍達も死ぬものがで。そのうえ兵站集積地は海賊共の荒らされ。さらに、ブラムドもまだ戻らぬだと!』
『関係責任者等は処断いたしました。』
『そんなものですむか!!』
『はい、お許しを・・・』
『お怒りはごもっともですが・・・この件についてかの国へ責任転嫁をするのは無理かと・・・』
行き成り立ち上がった皇帝ゴア・ドライゴスが剣を抜き、先の発言をしたものを脳天から切り裂く。
悲鳴のなか死体をかたずけ床を掃除するものが現れる。
この情景もこの国ではいつものことなのだろう。
静まり返った。
その中で怒りに震える皇帝ゴア・ドライゴス。
そしてその静寂を打ち消す声が巨大な両開きの扉が開かれその外側から聞こえた。
『ブラムドが帰還いたしました。ですが・・・・』
『なんだ!』と一喝され、末席の侍従に耳打ちする。
伝言ゲームのように繋げられ皇帝ゴア・ドライゴスに。
『なんだと!!』と怒れる皇帝は玉座を後にした。
重鎮たちは今まで呼吸をも忘れていたかのように深々と息をする。
その時両開きの扉は皇帝の後ろで閉まった。
ブラムドはもがいていた。
『これはこれは皇帝陛下・・・』などと声が響く。
ここは海底洞窟に続くブラムドを祭っていた神殿の跡地、今はこの国の造船場などを伴った軍事施設の一部となっている。
『どうなっている!』
『失っていた左前鰭は復元いたしましたが・・・』
治療術師たちのおかげで素早い回復が出来るかと思われていたのだ。
幸い深手かと思われた左前鰭付近は呪詛にかかっておらず、他にも呪詛による傷はなかったからだ。
しかし、修復すると様々な属性で体を破壊され元のように戻るどころかさらにひどくなったりする始末。
暴れるブラムドに鎮静魔法をかけつつ危険な魔薬も用いている状態なのだ。
ブラムドはこの傷の原因があの化け物にあることだけはわかっていた。
『・・・・このような有様で未だ芳しくなく・・・・』
『いつ。動けるようになる?』
『それが・・・』と横に首を振る老治療術師
ふん!っと、鼻を鳴らし
『役立たずめ。』とその場を後にする。
ブラムドは、その後姿を力なく薄く開けられた目でただ見つめていた・・・
そんなことがあったってことはわしは知らんが、なんだかこの国の外が騒がしい。
なんだか門番のゴブリンロードと大勢の何かがいさかいを起こしているらしい煩わしいが行ってみることにする。
行ってみると、彼らはゴブリンの亜種であるようだが・・・
顔がわしらと違って特徴的なので記しておく。
頭は全員禿で男も女もだ。
耳から上の部分が平らになっている。
普通は緩やかに丸く盛り上がっているものだが。
えらが張っていて目が細く吊り上がっていて狐の目のようだ。
何で頭が平らなのか聞いたら、生まれたときに親に逆らわないように物凄い教育を受けるのだそうで平らな板状のものでバシバシと打たれ、兄弟にも年上のものに逆らうなと打たれているうちに生まれながらにそのような頭になったそうだ。
彼らはダニ族と言った。
『なんだって?』と、わし
『それが・・・』と門番のゴブリンロード
それからやいのやいのとこいつらの話が始まったのだ。
『あの船には俺たちの親族が乗ってたダニ。』
『その船をお前たちが沈めたダニ。』
『おや、兄弟を殺したダニ。』
『だから、俺たちに謝罪と賠償を要求するダニ。』
あの船って、この間戦った東方北部の船団か?
偶然やってきていたメアリーが
『なんであの船に乗っていたの?それにあれは、東方北部の国から仕掛けてきたものだからこちらに責任はないじゃない?賠償ならあっちの国にしたら?』
暫く首をかしげるダニ族たち。
そしてひそひそと話だし・・・
『あの人たちは、いい人ダニ。』
『へ?なんで?』と、メアリー
『ひもじくて貧しい俺たちのところに来て船漕ぎの奴隷を買っていったダニ。』
『奴隷?』
『そうダニ。俺たちにはお金が入って助かって。奴隷になった親族はあの立派な国のために働ける名誉を得たと喜んでいたダニ。これってWin winってやつダニね。』
???こちら側一同はよくわからない状態になった。
『で、それを殺したんだから賠償と謝罪をよこすダニ。』
『でも、奴隷なんだよね?売った?のは自分たちなんだよね。』
『そうダニ、何かおかしいダニか?』
『もう一度言うけど、東方北部のほうが仕掛けてきた結果だからこちら側には非はないよ。』
『そんなことは関係ないダニ。知らないダニ。失った命の為に責任を取るのは沈めた国がとるのが当たり前ダニ。』
なんかもう、めんどいからお金払って帰ってもらったら?って、わしが言うと。
こういうのはお金払うと認めたことになってまた来るよって話になった。
つまり、謝らないし賠償もなし。
暫くすると
『大体、お前たちはズルいダニ。お前たちは昔俺たちに負けているのに、こんな国作って裕福になってるダニ。』
『負けた?』
『そうダニ。闇の月の王との戦で、負けたじゃないかダニ。俺たちは闇の月の王側にいて勝ったダニ。』
『そうなの?』と、わしはポーやメアリーに聞いた。
ポーはアーカイブで調べるけど資料無し。
先代ゴブリンキングの日記によると・・・と、メアリー
『負けたお前たちが勝った俺たちの言うことを聞くのが当然ダニ。』
『当然、俺たちが裕福に楽しく暮らせる土地を提供するダニ。』
『なんで?』
『要求するダニ。』
『必要ないよね?』
『謝罪ダニ!賠償ダニ!』
『過去を顧みない者に未来はないダニ!』
『裕福に楽しく暮らせる土地を提供するべきダニ。』
取り合えず無視してやると。
その間、第二ゴブリン城のあちこちでタダ食いとか盗難なんかが発生捕まえると全部ダニ族。
話を聞くと。
『昔、全世界に迷惑をかけたお前たちにこれぐらいしても当たり前のはず、どうといこともないダニ。』
などと言う。
散々悪態と迷惑をかけまくった挙句彼らは出て行った(正確には追い出した)。
その時彼らはこう言い残した。
『お前たちのやってきたことを世界中に言いつけてやるダニ。』
早速各地に散った彼らはわし等に言った通りのことを始めたようで。
各国から白い目で見られたり、本当なの?と確認されたりした。
商談の急な取引の縮小や決裂もあったりしてダニーが怒っていた。
過去の話なんだけどね。
確かに、当時最後は彼らダニ族は闇の月の王の側にはいたらしい。
初めは先代と一緒と言うかかなり後ろのほうについてきてたみたいだけど、むしろ邪魔だったと記してあった。
進軍中に先代の軍からはぐれたダニ族は泣きながらうろついていたところに、ある者が現れた。
彼らはそれが誰なのか知らずについていった。
それが、闇の月の王だった。
戦闘が終わり闇の月の王の側にいたダニ族は先代たちを罵倒した。
ダニ族たちはそのまま闇の月の王がとどまってこの世界を統べると思っていたらしい。
その末席に自分たちは棚ぼた式にいると。
だが、闇の月の王は事が終わると去って行った。
で、生き残った先代の生き残った者達から袋叩き似合い彼らは駆逐された。
駆逐されたはずだったんだけど・・・
あの地に逃げ延びて生き残っていたのだ。
まぁ、こんなところだ。
と、いろいろとあることないことを言われてその対応に追われていたわし等だが、あいつら、言いつけに行った国で、いろいろなことをしでかしたという。
昔、自分の先祖は持っていた物がこんなとこにあったとか言ってそれを俺たちに返せとか言って奪ってみたり。
ここは昔俺たちの住んでいた土地だから自分たちに返せって騒いだり。
さまざまなことを言って各国に迷惑をかけ始めたのだ。
同じゴブリンなんだから何とかしろと言う各国の冷たいお言葉が・・・
それで、各国と話し合い、ダニ族条項が成立し西方諸国全体が比準した。
ランカル島。
過去魔神が出現する場とされていたところなのだが、オークエンペラーの居城となり、城主が討たれると聖騎士・聖守護騎士が管理を行う地となっていた。
『来たれダニ族!!裕福で楽しく暮らせる地!!ランカル島へ!!』というスローガンにのせられて来た者と各地で捕まった者を船に乗せて海を渡る。
船が付いた。
『この袋を一人一つ持て降りろ。』
『この袋は何ダニ。』
『当面必要なものだ。』
『全員降りたか?!』
『降りたダニ。今度、船はいつ来るダニ?』
『なんでだ?』
『こんな袋に入ってる食べ物だけじゃ三日ももたないダニ。』
『多分船はもう来ない。』
『なんでダニ?』
『ここは城もある(壊れているが)。森もある(オーク共が海を渡る際にすべて伐採されて木は一本もないが)。畑もある(今は草原だが)。だから頑張れば裕福な島になるはずだ。じゃあな、頑張れよさらばだ。』船は島を離れた。
残されたダニ族は去って行く船を見ながらこう言ったという。
『俺たちは何もしてないダニ。被害者ダニ。西方諸国の連中に差別されたダニ。でも、ゴブリンキングのほうが嫌いダニー!!』




