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黄金の大地  作者: k0uk1s1n
5/22

トカイ

駐屯地の端にある喫煙所。本田はそこのベンチでタバコの煙とのどかな田園風景を見ながらボーっとしていた。

米の収穫は終わり、蕎麦やネギ、ジャガイモなんかの作付けを作業ロボット達がやっている。

外は昼間でも風が冷たい。

田畑は基本、食料品が栽培される。嗜好品はほんの僅かだ。なので紙タバコは高級品になった。

そんな物に給料の大半を費やす愚か者はこの駐屯地には本田しか居なかった。

アンドロイド達は鼻のフィルターに匂いが残るからと

避けている。ここには本田しか来ない。特等席だ。

本田「もう少し、安くなんねーかな。」

吸った煙を空に吐き出す。

本田「そろそろ行くか。」吸い終わったフィルターだけのタバコをポケットの吸い殻入れに入れた。


今日は非番、駐屯地の外に行ける日だ。隊員やアンドロイド達に買い物を頼まれている。

駐車場まで歩いて、SUVに乗り込む。

本田「……熊本かぁ。」


都会、熊本。内戦中、地方のインフラは止まった。

水も電気も止まり、火災が発生しようものなら消防車は来ない。瞬く間に燃え広がった。

人々はかろうじてインフラの維持されてた都会に集まった。人のいなくなった市町村は放棄されるか、旧体制派の軍事拠点となってしまった。

本田「あれから10年。」

九州は本州に比べて被害が少なかったはず。本田は熊本がどんなところか楽しみにしていた。

本田「なんだ?」

熊本へ続く山道で1代車が立ち往生していた。

本田「エンストかねぇ?」

ブービートラップ、そんなわけないか。とっくに内戦は終わってるんだ。残党はこんなところには滅多にいない。

SUVを止めて、顔を出して道を防ぐ車に声を掛ける。

すると見知った人が降りてきた。

狭山大佐だ。

狭山「本田兵長、いいところに来た。コイツを路肩に移動するのを手伝ってくれ。」

エンストして、基地に連絡を取ろうとしたが繋がらなくて、どうしようか思案してたらしい。

狭山「いやー、助かったよ、お前さんも熊本に行くんだろ?乗せてってくれ。」

当然のように、後部座席に乗り込む狭山。まあ、隣に座られても気持ち悪いだけだ。本田は愛想笑いで応えて、熊本に向かった。

狭山「兵長、熊本で何か予定でもあるのか?」

?変なことを聞くなぁと思いつつ隊員たちに買い物を頼まれていることを話す。

本田「いろいろ周るから観光にはなりますね。」

狭山「用事が済んだら、ちょっと付き合え。」

本田「はあ。」なんだろうか?断る理由もない、本田は了解した。


ー都会、熊本。大型ショッピングモールー

そこは普段、駐屯地で生活している者は、

吐きそうになるくらい人で溢れていた。

本田「なるほど、土日が空いてたのはそのせいかな?」

シフトの休みを入れる日、他の隊員達は平日ばかり取っていた。本田は土日空いてんじゃんラッキー位に思っていた。

本田『今度から、土日は避けよう。』

縦にも横にも広いショッピングモール。大体のものはここで手に入った。

本田「……もういいや。無理。」

すし詰めの、流れるプールってこんな感じなのだろうか?気疲れする。もう観光する気もない。


狭山「もう終わったのか?少し早いがまあいいだろう。」

待ち合わせ場所にはすでに狭山は待っていた。

近くの定食屋に入り、狭山はスタミナ定食、本田も勧められて同じ物を頼んだ。

なんでおっさんのしけた面を見ながら飯を食べないといけないんだ。

狭山の内戦の頃の武勇伝を聞かされて、内心うんざりしつつ本田は定食をかきこんだ。

狭山「お前を取って置きの場所に連れて行ってやる。」

今度は狭山が車を運転するらしい。本田は後部座席に座った。


ついた所は昼間から来るとこじゃない。見るからに大人のお店。

狭山「お前、大きい女性は好きだろ?今日はいるかな、あの子?」

本田「ソレ、報告書にあったんですか?」

狭山「まあまあ、そこは企業秘密さ。兵長殿。ここはうまくすりゃ、本○もできるぞ。」

店内に入り、嬢を選ぶ。

狭山「お、いるいる。この子にしとけ兵長。サービスもしてくれるぞ」

本田「はぁ。」

狭山「何、男ばかりの職場じゃないか、少しは羽目を外せよ。いや、ここでははめるのかな?」

卑猥な笑い方だ。反出生主義者でも溜まるもんはある。

ここは大佐殿のおごりということもある。

長いものには巻かれろ。自分のこういう権威に弱いところが好きになれない。

風呂行きのカッコで待機してたら、全体的に大きい女性が出てきた。バンキュボンより、だらしないお腹がいいんだ。

ことを済ませてピロートーク

衛生面は内戦前より格段に今の方が良い、とか。

太客はケモノのアンドロイドちゃんが皆持っていった、とか。

本田「戦後で市場形態がからりと変わったんだ?」

嬢「そうね、先輩からはそう聞いたわ。アンドロイドちゃん達が入ってきてどこも高級路線よ。」

アンドロイドは市販でもかなり高い、メンテナンスの経費も高い。

嬢「ねえ、お兄さん。今度はいつ来る?」

本田「さぁ?どうだろなぁ、シフトが決まり次第かな?」

嬢「お兄さん優しいからまたサービスしちゃうわ。」

そりゃどうも。本田は店の連絡先をもらい外に出た。

狭山は本田より後から出てきた。

狭山「早かったなあ、俺は兵長くらいの時は延長、延長で、何回戦もしたもんだ!」

本田「……今度はためてから来ます。」

狭山「あははは!そうか、そうか。」

ニコニコしている機嫌はいいだが、狭山の発する声は、

素の声、仕事中の声だ。

狭山「コレで君も、我々の仲間だ。」






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