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ゴブリンキングの輻輳 その11

玉座に深々と背を任せ。

左手の人差し指を頬に当て小首をかしげるような姿。

右の親指は口元で噛むようなそれでいて力がそれほど入っているわけではない。

黒いボンテージから覗く圧巻な体型とその白くきめ細かい肌・・・その身を緩やかにくねらせ・・・うすく香る熱情を誘うようなそれを撒き散らす、くねる髪からもそれとは異なる劣情を誘う香りを撒き散らしている。頭には巨大な羊のような巻き角が生えていて、黒くうねる髪からのぞく尖った耳には無数のピンクの石の着いたピアスがついている。

足には光を反射させて光る銀の刺繍の入った黒いなめし皮で作られたヒールの高いブーツを履いたほとんどむき出しの足を組んでいる。


ここは、魔王ローレンティア・アキシラリスの居城、謁見の間・・・・

ため息をつく当の主。

あのお方のことを思うと胸が高鳴る・・・

『これは・・・・恋?』

一斉に彼女に視線が注目したうえに、『えっ?』という声がその場にいたものの口から同時に発せられた。

かの魔王ローレンティア・アキシラリスは、自分が気に入った異性を《誘惑チャーム》と《快楽プレジャー》で手に入れてきた。

そしてその者達をはべらしてきたのだ。

さらにお気に入りを後宮に集め夜毎夜毎に淫らな行いをして楽しんでいた。

彼女の部下達は信じられない言葉を聴いたことになる・・・・

恋だと?

我々に恋し集めたのではなかったのか?

愛はないのか?


もちろん魔王ローレンティア・アキシラリスに彼らへの愛は本物だ。

だが、それは物に対するそれと変わらない・・・

異性として認められたものではないのだ。

彼女の収集癖を満足させたに過ぎない。


古株の魔王が・・・・なぜか姿は上級執事然としているのだが、これも彼女の趣味なのだろう。

『今度はどのようなお方なのでしょうか?』半分いつものこととあきらめもあるが、なんとも信じられぬ言葉を聴いたことから確認もかねてだ。


『太ったさえないゴブリン・・・・のように見える男じゃ。』

今度はそこにいた全員から『はぁっ?』っ問いう声が聞こえた。

また、後宮を増築せねばならんのか?しかしなんでゴブリンなどに?疑問が山済みになる者達がいる中、上級執事然とした古株の魔王が。

『今までと同じようになされば、容易に手に入れられますでしょう。後の手配はわれらがいたしましょう。』と、言った。


『それが、駄目なのじゃ!どうしたら良いか?どうしたらわらわの気持ちをかの者伝えられるのか?』


『?』もはや声にならない。

乙女じゃあるまいし。

今まで我等をたぶらかしてきた様になさればいいだろうと思ったのだが・・・

その言葉の裏に危険を察した上級執事然とした古株の魔王。

魔王にも大魔王にすら有効なあの《誘惑》《快楽》が効かない相手とは・・・

危険すぎる早く処理するに限る。

『ちょっとお待ちください。私に策があります。』と一度、謁見の間を去る上級執事然とした古株の魔王。


ゴブリンキングのあの声、姿を思い出し身もだえするローレンティア・アキシラリスにはそれほど長い時間ではなかったようで・・・


戻ってきた上級執事然とした古株の魔王は二つの瓶を持っていた。

両方に書かれているのは、何だか読めない文字とともに目に付くのは危険を表す髑髏マークだ。

瓶の口の部分に番号が書かれている。

1と2と。

『それはなんじゃ?』期待に目を光らせて聞く彼らの主。

『媚薬にございます。1のほうを飲ませて効かなければ2のほうをお試しくださいませ。それで、あなたのお求めになるものを手に入れることができるやも知れません。』

『しかし、わが能力が効かぬ相手にそのようなものが効くのか?』

『この媚薬はかの魔王の後宮にあったといわれる何者も抗えぬと言われるものを、先代が手に入れていたものでありまして・・・1より2のほうがより強力なものとなっています。』


『そうか。』とパッと晴れやかな顔になるローレンティア・アキシラリスそのはにかみを含んだ笑顔に、上級執事然とした古株の魔王ですら頬を赤らめた。

それに伴い胸にチクリと痛むものを感じる。

なぜなら、1のほうの瓶は確かに媚薬ではあるが、かのお方の能力にはかなり及ばないものなのだ。

2の瓶は毒だ。

かのお方の能力の効かぬ相手など危険以外の何者でもないからだ。

主を騙すことになるが国を護ることを思えばいざ怒りを買ったとしても自分の命で済むなら安いもののはずだ、そう考えたうえでの行動だ。


それには気がつかず浮かれる主に頭の痛い思いも感じながらも・・・

『その者を離宮にお招きになってはいかがか?』

『何の用事もないのにか?』

『新たに得た領土の運営方法などを相談したいなどと理由をつければいいでしょう。』

『うんそうじゃな・・・そうじゃ。そうしよう。』と一人ごちる主。

もはや恋する乙女だ、周りすら見えていないのであろうな。

せめて私だけでもしっかりせねばと心に誓う上級執事然とした古株の魔王だった。



早速、使いの者を出した。

使いの者が爆裂森で干からびているのをハゲ奴隷魔王に発見され手紙を持っているのを見つけられる。


しばらくして、ゴブリンキングのもとに手紙が届いた。

グロスバズォールの城下町だった巨大クレーターができた更地?の運営方法について相談したいとのこと・・・などなどが書かれていた。

待ち合わせ場所は現地でだそうだ。


さらに付け加えられていた文章は一人で来てネ(うふ。)だった。



干からびていた使いの者が発見されるまでに時間がかかったからだろうが、手紙をもらったときが当日で時間がない。

どうするか、相談する時間もないのでメアリーに強欲をもらって飛び出すゴブリンキング。

何で強欲もらうのかって?そりゃー魔法が使えないとあの広い魔界を移動するなんて考えられない。

わし元の姿だと魔法使えないし。

『とりあえず、状況だけ聞いてこの間みたいに変なこと言わないようにね~!』と手を振って見送るメアリー。

この間のこと?

全部あげちゃったことかな?

まぁいい。


魔界に行く扉を護っている守護部隊に挨拶をして中に入る。

ハゲ奴隷魔王達がイグドラシルの実と種を集めながら魔素喰らいたちに追っかけられているのをほのぼのと眺めながら移動していた。


なぜかスパイクがいたのを発見。

何をしているんだろうと思っていたら。

魔素喰らい達がスパイクの周りに集まって何か小さい粒をスパイクと交換し合っていた。

何をしてるんだろうと思っていたんだが?

スパイクも魔素喰らい達も喜んでいるみたいだからいいか。

あっ、いけね。

早く行かないといけないな。


そして、わしはコレ(そろそろ別の名前のほうがいいよな)になっている。

コレ=魔王ってことにしておくか・・・またすぐ変わるかもしれないけどね。

人サイズの方がこういうときにはいいだろう。

この間のでっかいのでは話しもできないしな。


などと思いながら飛んでいたら・・・ついた。

巨大なクレーターの真ん中なにやら、巨大なテントが張られていた。

そこかな?と、わしは降り立つとクロイツみたいなカッコの連中が・・・仮面はつけてないけどね。・・・・が、甲斐甲斐しくわしをどこかに連れて行く。

でっかいテントの中には煌びやかな装飾の施された空間の真ん中に寝台に寝そべるローレンティア・アキシラリスは、体をマッサージしてもらいながら何か飲み物を飲んでいた。


わしに気がついたローレンティア・アキシラリスはマッサージしてくれていた者を跳ね飛ばすように飛び起きてわしの元に走ってくると。

わしの両手をつかみ。

『よくぞ。よくぞ来てくれました。』その後繋いだ手を見て、急に耳まで赤くなって雑に放り投げるように離した。

なんだ?わし嫌われてるのか?どうでもいいけどね。

『で、なんの話だっけ?』

どうしたのかしばらくボーっと、わしの顔を眺め続けているローレンティア・アキシラリス。

睨んでる?なんだろちょっと怖い。

頬を赤らめそれだけでなく、むき出しになった肌も何だか赤いぞ。

なんだろ熱か具合悪いのかそれならゆっくり休め。


『ローレンティア・アキシラリス様』とそっと耳打ちをする上級執事然とした古株の魔王。

その耳打ちで何を言われたのかは知らんが、ハッとするローレンティア・アキシラリス。


『そ。そうでした。外の状況を見ていただいた後、わらわの離宮へ行ってお話しを・・・』

ふんふん、ひどい有様だよねココ。

まぁ、わしがやったんだけどね。

ココ以外のとこってどうなってるんだかもしらないけどね。


しばらく、ローレンティア・アキシラリスについて行って外の様子を見る。

あっ言っておくけどわしこいつの名前呼んでないからね。

こんな名前覚えられると思ってるのか?

わしだぞ!

分かるよな。

文章的に誰がしゃべったか言うためにだなぁ~・・・どうでもいいか。

あちこち連れまわされた後。

彼女に手を引かれ空を飛び彼女の離宮とやらに移動する。

残った執事とテントはどうするんだ?

聞いてみたら。

『あの?二人で話を・・・』とか言うので、そうなの?とか思いながらつれられていった。

魔界なのに白亜のドームの建物で、あちこちから清らかな水が流れなんともいえないような香りのする花を咲かせた木や草がそよ風に揺れている。


ガクガク!

なんですか?

この違和感。

大体あなたと私にこの聖なる空間のようなとこ似合いませんよ。

そうドロドロした感じのさ~。


『どうぞ。』とか、なんですかその目を伏したその姿は・・・

なんかの策略ですか~!!


きゃ~!!わしなんかされちゃう!!こわいよ~!!!

だれか~!!!

どうしたらいいの~?!!

あっ、念話すればいいのか・・・メアリーさんどうしたら???

まぁ、話を聞いて来い!!つーつーつー!!って、おぅい!!

なんですか?

わし、王様よ!

聞いて~!!

王様なのよ~


なぜかうやうやしく案内されてなんか立派な部屋につれてこられた。

誰もいない・・・二人っきり?


上座がありそこには段差があり立派な玉座が据えられている。

下座にテーブルがあり向かい合わせに座るようにセットされている。


『おっおつかれでしょ~。なにか~のみものでもぉ~』なぜか上擦った声でローレンティア・アキシラリスが言う。

怪しいがココまできたら諦めるしかないだろう。

なんだかんだいって飲み物が出てきたので飲むことにしたなんだか怪しい色をした飲み物だがいいか。

においもすごいんですけど・・・・

ニゴリと笑いながら勧められる飲み物をわしは飲んだ。


うっ。

まず・・・・ぐっ。

ぐはっ!!(吐血

あれ?

まじ、毒じゃない???


わしが血を吐いたのを見て自分が2と書かれたほうの瓶の媚薬を飲ませたことに気がつくが毒を飲ましたとは気がつかないローレンティア・アキシラリスは、不用意に事態の把握のために近づいてくる。


毒か~しまった。

あ、意識が・・・・


というわけで、わし意識ないんで起きた事を覚えてる範囲で~

毒が入ったことに気がついたグラトニーが毒を食い始めて消化を始める。

毒を飲まされたことに激怒する憤怒のコーマ。

今までいるのかいないのか分からなかったはずの強欲のコーマがすべてを我が物にする~とか叫びだして・・・・


ここで暗転した。


気がついた時。

わし上座の玉座に座ってて薄ら笑いを浮かべ頬杖をつき、足を組みながら何かを見つめていた。


真っ赤な池のようなものが見えたが、それは血と何かの体液に誰のか分からぬ肉片の浮かぶ、そこに身を沈めるようにしている裸のローレンティア・アキシラリスが青白い肌を浮きたたせながら『あ・・・・あ・・・・・・あ・・・・・』とかうめき声とも分からぬ声を上げてヒクヒクと全身が痙攣していた。

目も虚ろでどこにも焦点が合っていない。

口もだらしなく開き・・・息と一緒に声が漏れる。


えっと?何が起きたんでしょうか???

ちょっと怖いので。

『なんかわかんないけど落ち着いたらまた話そう。』と言い残してわしはその場を後にした・・・・逃げたんじゃないよ。


このことが後でもっと大変なことをわしらにもたらすとはその時わしは知らなかった。

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