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黄金の大地  作者: k0uk1s1n
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ヤマイヌ[後編]

暗い山の中、増援の到着を待つ隊員たち。その足元には、

撃つ前から死んでいた野犬が転がっている。

「まさか、ロボット達の音、幻聴じゃないよな?」

Bチームの隊員が不穏な一言を言う。恐怖は伝播する。

集団ヒステリーのもとだ。

指揮官が隊員たちの私語をやめさせる。恐慌状態になった隊は全滅する。本田は内戦中、幾度となく、そんな光景を見てきた。

タバコが吸いたい。自分を落ち着かせるにはソレが一番だ。内戦中ならできたものを。今は自衛隊の正社員だ、そうは言ってられない。

摩耶「あ、きたきた。」

増援のロボット達の頭が見えた。

西尾「ったく、おせーな。」

摩耶「足場が悪いからね。滑落したら大変だよ、重いし。」

隊員とのコミュニケーションをとるためにアンドロイドは高性能なAIを積んでいるが、その分、ロボットは簡単なAIしか積んでいない。予算の都合上というやつだ。仕方ない。

『目標、視認。随伴、開始。』

ロボットの機械音声がゆっくり聞こえてきた。

指揮官「Bチームが先行する。Cチームはロボットとバックアップ。行くぞ。」

Bチームが山をもぼっていく。

途中、ゾンビ犬が数体、側面から襲ってくる。そっちを向いてる間に、時間差で反対方向から。

「コイツラ、統率が取れてるぞ。」

Bチームの隊員が漏らす。野犬の反応がある付近に近づくにつれて、低音の耳鳴りがしだした。

???「こちらに来るな。」

頭の中に、誰かの声も聞こえだした。隊員達は恐怖で今にも逃げ出したかった。

指揮官「幻聴だ。しっかりしろ。」

もう少しで、到着する。

Bチームの隊員たちの様子が益々おかしくなっていく。

ある者は、泡を吹くように、息をし、また、

ある者は、頭を抱えて、その場から動かなくなった。

西尾も影響が出始め、何かをブツブツ言い出した。

本田「急ごう。」

早くしないとBチームが全滅する。


そこは開けた場所で、生きた野犬、ひときわ大きい狼犬を囲むようにゾンビ犬達が立ちはだかっている。その光景だけでも、気が狂いそうになる。

低音の耳鳴りは何種類も聞こえてくる。

本田達は狼犬を見るや、その場にへたり込んだ。

撃てない。体が動かない。隊員達は次々に倒れていく。

本田『あぁ、まずい……』

狼犬の瞳が赤く光る。ような気がする?狼犬の後ろから、得体のしれない、変なものが出てくる。

俺は、ゲ ン カ ク ヲ ミ テ イ ル。思考が停止する。

横を見ると西尾やアンドロイドの摩耶も倒れている。

後ろから来ていたロボット達は立ったまま機能を停止していた。

そこへ黒い制服を着た男達が山を登ってくるのが見えた。

「いたぞ。やはり端末だ。」

た ん ま つ?これは幻覚なのだろうか?男達は滑るように移動して、本田を通り過ぎて野犬と対峙した。

本田「……」

本田はその光景をよだれを垂らしながら見ていた。

黒い服の男達が手で何やら形を作って、何かを唱え始めた。

タ カ マ ガ ハ ラ 。

その言葉を最後に本田は気を失った。


次に、本田が目を覚ましたのは、病院だった。

ここは?寝たまま、首だけであたりを見回す。

ナース「あ、起きられました!先生!」

バイタルチェックをしていたであろう看護師が医者を呼びに部屋の外に出ていく。まだ、頭がボーッとする。

ここは病院の個室?次第にはっきりしていく頭が自分の今の状況を把握し、気を失う前に見た光景を思い出す。

医者が言うには、

山中で倒れていた所を登山客が見つけて、病院に運ばれたらしい。

本当にそうなのか?

医者「……だいぶ混乱はしていますが、貴方のバイタルは安定してますので、数日で退院です。」

本田「あ、はい。そうですか、ありがとうございます。」

あの作戦は?ゾンビ犬は?ロボットや他の隊員達は?

本田「あの、他の隊員達は?」

医者「?運び込まれたのはあなただけだ。山のガスに当てられて、幻覚でも見たんでしょう。心配ならメンタルチェックもしますか?」

いいえ。本田は断った。

そこへ見舞いと評して私服の狭山が来た。

人払いをすると狭山は本田の横に座り、状況を説明した。

他の隊員は特別な処置が必要なため、他の病院に運ばれた事、

ロボットは○○技術の耐久テストのために送り込まれ、事後の解析のためにラボに送られた事、

西尾、摩耶も復帰の見込みだという事、

?野犬は?あの男達は?

本田「大佐。野犬達はどうなりましたか?」

狭山「いい質問だ兵長。いいか、お前は何も見なかった。そうだろ?」

そう言われるとそうかも知れない。

オレハ、ヤマ ニ ハイキング ニ デカケテ タオレタ。

狭山「そういうことにしとけ、悪いことにはならない。」


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