ゴブリンキングの輻輳 その25
ニドへグを拘束したこと無力化したことを《王の進軍》で皆に知らせた後、機械公はガサゴソと烏帽子の瓦礫を引っぺがして退かしながらなにかを探していた。
探していたものはすぐに見つかる。
機械公にはそのものがそこにあるか確実にわかっていたみたいに迷いすらないような行動だったのだが・・・探しているものは、ボロボロになっているであろう機械人形・・・・あった。
ふむ、どうかネ?
『動けるかネ?』焼け焦げ、ほぼ内部の骨格がはみ出してそれすらあちこちで破断されている状態のコッペルに話しかける。
反応は無い。
一瞬ダメか?と顎に人差し指を当てながらさらに観察を続けると何かに機械公は気が付いた。
人で言えば脳幹にあたる部分にチカチカと明かりがともっている。
『聞こえるかネ?』
チカチカ
『記憶は残せたかね?』
チカチカ
まぁ、よくわからないが体のほうは全面的にダメだが私のような天才には、同じようなもの(バージョンアップ)を作るなど造作もない。
決して変にいじる(魔改造)ことなどしない・・・・かもしれない。
脳幹につながる基本部分で使えそうな部分を回収する。
稼働させる魔力などは私と接合させることで維持させる。
これで大丈夫だろう。
聖樹の方ではゲートから続々と援軍が現れる。
なぜか、クイロ達まで現れて現地を混乱させたりしていたが・・・・
『ニドへグは無力化され現在こちらが拘束している!!降伏か継続か選べ!!』とネルソンが深淵龍達に声をかける。
馬鹿な!
戯言を!
などという声が深淵龍達から聞こえたが、確認したのだろうか。
動揺が走る。
『どうする?継続か降伏か!』
『継続だ!』
『我らが死すとも・・・・』
そんな声の聞こえる中
重々しい声が深淵龍側から出た。
『降伏だ。われらは負けた。』と白い顎髭を生やした巨大な深淵龍がつぶやいた。
『長老!』
『なにを?』
『聞け!我々は減りすぎた。このまま争い全滅してしまったら、誰がまだかの地に残る我らの子供たちや卵を守るのだ?
それにだ。我らは負けたのだ。
龍の誇りにかけてそのことを認めていかなくてはならない。』
『長老!しかし、我らは龍族に負けた訳ではない!ただの低俗な魔物達に・・・・』
『そうだ!その低俗と言われる魔物達に負けたのだ!』
『だからと言え盲目的に配下になるのと考えるのはいかがなものか?』
『いや?ニドへグは彼らに二度挑み負けた。そして我らも種の存続をかけ新たな天地を得ようと挑み今負けたのだ。』
『生き恥をさらせというのか!!』
『そうだ!』
『なぜ?そこまで!それこそ龍の誇りは・・・』
『だからこそ、なおさらに生き残る方法を探そうというのだ・・・生き恥をさらしても・・・・』
『だがな。思ったほど損はないかも知れぬよ。』と人よりのドラゴニュートの姿の女性が深淵龍達に声をかける。
一斉に固まる皆。
今敵として味方として戦っていた双方が一斉にその存在を見つめて固まる。
『あなた様は・・・・』と長老は人の姿にかわり彼女の前に平伏する。
『こやつらに言われて納得できずとも、私に言われれば納得できるだろう?どうだ?』
『いやしかし・・・』他の深淵龍達も人の姿になり平伏する。
周りにいた他の魔物達は何か前にも見たような光景だなぁ~と思っていたかは知らないが事の成り行きを静観する。
『ここの王、ゴブリンキングはバカでお人よしだ・・・中に入ってきた者たちを見捨てる勇気のない奴さ・・・それが、お前たちを救うことになるかもしれない。
だが、敵には容赦しないものでもある。
だから、今。
戦いをやめよ。
そうすれば、かの者はまだお前たちを受け入れてくれるかもしれん。
ただし!お前たちがニドへグを切り捨てることができるならな。』
『我らを解放してくれたニドヘグを見捨てるなど出来ようか。』
『長老!!』
『今ならば、私がかの者に口添えをしてやろう。
それにだ、ニドへグは満足かも知れん。
かの者の悲願はお前たちの解放も含まれるのだから・・・自分がどのようになろうともな・・・』
慟哭の輪が広がった。
ニドへグの名を呼ぶ悲しげな声・・・
その声を人伝に《王の進軍》で聴きながら・・・口をAの字にして大泣きするものがいた。
ゴブリンキングだ!
『おえぇ~~~ん!!んいやぁぁぁ~~~ん、かわいそうで怒れな~~~~い!!』
ば・・・
バ・・・
バカ。
お人よし。
などという思念が流れてくるが、嗚咽は収まらない。
皆殺しもやむなしと思っていたゴブリンキングの配下の者たちも王の嗚咽にため息がてらそうだよなぁ~そういう人だよなぁ~と諦めが入る。
『ゆ~るす~。配下になるなら。許す~!!』
『勝手に決めるなぁ~!!ニドへグはどうすんのよ?』とメアリー
『ニドへグ以外は許す~。』グスグス
『なるほど、ニドへグ以外は許すと・・・』マイオはゴブリンキングの配下の者たちから耳打ちでその話を聞いた。
『長老。如何にする?』
『我らは、かの者たちに身を寄せたいと思います。
それしか我ら生き残るすべもありません。
そうせねばニドへグが哀れ。
そして、我らはあの者の諫言に乗りこの地を襲ってしまったそれにより数をさらに減らしてしまった。
さらに、もはやこの地で我らが許されることはない・・・この龍の大陸の外に生きる場所を得なければならぬとするならば、かの者を頼るしかない。』
『理屈の終着はできたか?』と、マイオ。
うなずく長老。
『お前たちにできる私の助言もここまでだ。』睥睨する人の姿の龍達を見つめた彼女の顔は優しかった。




