ハナタバ
朝焼け
日の出とともに飲むブラックコーヒーが冷えた体にしみる。
本田「……砂糖が足りない。」
ハンガーに戻った本田と摩耶は兵員輸送車の近くのベンチに座っていた。
摩耶「西尾、大丈夫かな?」
本田「前任を疑うんだ。普通は気が動転するさ。」
摩耶「……前任のさ、コードネーム“ブラックコーヒー”なんだ。」
本田はコーヒーに映る自分を見つめた。
摩耶「他の仲間を売ったのかなぁ?」
本田「……さあな?不可抗力だった。んじゃないか?」
狭山の執務室に報告に行く。
大佐殿は上機嫌だ。
本田「早く、捜索部隊の編成を進言します。」
狭山「そのことだがな、本田兵長、捕物は県警に任せようと思うんだ。」
本田「危険です!つか、何故?!」
狭山「まぁまぁ、アイツラも冷や飯食らいだ、たまには、花を持たせてやらんとな。」
地方の制服組自衛官。もう、退職後のポストの心配をしてる風だ。本田は口をつぐんだ。
ハンガーで摩耶達に話す。落ち着いた西尾がまた、激昂する。
西尾「俺は、奴にあったら言いたいことがあるんだ!」
本田「西尾。落ち着け、オレたちの仕事じゃなくなったんだ。」
クソッ、西尾は近くのコンテナを蹴り上げた。
摩耶「西尾。そうだ、今日、有給取ろうよ。」
西尾「……そうだな。悪いな、大将。俺達は今日は休むぜ。」
本田は一人田園地帯に向かった。
警備ロボットを展開させ、辺りを見回る。タバコが美味い。灰をハゼ道に落とす。今なら誰も気にすることはない、のびのび吸える。
さて、放棄されたサンカの収穫作業ロボットは
本田「後で、回収してもらうか。」
そこへ兵員輸送車を運転していたアンドロイドが本田に駆け寄ってくる
運転用アンドロイド「隊長。西尾隊員から、これを経費で落としてくれと言われてます。」
アンドロイドがアンドロイドのスマホの画面を見せる。
本田「……無理だろ。まぁ、いい。俺がなんとかする。と伝えといてくれ。」
夕暮れの食堂
帰ってきた本田は一人ラーメンをすすりながら、
壁にかけられたテレビを見ていた。
玉「ここいいですか?」
本田の正面の席に玉が座る。その手にはメンタルチェックシートが見えた。
ここでやんのか。本田は顔をしかめた。同時にテレビニュースが速報を伝える。
テレビ「今、入ってきた報道によりますと、県警がサンカのアジトに突入し、構成員と銃撃戦になったもようです。」
いわんこっちゃない。本田はコップの水を一気に飲み干した。
テレビ「繰り返します。県警がサンカのアジトに突入、銃撃戦になり、双方に多数の死傷者がでているとのことです。」
玉もテレビに向く。
玉「とりあえず、サンカのアジトを一つ潰せましたかねぇ?」
本田「そう願いたい。」
玉は本田に向き直る。
玉「本田兵長、着任早々、大変でしたね。」
本田「大丈夫、こんなの、義勇軍に居た時の方がしんどかったさ。」
だから、メンタルチェックの必要はない。
玉「そうですか。」
玉はチェックシートをしまった。
玉「美味しそうですね。ラーメン。」
本田「やらないよ。つか、食べれないだろ?」
玉「まぁ、そうでした。」
玉はニコニコしながら、本田が食べるのを眺めている。
変わった趣味だ。
自衛官の朝は早い
玉と綾から無事に米を取り返せたと連絡が入る。
本田「それが聞きたかったのよ。」
ハンガーに向かう途中で西尾と摩耶のコンビと合流する。
西尾「いろいろ世話になっちまったな、大将。」
摩耶「今日もよろしく。隊長さん。」
本田「あんなもん何に使うんだ?」
西尾「まぁまぁ。」
本田もそれ以上、聞くことはなかった。
本田「あと、二、三日で収穫も一段落するかなぁ。」
本田は残りの農地に思いを馳せた。何事もなく終わるのが一番だ。つくづくそう思う。
摩耶「そうだ。隊長さんの歓迎会がまだだったね。」
西尾「おぉ、すっかり忘れてた。」
二人がコンバットスーツを着る間ベンチで摩耶は待った。足をパタパタさせている。
本田「要らないよ、それこそ経費は全額負担だ。」
ロッカーを閉めながら本田は言う。
西尾「そう言うなって。オレたちだけでやろうぜ。」
摩耶「人数がさみしいから、綾と玉にも声をかけとくよ!」
伊勢「なんだよ、それ俺も混ぜろ。」
奥で聞いていた整備長が顔を出す。
歓迎か。ここでは俺は必要とされるらしい。本田は下唇を噛んでいた。
本田「そうか、ありがとう、皆。収穫が全部終わったら歓迎会をやるとしよう。」