ゴブリンキングの輻輳 その32
わしらは、ここが首都だったんだなぁ~って残骸のある場所に来ていた。
どうすんだろこれ?
しっかしすごいなぁ~壊れているとはいえ、あちこちに噴水など公園まであった。
地下施設もあって、巨大な公衆浴場、その他には神殿などもあったのだろう・・・
今は時間がないのでそのままにしていよう。
大きな城跡も・・・第二ゴブリン城並みだな。
その周りにこの広大な城下町だ。
広いっていいね。
でも、維持が大変だろうなぁ~
この国はかなり大きかったんだろう。
わしもこんな大きい国作れるかなぁ~?って、《王の進軍》でメアリーに聞くと何故かダニーの口を押えている風景が・・・
ぐぬぬ!ダニーがもがきながら。
数字の羅列が、わしの頭を通り抜けた。
なんのこっちゃ?なのではあるのだが。
などとやっていたら、ちょっと騒がしくなった。
箱舟が数隻こちらに向かって飛んできた。
シロから『兵隊が攻めてきたので、避難民を置いて逃げてきました~』だそうだ。
あ~。
まだ戦わないといけないのかなぁ~?
とりあえず、わしらも逃げるかと思ったら。
『マツハ、サワちゃん、お願い。』とメアリー
箱舟から降りてきたサワがマツハから紙の束を受け取った。
サワは、大き目の瓦礫に符を貼ると呪文を唱える。
グゴゴ!っと、人型が起き上がりゴーレムとなる。
マツハは、符の束を空に投げると頭上で同心円状に整列する符が、一斉に拡散してあちらこちらの瓦礫に張り付くと同時にゴーレムとして立ち上がる。
マツハばっかりに任せすぎると魔力切れの心配があるので。
サワの分はみんなで手分けして、貼っていく・・・
城下町や城の大部分を削り取って更地になるほどの数のゴーレムを作って何すんの?
って思ったら、ドスドス!!と、いきなりのスタンビート。
なになに?
全てのゴーレムが北に向かった。
『なにしたの?』
『・・・・・北・・・・・壁・・・・』
分からん!
メアリー??説明して。
『もともとの境界線上に壁を作っておくの。』
ふ~ん?
で?
だって、いくら大量のゴーレムとかでもそんなに高い壁が作れないだろ?
そしたら低くてもいいんだって言ってた。
ここが、境界線。
つまり国境だよって教えてあげるだけでいいっていうんだよね。
南下して来た兵たちは、怒涛の勢いで突っ込んでくるゴーレムの群れを見て進軍を停止した。
国境線上に着いたゴーレム達は命令通りばらけて壁になって止まるのを、兵士たちは唖然としながら見ていた。
が、ぶるぶると首を振り冷静になった士官が。
『壁を乗り越え進軍を再開せよ!』と、命じられて我に変える者達。
のろのろと進軍を開始した兵たちを、空から降りてきた者達が壁の前に立ちはだかる。
『は~い、みんな元気~♪みんな乗ってるか~い(いろいろな意味で)』とその者が言った。
その者の前にずいっと体を滑り込ませる黒い服の少女。
『この壁から向こうは、今やゴブリンキングのものだ。壁を超えるというのならその覚悟はあるのであろうな。』
『あれは、吸血女王です。』と士官に耳打ちする兵。
『あ、あの方は・・・』と女性の兵が言うと、周りにいた他の女性数名からも黄色い叫び声が・・・
『なんだ?』
『先生』
『あ?』
『いえ!あのお方は危険です!逃げましょう。』
『何を言い出すんだ!陛下の命令は南進だ。』
『え~止まってくれないと、ヤッチャウヨ~!!』とグール子が腰を振り振り言った。
『イッチャッテ~!!』と、女性兵の集団が黄色い声援を送る。
『先生ノリノリですね~♪』と脇にいたキキが言った時にグール子が精神汚染を発動した。
過呼吸の音と雄叫びと悲鳴と黄色い喜び含めの声が阿鼻叫喚と響きだす。
『にゅこうしたし~、新刊も間に合ったし~。ニシシ』とグール子は笑っていた。
何故か進軍が止まったことに、東方北部の大国の皇帝ゴア・ドライゴスは苛立ったが状況を聞く限りこれ以上の深入りは無理と判断。
一度兵を安全な場所までひかせることにした。
『この苦渋は必ず返すぞ、ゴブリンキング覚悟しておれ。』とゆっくりと玉座に腰を落としながら独り言ちた。
わしには時間がない《王の進軍》の影響がそろそろ来そうなのだ。
わしはまだこの地に生き残っているゴブリンがいるのではと思い咆哮を上げる。
その場で、皆が退却準備を始めるころゾロゾロとゴブリン達が現れた。
少ないがこの地での生き残りなのであろう。
わしの顔を見て疑い深く訝しめにしながら・・・
『本物?王?』と、わしを指さしながら言った。
うんうんっと周りの皆が言うとちょっと安心したのか、わしのほうをもう一回見る・・・かなり不安目だ。
『わし王様ね。配下になるか?』
『配下になる!』と元気よく答える野良ゴブリン達。
配下になるものの中からこの地に残りたいといったものを残し一時壁の近くに住むように命令する。
残らずわしらについていく者達を箱舟に乗せる。
かなりギュウギュウになるが仕方ない。
住処を作るのに使えそうな資材を下ろして分け与える。
壁の近くに住むように命令したのは・・・多分、何かしらの手を駆使して東方北部の大国の南下は止まらないと思うのでそれに対応するためのわしなりの方策である。
彼らに進軍されたことを教えてもらえればわしらが対応できるというものだ。
来たら逃げちゃえばいいしね。
無人の地にしちゃうと占領されてもわしが気が付かないかもしれないからね。
わしらがその地を離れてから、せっせと彼らが住処を作ってるときにそれは現れた。
避難民だというその人種達は、魔素汚染したところに住んでいたらしい。
汚染が酷い為住めなくなったので土地をこちらに求めてきたと言いながらゴブリン達を追い払ったのだ。
追い払われたことを聞いたわしは、ある者達に命令をした。
魔界に一時行かせていたんだが、配置を変えることになる。
人族が占領した場所に空から現れたそれは
『我々はゴブリンキング様の命により、この地の支配権を主張するものだ。お前たちはゴブリンキングの許可なく侵略行為をしている。直ちに壁の向こうに戻れ!さもなくば・・・』ボッ!と口腔内に炎をためたそれは黒い色の龍。
深淵龍達だ。
『この地を侵すものは、誰であろうと排除する。これは警告だ。』
そして、避難の遅れた者達を焼き尽くした。
『大変です!!巨大な黒い竜が出現し、かの地の領有権を主張。入り込んだ兵の大半が焼き殺されました。』と文官が皇帝に通達する。
『何だと?どういうことだ?ゴブリンの王が龍を従えるだと?だが、従えているのは奴らだけではあるまい竜騎士共に討たせろ!』
『それは・・・』
『駄目だというのか?』
『いえ。噂なのですが・・・かの、ゴブリンキングなのですが、龍族の娘を二人妻に迎えているとか・・・それに、竜騎士の乗っている飛竜は龍達からみれば下等な亜種程度の扱いだともいいます。皇帝陛下御再考を。』
『別の手を考えろというのか・・・わかった。』と、皇帝は頭を抱えた。
東方北部では、ダークゴブリンのぬいぐるみを焼いていたがいくつかは残し研究しようとしていた。
だが、それは自壊していって全部消滅した。
ダークゴブリンエンペラーが死んでしまったため感情が津波のように彼らを襲ったのだ。
悪魔達は強い感情に弱い為自身を制御できず肉体?が耐えられなかったのだ。
それですべて自壊。
そして、魔神種は同じく戸惑いの中で囚われの自分の気持ちの制御ができず悲嘆と怒りのない交ぜになった感情に突き動かされたまま自壊の道をすすんだ。
ゴブリンキングの集めたぬいぐるみの大部分が魔王種だった。
それは、残っているし自壊もしなかった。
さすがは魔王種だ。
だが、ぬいぐるみのままなので・・・つまり魔法の解除方法がわからないのだ。
なので取り合えず、配下になるものならないもの(ならないものには自壊させるが)を選択のみさせることにした。
解除の方法はマツハとサワの頑張りに期待しながら気長に待とう次に目覚める時には何か変わるかもしれないからな。
そして、わしは眠りについた。
また、起きたときいろいろ世の中が変わってるんだろうな~。
楽しみでもあり怖くもある・・・そして、深く・・・意識を沈める・・・
起きたとき柔らかい布にくるまれて、ウトウトするホーリィに抱かれているのに気が付いた。
わしの動きで目が覚めたホーリィのほっとするような表情に変わるのを見てわしも満足する。
何やら声をかけるとその部屋にいたのかエンガクとシロタエが起きだしてくる。
今回は何やら心配させたのだろうか?
それとも、外の状況がそれほどに変わったのか・・・
衣服(もちろん腰布だけだが、何か?)と身なりを整え(王冠をかぶってな。)その間3人からいろいろ聞くことになった。
わしが眠っている間に各国の偉い人が集まって、東方南部の空白地つまりわしが今所有している土地についてどうしていくかについて話し合ったらしい。
何で、ダークゴブリンエンペラーを倒したのはわしなんだからあいつらが占領していたあの土地はわしのもの・・・で、いいはずなんだが?
東方北部の大国の連中が自分たちも戦ったそれで勝ったんだから自分たちにも権利があると主張したのだ。
もちろんわしらにもそんな大きい土地を維持するだけの国力はない(今は?そこらへんについてどうなの?)。
飛び地ばっかりなのね。
まとめるって言ってもね。
龍の国やら何かを遷都させるわけにはいかんだろ。
でも、他の国も同じだ。
それは経済的なものだったり、軍事的なものだったり理由は様々だけどね。
近くにある東方北部の大国だけがこの領土を得て最も有用に使える状況なわけだ。
でも、深淵龍とゴブリン達の頑張り。
そして、低いとはいえ国境にひかれた壁のせいで領土外であると明確にされてしまった上に実質支配はゴブリンキングの方にある。
わしが寝ている間に壁の向こう側に駐屯地や橋頭保、兵站集積所などなどを設置しているご様子、砦の建設なんかも着々と進めているとか・・・
海洋側も小さな無人の島も有人の島も攻め込んで領有を主張して、陣地化および要塞化を進めていて海からかの地に攻め込む準備をしているという話もある。
実際、海からも何度か攻め込んだみたいだし。
対龍兵器を持ち込んで攻撃してみたりしたみたい・・・エンガクとシロタエが、飛竜に乗った竜騎士達を抑え込んで、そして、怒れるホーリィに完膚なきまでに・・・ああ、怖い。
まぁ、いろいろあったみたいだが。
あきらめられないのか、話し合いの機会も持ったわけ。
東方北部の大国以外の国は、かの国が大きくなることで、最強国になるのを恐れた訳で・・・
かと言って、わしらに取らせる訳にもいかず。
さぁ、どうするかというもの。
その会議に出た。
ポーやメアリー、ダニーは軽んじられて、話を聞いてもらえなかったらしいが・・・一緒に連れて行った5メーテほどの背丈の存在30体ほどの者たちが彼女を取り囲んでいたその者達の意見は重用された、機械公も参加していたのは驚きだがかなり有利な展開になっていたらしい。
そして、未だ怒りれる3人の我妻達に睨みつけられるゴア・ドライゴスだが微風を受け流すかのごとく平然としていた。
周りはさぞ生きた心地がしなかったであろう。
気の毒にな。
で、結局はのちに分割で各国で統治することとなった。
まだ、その時期になっていない為その時期が来るまでうちで全部見ろっていうことになった。
かかる経費もこっち持ちとなった。
これは酷いなぁ~とか思ったんだがな~
でももう一つ変な話がある。
空飛ぶ商店街から箱舟で、東方北部の大国と商売を開始することになった。
関税などの話も出たようだが完全にうちの通貨でしか売り買いが出来ない空飛ぶ商店街での取引なので、関税は全く無し、保護にするか規約に何か違反があれば即流通停止にしますとダニーが言い放ったようだ。
勿論、イグドラシルの実の販売の件を各国に新たに提示したことで、諸人達にどよめきが・・・あったそうだが、その時だけゴア・ドライゴスの眉根が動いたという事は記しておくのだそうだ。
わしら以外に魔物として魔王として出ているバロールだったが似合わぬ笑顔が周りに恐怖を与えていたことを追記しておく。
通使を交換しないか言う話がゴア・ドライゴスの方から出た、各国はそれに乗ったのだが、我が国とロンゴロンゴアナのバロールだけが拒否した。
理由は、少なくとも各国が我々を受け入れることが完全にできる状況にはないっていうのが理由だ。
そうだよなぁ~トイレ問題とか起きるもんなぁ~と、話を聞いていたわしが言うと、3人の妻達がちょっと苦笑いしていた。
まぁ、各国との話し合いがうちに困ったことは押し付けましたってノリで終わったと聞かされた。
メアリーがかなり怒っていたようだから、ちょっと後が怖いとも言っていた。
ふ~ん。
まぁ、あいつらに任せておけばいいかなって思ったので軽く流す。
そして、気になるフレーズについて思い出す。
5メーテの30体って何?ガークならガークっていうよね?
でもあいつらもうちょっと小さいし。
え~っと、もしかして、護衛にか何かドラガークか何か連れてったの?
巨人クラスそんなに収容できるほどの場所があるなんて世の中ってすごいね、などと思ったりしたが。
『それは・・・』と、ホーリィに手を引かれ、わしらは部屋の外に出る。




