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黄金の大地  作者: k0uk1s1n
9/22

マゴコロ

朝食

食堂でキツネうどんを食べる本田の前に玉がやってきた。

玉「最近、何をやってるんですか?部屋で。うわさになってますよ?」

本田「親がやってた宗教の読経だよ。外に漏れてるのか?」

玉「はい。悪い噂になってます。」

最近、他の隊の奴らがよそよそしいのはそのためか……

「気をつけるよ。」

本田はそう言うと、スープを飲み干した。

玉「それはそうと、本田兵長は甘いのは大丈夫ですか?」

何故?甘いのはタバコの次に好きさ。本田はテレビの報道に目がいった。玉も視線をテレビに移す。

玉「……今度は、不審船ですか。」

本田「この前は覚せい剤の袋だっけ?最近続いてるなぁ。福岡のヤツらも大変だろうね。」

玉「袋の中身、小麦だったらいいのに。」

?……変な奴。


ハンガーでその謎は解けた。

摩耶「あー、もうそんな時期かぁ、玉さんバレンタインに色々作って隊員達に配るんだよね。」

資材コンテナの上で摩耶が足をプラプラさせている。

西尾「お前は今回は作らなくていいぞ?」

摩耶「そんなに、美味しくなかった?僕の?」

西尾「焦げてたからな。」バタン。着替え終わった西尾がロッカーを閉める。

伊勢「摩耶は純粋に戦闘支援にOSもメモリも特化してるからなぁ。玉みたいな芸当は無理さ。」

ベンチの整備長が靴を磨きながら言う。

摩耶「僕も自信あったんだけどなぁ。ショボーン。」

本田「そこまで言うならリベンジしてみればいいんじゃないか?」

コンバットスーツに着替え終わった本田は摩耶に向き直ていった。

摩耶「やったね!隊長、今度デート行こうよ!材料の買い出しにさ。」

あ、藪蛇やぶへびだったわ……


休みの日

本田に合わせて摩耶も急遽休みを入れた。

残された西尾は今頃、たくさんのロボットと戯れていることだろう。

摩耶「お待たせー。」

普段、男っぽい見た目なのに、今日はかわいいワンピに着替えた摩耶。本田は一瞬ドキッとした。ギャップ萌えと言うやつだろうか?

軍用車に乗り込む。コレなら重いアンドロイドを乗せても、運転に支障はない。

摩耶「しゅっぱーつ!」

助手席の摩耶はウキウキである。

バレンタインだからチョコクッキーだろうか?

まぁ、市街にでるまでの道中できけばいい。


摩耶は今回、チョコレートに挑戦するらしい。

摩耶「それでなんだけど、隊長がもしよかったら、作るのも手伝ってくれないかな?」

あ、俺が求めてたのはコレかもしれない。本田は承諾した。

本田「じゃあ、溶かしの時に焦げないように見とくくらいでいいか?」

あまり手伝うと、彼女のやる気を削ぐ。

摩耶「やったね!」

頼られる、必要とされる。前のところとは大違いだ。

義勇軍あがりは学がない野蛮人。

リユースは公金で生かされてる障害者。

向けられてたのは恨みつらみ、ねたみそねみ、差別の視線だった。

本田は強くハンドルを握りしめた。


熊本の業務スーパーで買い出しを手伝う。

本田は摩耶の何気ない女らしい仕草に始終ドキドキしていた。

『あれ?俺ってアンドロイド達みたいなのも好きなのか?』

普段、豊満な女性の薄い本ばかり見てたのに。

摩耶のような胸の小さいのもいけるのか。意外だった。 

ー胸の大小に貴賎なしー 本田は一つ悟りを得た。

摩耶「?どうしたのさ、隊長?」

本田「いや?何でもない。コレで全部か?」

摩耶「配るのは西尾と隊長と整備長の伊勢さんくらいかな?会計に行こう。」


深夜、

営業の終わった食堂の厨房を借りてチョコ作り。

そこには玉も綾も他の隊のアンドロイド達もいた。

本田「結構な数いるんだな。」

玉「そうですか?他の駐屯地より配備数は少ないと聞いてますよ?」

いや、バレンタインの行事をやる、アンドロイドが多いことが驚きだ。彼女たちの和気あいあいとした雰囲気も。

綾「前の駐屯地では、なかったんですか?」

幼女体型のアンドロイドが顔の所々にチョコを付けて

ボウルの生地をミキサーしている。

んー、場違いな気がしてきた。

本田「俺はもらってなかったなぁ。」しみじみ。

他のアンドロイドのトースターでのクッキーの焼成を見てやる。何かしていないと、恥ずかしさで死にそうだ。

『みんな、アンドロイドなんだろうけど。なんだか女性専用車両に間違って乗ったときのような感覚だ。』

本田は遠い日の記憶を思い返していた。


玉「皆さんできましたね!」

本田「片付けも手伝うよ。」でないと、明日の朝飯がなくなりそうだ。

摩耶「だいぶちらかしたからねー。」

体中、チョコまみれの摩耶は言う。

アンドロイド達「「本田兵長のお陰で、うまくいきました。ありがとうございます!」」

んー、褒められる、感謝されるのはいいもんだ。

玉もニコニコしてそれを見ていた。

バレンタイン当日が楽しみである。


摩耶「はい!これ!」

西尾「こんどはうまくできたんだろうな?」

摩耶「今回は大丈夫。」絵に描いたような、えっへん。

隊長も!アンドロイド達がそれぞれ、男性隊員に配っている。

?少子化……?いや、今は考えないでおこう。


狭山「隊員達の使命感、駐屯地の結束力。そういうのを高めるには、こういうイベントが必要なんだよ。」

唐突な、種明かし。しかも、苦手な相手から。

本田「なるほど。」やめてくれ、昼飯が不味くなる。

食堂で偶然(?)出会った狭山大佐は言う。

狭山は軽めのサンドをさっさと食べ終えると栄養ドリンクを開けた。オットピン?

狭山「義勇軍では習わないだろ?いい経験になったな。」

本田「……そうですね。」本田はトレーを食堂の返却口に持っていった。

玉「あ、いたいた、兵長。はい。」

本田「ありがとう。」手渡しでもらうチョコ菓子。

確かに胸の奥がじんわりした。


その夜、本田は夢を見た。

後頭部に、暗闇から伸びてきたいくつもの白い手が、

コードを指していく。痛みはない。そういう、感覚があるだけだ。

変な夢だ。

脳が白い膜で覆われていく。それが終わると視界が開けて何かの流れの上にいる。

なんなんだ?


次の日

いつもと変わらない。食堂。いつもと変わらない笑顔を向けてくれる玉。

玉『よかった、うまくいって。この人にはあれが必要だった。』

?玉は口を開いて俺に話をしてない。どういうことだろう?

本田「玉、何か言ったか?」

玉「?いいえ?」

ハンガーでもいつもより騒がしく感じる。

ホントは時折、機械音や、隊員たちの談笑が聞こえるだけだと言うのに。

摩耶『隊長、僕のこと、可愛いって思ってくれたかな?』

!?いや、彼女は口を動かしてない。

本田「俺は、どうしちまったんだ。」

ホンダの独り言を横で聞いていた西尾が心配して声をかけた。

本田「大丈夫さ。」

西尾「顔色が悪いぜ。医務室行ってこいよ。大将。」


医務室で横になりながらスマホで自分の症状を調べる。

本田「コレ、統合失調症っていうのか……」

幻聴優位の幻覚。問題行動をしないように注意しないとな。

本田はそのまま目を閉じた。




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