6月2日 その五
『じいさん、俺も薬を作れるんだが、俺にも作れるか?』
「分からんが、薬を作れる者が増えるのは大歓迎じゃ。」
『分かった。どうやって作ればいいんだ?』
「作るための道具は、ポーションを一瓶、〔魔粉〕を一包、上薬草を一枚じゃ。」
『〔魔粉〕ってなんだ?』
「〔魔石の粉〕じゃな。」
『……〔魔石〕ってなんだ?』
「…お主外来人か?まぁいい。この世界には魔物と呼ばれる魔法の力を受けて進化した動物がおる。その物らの原動力が〔魔石〕なんじゃよ。」
『成る程。』
「因みに罹った者はどれぐらい居るか分かっておるのか?」
「確か12、3人だ。」
「そうか。儂の手元には10包分あるから、野犬の魔石を5個程取ってきてもらえるか?」
『分かった。』
「俺も手伝うぞ!こいつだけだと出来そうもないしな!」
『野犬ぐらいたおせるっつーの。』
俺は少し不機嫌になりながらも、魔石を手に入れに向かった。
「ぁあーーちょっと待て!ナイフで刺すな(・・・・・・・)!」
『え?』
目の前の草原で出てきた野犬共を後ろの奴に見えるように瞬殺し、魔石を手に入れようとナイフで刺そうとしたときそう言われた。
『なんでだ?』
「そのナイフって、〔剥ぎ取りナイフ〕だよな?」
『あぁ、それが?』
「俺たちがそれを使わない理由って何だと思う?」
『それ以前にお前らこれ持ってたのか?』
「あぁ。105年ぐらいまえに発明されたらしいぞ。」
『マジか。』
てっきり俺らしか持ってない物だと……
「それで分かったか?」
『ごめん。分からん。』
「このナイフ、最初の頃はすごい便利な物だったんだよ。ただ…」
『ただ?』
「努力に対して報酬が少なすぎるんだよ。」
『あぁー。』
ゴールデンレトリバー程の大きさを倒してもナイフを使えば取れるのは少しだけ。
確かに報酬が少なすぎるんだな。
「それにだよ?〔魔石〕だってきちんと解体すれば必ず手に入るのに、
ナイフ使っただけでほぼ手に入らないんだぜ?殆ど誰も使わなくなったよ。」
『〔魔石〕ってそんな簡単はに手に入るのか?』
「魔物には必ず要るからな。ただ、ここら辺で手に入るのはかな〜〜り質の悪いやつだがな。」
『それでどうやって手に入れればいいんだ?』
「お前に出来るか分からんが、そのナイフを使わずにこいつらを捌く。…出来るか?」
『犬は(・)出来ない。教えてくれるか?』
「おうよ!」
こうして犬の捌き方講座が始まった。
『そうか。鹿と同じような手順でやればいいのか。』
講座が始まってから10分ぐらい経ったころ、俺は一人で犬を捌けるようになった。
「しっかしかなり上手く捌けるようになったな。」
『ああ。他の動物なら捌けるようになったからな。』
かな〜り苦労したからな………。
「とりあえず[魔石]が5個集まったが、どうする?戻るか?」
『もう少し集めておこう。病人が増えてないとも限らない。』
「分かった。あと10分くらい粘るか。」
このあと、追加で5個手に入れた俺は薬を作るために爺さんの居る所へ向かった。
帰る途中の話
「それでどんな感じで捌けるようになったんだ?」
『俺の叔父さんが野生動物が増え過ぎないように減らす仕事をしているんだが、俺が叔父さんの家に行くと必ず兎やら猪やらを「捌いといてくれ」って放り投げられてな……』
「お前…頑張ったな。」