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黄金の大地  作者: k0uk1s1n
2/22

サンカ

早朝のハンガー、隊員、整備員達が慌ただしく動いている。あくびをしてるのは人だろう、にしては少ない。

生身の人間は本当に少ない。

本田「地方はこんなもんか。」

西尾「大将、何の話だい?」

並んだロッカーには男二人。まだ馴染めてない顔を拝む。美人ならよかったのにと本田は肩を竦める。

本田「コンバットスーツ、めんどくさいよな。」

西尾「仕方ないんじゃね?収穫前はどこも一緒だろ?」

秋、米の収穫前は盗難事件が全国で多発する。

犯罪者組織が武装してるなんてことも多々ある。

日本産の米は世界に向けて輸出される。ブランドが付いて高値で取引される。収穫量が出世にも影響するほどだ。

西尾「自分らは外国の安い米、制服組の出世の為だけの命さ。嫌になるぜ。」

本田「よせよ。聞かれる。ボーナスに響くぞ。」

西尾は笑う。二人の後ろから近づいてくる人影があった。本田はホルスターに手をかけて咄嗟に振り向いた。

そこには女性型のアンドロイドが立っていた。

羽っ気のくせ毛のセミロング、どこか遠くを見てる目、

気の緩んだ眉、小さい鼻。

背中から伸びたレーダーが瞬きするかのように、

カシャカシャなっている。

自分達と若干作りの違うコンバットスーツに身を包んだ。しかし、彼女はこの時代には不釣り合いなものを持っていた。

本田「弓?それも和弓じゃないか。」

西尾「こいつの趣味さ、普段通りだな。摩耶。」

摩耶「この人が僕らの隊長さんかな?摩耶だよ。昨日はメンテだったんだ。ごめんね?」

本田「本田だ。階級は兵長になる。」

西尾「こんなだが、まぁまぁ、頼りになる。な?」

摩耶「そうそう。僕が助けてなかったらこの人、今ごろ墓んなかだw」

乾いた笑いだが、笑い方は西尾とそっくりだ。だいぶ長いコンビらしい。


本田「儀式いる?」

西尾「いや?いらねー。めんどくさい。」

摩耶「だめだよー二人とも。ちゃんとでなくてもいいからやること言わないとー。後で、怒られるよぉ。」

本田「てことなので簡単に、任務としては収穫作業ロボット達の近辺警護だ。1日かかると思う。俺と西尾は交互に休憩を取る。その間は片方と摩耶、警備ロボット。気を抜くなよ。」

行こうぜ。西尾の掛け声で皆、装甲車に乗る。中はすでに警備ロボットでいっぱいだ。こんななら人入れたらいいんじゃないか?と本田達はロボット達の詰まった狭い空間に腰をねじ込む。

本田「……人員問題。」

西尾「まぁまぁ。」


現場に着く。収穫作業ロボット達が、突っ立っている。

西尾「!おいおい、なんだこりゃ。」

摩耶もアチャーと言って顔を覆う。

米がない。

辺り一面にあったであろう、それは無くなってまばらに稲と葉が散乱してるだけだ。ざっと五反田分だろうか?

本田達はすぐさま状況を確認した。

摩耶「あ、切られてるよ。」

うまく擬装しているはずの監視カメラ、警報機のケーブルは切断されていた。

地面の足跡を調べて西尾が立ち上がる。

西尾「人かぁ。」

どこの組織だ?心当たりが多過ぎる。そんな顔だ。

本田「業務は中止だ。摩耶、足跡を本部に送っとけ。」

摩耶「オッケー。」

目だけでスキャニングして画像データを本部に送る。

アンドロイドは便利なもんだ。

西尾「あー、始末書もんだぜ。」

本田「それで済めばいいがな。警備ロボットを残して撤収する。」

摩耶「状況の報告もいる?」

本田「帰りながらでいいぞ。」


駐屯地、狭山の執務室

狭山「五反田もかぁ……」

報告を聞いて狭山は頭を抱えた。

本田「自分達でなんとか取り戻してみせます。」

それまで始末書は勘弁して。は、さすがに言えないが。

狭山「どのくらいで、できそうだ?」

本田「1週間くらいです。」

ほぉ。本田の自信ありげな返答に狭山は心穏やかでないにしても、関心した。

狭山「早速、取り掛かってくれ。」

本田は短く敬礼すると部屋を後にした。


本田「出たか?」

監視カメラの詰め所の部屋に入ると同時に、

中にいたアンドロイドに声を掛ける。

幼女体型のアンドロイド。後方支援、内務担当をしている。

ジト目で本田を見てくる。

本田「監視カメラの管理は君の担当でもあるだろ?綾。」

綾「そうですけど、」

綾はバツの悪そうな顔をする。本田は言い過ぎたか?とは思いつつも続ける。

本田「靴底の形状からメーカー、流通経路が分かるはずだ。」

市販の靴であってくれ、本田は内心そう思った。

綾「国内メーカーのやつですね。長さは28cm、沈み込み具合からして体格は良さそうです。この人。」

本田「上出来だ。偉いな。」

意外な言葉に綾は照れ隠しする。

本田「もう一度、足跡を見たい。出せるか?」

綾「画面でよければ。」

綾は慣れた手つきで画像ファイルを開く。先ほど見た

田畑に残っていた足跡。本田は画面に食い入る。

本田「……ふーむ、長いことはいてるな、この靴。」

綾「初販から、3年です。」

本田「サンカかな?綾、ハンガーに繋いでくれ。」

西尾達に確認することがある。


西尾「大将、どうしたんだ?なんかわかったのか?」

本田「西尾、前任の死体を確認したか?」

摩耶「あー、あの人だけ、行方不明で死亡扱いですね。」

西尾「!何がいいねぇんだ、大将。返答によっちゃただじゃおかねーぞ。」

西尾も気がついた。だが、信じたくなかった。

今は語るまい。本田は目と口をつぐんだ。

綾が回線を閉じる。

本田「……綾、通販サイト、闇バイトのサイトを24時間監視といてくれ。特に格安の新米を売るアカウントだ。」

綾「了解です。」

本田「それと、県警にも連絡を、直近の失踪者の顔写真をもらいたい。」


本田は自分が義勇軍上がりということにコンプレックスを抱えていた。そのことで前の駐屯地では窓際族。出世街道には乗れなくても、それなりの役職、やりがいはもらえるだろうと思っていた。しかし、聞こえる音量の陰口を聞かされ、施設アルバイトで済むような雑務を押し付けられる日々だった。

本田「……斥候の経験がここで生きるとは。」


夜の田園地帯

本田と摩耶は山の麓の背の高い茂みに隠れて田園地帯を見張っていた。風が冷たい。コンバットスーツの上に何か羽織りたい。

本田「さすがに冷えるな。」

摩耶「僕らは何ともないけどね。隊長さん、無理してんじゃない?」

そうも言ってられない。西尾は情緒不安定で現場には出せない。

本田「大佐殿にも許可を取り付けたんだ、何かつかめないと……」

遠方に光。向かいの山。本田は茂みから顔だけ出して暗視スコープで確認する。

私服にちょっとした軽装の男性が二、三人出てきて、ケーブルを切断していく。

摩耶「隊長さん、隊長さん。踏み込まなくていいの?」

本田「摩耶、合図を待て。」

男達はケーブルの処理が済むと山から収穫作業ロボットを出してきた。

本田「今だ!」

本田はスナイパーライフルを構えると初弾で作業ロボットのライトを狙った。

闇夜に銃声が轟き。男達は慌てふためく。

本田「摩耶、殺すなよ。」

摩耶「オッケー。」

トン、和弓の矢が男達の肩口を捉える。

まさか、銃声の次に矢が飛んでくるとは誰も思うまい。

男達は急に暗くなって、矢を受けて、這々の体で山に逃げていった。

本田「上出来だ。摩耶。」

摩耶はへへへ、と笑う。






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