ゴブリンキングの輻輳 その15
サワは師匠であるマツハに相談していた。
自分に魔力があるのはわかるんだけど・・・
詠唱も下手。
印結んだり杖を振るうと骨が折れる。
これで大丈夫なのか?
師匠のように魔法が使えるようになるのか?
自己否定で自信をなくしていくサワに対していつも通りの無表情ながら
『・・・・・自信を・・・・もて・・・・・・・一番強いのは・・・・・仲間や友を守りたい・・・・・・願う・・・・・心・・・・・そう・・・・・心の魔法・・・・・・。』
『心の魔法?あたちにもありますか?出来ますか?』
『・・・・・きっと・・・・』力強く頷くマツハ。
それを見てパァッとやる気に満ちた顔に戻るサワ。
そんなのあるの?
心の魔法って?
ポーとメアリーに聞いたら。
『そんなのあるわけないでしょ。神聖魔法だっていろいろと神様とのお約束守らないといけなかったりするし。まぁ、心のありようっていうのも影響するんだろうけど。
マツハが使ってる魔法はもっと体系がかってて、学問に近いんだから・・・でも、元気になったみたいだからいいか。』
『だな~』
『ですね~』
なんだろ?マツハって・・・かなり、師匠に向いてる?
カリンといい。
今度はどんな凄い魔法使いになるんだろうか?
そのカリンとおとも?のエッジだが。
冒険者としての登録も終わり。
今は例の冒険者たちと一緒に依頼を請けて仕事をしている。
男の冒険者と手をつないでトコトコ歩くカリン相変わらずの無表情なんだけどうれしげに尻尾は振れている。
それをほほえましく見ていた魔法使いの女冒険者が『ねぇ、エッジは何で家を出たの?』と聞いた。
『ん?このまま家にいたら俺死んじゃうかなぁ~って思ったから。
朝、とーちゃんと兵士のトレーニングに混じって、俺とーちゃんの息子だからすっげー厳しい感じで・・・魂がちょっとでかかったところで終了で。
かーちゃんに昼飯食った後、強い獣は崖に子供を落として這い上がったものを育てるっていうので獣より強いあなたなら毎日こなせるはず・・・って、毎日落とされたんだよね~だんだんすげー崖に連れて行かれちゃったりしてさ、この次行くとこでは帰ってこれるかなぁ~っとか、思ったし。
とーちゃんと訓練してる最中にちょっと本気になった魔王状態のとーちゃんに殴られて首があさっての方に曲がったのを覚えてるんだよね~、その後なんだか知らない川の流れてる良い匂いするところに俺立っててね、川の向こう側にぜんぜん知らない白いひげ生やしたシワシワのゴブリンのじーさんが手招きしてたんだけど・・・あっち行ってたらどうなってたんだろうなぁ~、目が覚めて、とーちゃんに死ぬかと思ったよって言ったんだけど・・・・うむ、ちょっと死んでたなって軽く言われた。
その後崖におっことされたしね~。
だからね、武者修行してくる~って言ってカリンねーちゃんについて来たんだ~(ぼそっっと、カリンから『邪魔。』て、聞こえた気がしたが・・・・)
まぁ、二人とも仲いいから、今度戻ったときには、おとーとか、いもーとができてるんじゃない?』
と、軽く答えた。
かなりドン引きした女魔法使い。
『なんかすごい家だね。』と言った。
脇にいた大盾を持った重戦士が
『まぁ、お前が強い理由がなんかわかったよ。なにせ、冒険者としてのレベルが1なのに・・・・一人で盗賊団つぶしたり、あの高レベル冒険者でも嫌がるギルベアの巣に突撃したり・・・一から戦い方を教えないといけない。』
『あれ?だめなの?』
『『『『『『駄目だろ!!』』』』』』
『死ねばいいのに・・・・』とカリンが言ったとか言わないとか
『へ~?』両手を頭の後ろにもって行きながら口笛を吹くエッジ。
そのまま幸せそうな前を歩く二人を眺めるエッジ。
まっいいかとエッジは思った。
東の暗い森。
ボロボロになったマントをつけた片目のハイボアオークジェネラルが兵を引きつれ移動していた。
兵と言っても皆みすぼらしく疲れ果てていた。
人族や多種族に追われ逃げ回るのを常にしている彼らは今もひとつの町を襲い食料を得たが追われ逃げる途中であった。
次々と打たれ死んでいく者達を見ながらも生き残り復讐を果たそうと意思を強く保とうとする。ゴブリンキング!奴さえいなければ・・・・。
が、彼の精神の疲労ももう限界なのかもしれない。
そこに空から何かが舞い降りた。
それは災い。
彼はその姿を見て相手の存在が恐ろしいものであることには気がついた・・・・
魔王アーグリオだった。
下っ端の彼はアーグリオと面識がなかった。
『ついに、我も終わりか・・・』
睥睨するアーグリオ。
怯える彼の兵達強行しないのは彼の教育がいいためなのであろうか?
ハイボアオークジェネラルは残った目をくり貫きアーグリオにさしだした。
アーグリオはムッと嫌な顔をしたが・・・
『せめて・・・我に残りし光をあなたにささげる代わりにこの者達を見逃していただけないか?』
アーグリオは血に塗れた目に魔法をかけると目は掻き消えた。
そして、ハイボアオークジェネラルの額に魔法を刻み込んだ・・・するとそこに目のようなものがぎょろりと開いた。
『な、なぜ光が・・・見える。どうして・・・』
『私もオークエンペラーに組していたことのある者・・・どうだ、私の配下にならないか。なーに、一つ私の頼みを聞いてくれればいい。
その後はお前達の自由でかまわない。』
『その頼みとはいかなるものか?』
『臆病な檻に閉じこもった獣を檻の反対から脅かして欲しいだけ、簡単なことだよ。』
そういって、魔王は天使のような笑みを浮かべる。
悪魔は聖者をそそのかす時この世のものと思えぬほどの笑顔を見せると言うが・・・・まさにそれがそれだった。
ティーカップオーク達は今第二ゴブリン城にすんでいる。
小さな家を中庭に作って住み始めた。
まぁ、大半はダニーとメアリーの差し金なんだがなんとなく小さな村が出来上がってきてる感じだ。
大人の半分の半分程の大きさのおしゃぶりをくわえたティーカップオークと一緒に木の実を拾ったりしている光景は微笑ましい。
子供も拾っているが何拾ってるやら?
そういうのもかわいいんだけどね。
そのなかの一人がわしのもとに来て。
『増えた!』と自信満々に答えたのでお菓子をあげて誉めておいた。
増えすぎは困るけど少しこいつらの気もまぎれるだろう。
オークエンペラーによって起こされた大陸の西側の荒廃は復興の兆しはあるものの、各強国はなぜかその資金の動きは復興より海岸線に砦や塔の建設へ、要塞めいたものまで作っていた。
明らかに不自然な動き。
まぁ、うちもいきなり巨大な船作ってるわけだし・・・・
その辺はなんかの理由があるんだと思うんだよね。
メアリーやポーに聞くと。
『だってね~』
『ですよね~』
って感じだ。
『まぁ、察してみたまえ。』などと機械公にまで言われる始末。
何が起きるんだろうか?
鉄の船も木の船ももう出来上がっている。
浸水式と運用計画の策定作りに3人とも忙しいみたいだ。
他国との交渉もあるから大変なんだろうなぁ~。
そう言えばなんかダニーがこの頃いない気が・・・・その流れの忙しさで飛び回ってるんだろうなぁ~。




