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黄金の大地  作者: k0uk1s1n
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イコウ

本田「ココまで手の込んだ事するか?」

旅客飛行艇の座席の外の景色、眼下の日本の列島線を眺めながら本田は心のつぶやきを言葉にしていた。

綾「お父さん!楽しみね!旅行!」

隣の席の子役の綾はノリノリである。

綾「私もお外見たいみたい!」

座席を変わる、綾はコレが初めての駐屯地の外なのだとか。

???「いい家族を演じられてますよ。続けて下さい。」

本田のかけている伊達メガネから、演技指導役から指示が入る。本田は前にいるツアーガイドを見やった。目が合うと、ウィンクで返された。これは敵わん。

西尾のやつが長期で休みを入れてたから変だとは思ったけども、本部で辞令をもらったとき、安請け合いした自分が悪い。やるしかない。

日本の少子化。自衛官のなり手の確保がかかっているのだ。

本田「綾、お母さん(玉)は現地で待ってるそうだぞ!」

スマホの画面、用意されたものを見る。

綾「そうなんだ?」

本田「忙しいからなぁ、あいつは。」

東京から飛行艇で自衛官の妻のいる勤務地に、娘を連れて旅行に行く良き夫。と言う設定。いい家族を演じて、

それを見た学生たちにいい影響を与え、結果、人口が増やす。誰がこんな国策を思いついたのやら?

誰がこんな手の込んだ演技を考えたのやら?

本田「あの人、美人だよなぁ。」

ツアーガイドを見てつぶやく。

綾「こら。お父さん浮気はダメですよ。」

本田「分かってるって。」

綾「それなら良いのです。」

ワンピース姿の綾は可愛い。これなら確かに修学旅行の学生の目も引けるだろう。

本田と綾は目が合うと笑い合った。

宮崎の空港に飛行艇が着水する。磯の香り。内戦終結後、空港は自衛隊が接収、統廃合の後、ほとんどが農地に転用された。今は飛行艇の空港が主流になった。

土地の狭い日本、広い領海を活用しようって話だ。

何とも合理的な政策じゃないか。

いつの間にか咥えてたタバコに火をつけそうになる。

綾のジト目に気がついて、慌ててライターをしまう。

海が近いとついついタバコが吸いたくなる。

本田「ごめんなさい。」

綾「わかればいいのです。」

そこにツアーガイドから連絡が入る。

「奥さんと会ったら、抱き合ってチューしてください。」

本田は吹き出した。玉は知っているのか?

綾と顔を合わせる。綾も聞いてたのだろう、ソワソワしている。

バスは目的地の平和台公園を目指し出発した。


平和台公園の駐車場に玉の使っている乗用車が止まっている。

本田「……」

外で手を振る玉はきれいだ。既製品のアンドロイドにはない顔。

今更、そのことに気がつく。政策も業務のウチ。

飛び入りで企画されたものではない。

前からずっと続いてるのか。

本田「左遷の話、ちゃんと資料に目を通しておくべきだったか?」

意を決してバスを降りる。


キョトンとする玉を抱き寄せ、キスをする。

綾はその場でアワアワしている。ツアーガイドが小さくガッツポーズを取っているのが視界の端に見えた。

顔を真っ赤にした玉が本田の耳元で囁く。

玉「これ台本にありました?」

いや、アドリブだろう。ツアーガイドの思いつきだ。

本田「いや?今さっき言われたんだ。」

コレも、人口増加政策のためですもんね。

学生たちにはいい家族にうつっているだろうか?

本田と玉は綾を真ん中に仲良く手をつないで遺構を見て回った。


平和台公園、八紘一宇の塔は国威高揚のために整備され、てはいなくあえて遺構という形をとっている。

内戦の傷跡をあえてそのままにして自然に返す。

人の営みは自然の中の一瞬の出来事、今の体制を、平和を長く続けるにはどうすればいいかを、みる人に問いかける。

本田「さすがにクラスター弾は落ちてないよな?」

綾「それなら資料館にありますよ。」

本田「俺、あれ怖いんだよね。」

クレーターと壊れたハニワ、くずで半分、覆い隠された八紘一宇の塔はよく見ると銃痕だらけだ。

遠くからこちらを眺めるツアーガイドから連絡が入る。

ツアーガイド「いい絵になってますよ、あなた達。」

玉「コレ来年もやるんですかね?」

本田達は首をすくめた。


ツアーは無事に終わった。修学旅行客、学生たちは空港の近くのホテルに戻るらしい。本田達はここまでだった。ツアーガイドは引き続き修学旅行客に随伴するらしい。

ツアーガイド「今日はどうもありがとうございました!本田兵長!」

本田「……アンドロイドの肩車の所はきつかったです。改善を要求します。」

綾を肩車、いくらパワードスーツを下に着込んでいるとは言え1t以上のアンドロイドを肩車はきつかった。

綾は下を向いてしまった。何やら小言をつぶやいている。

ツアーガイド「まあまあ、所で、兵長はまだ未婚ですよね?」

本田「?はい、未婚です。」

ツアーガイド「よければ、連絡先を交換しませんか?」

本田「あー、ごめんなさい。オレは交際とか結婚とかに興味ないんで。」

ツアーガイド「あ、LGBTの方でしたか、変なこと聞いちゃいました、忘れて下さい。」

玉「特務少尉そろそろ。」

ツアーガイド「では。」

そそくさと、ツアーガイドはバスに乗り込んだ。

バスを見送る三人、綾は本田を見た。

本田「違うぞ。反出生主義者って奴だ。」

玉「そうですよねぇ……」

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