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黄金の大地  作者: k0uk1s1n
13/22

小玉

本田と玉は一夜を共にした。

それからは本田はタバコをやめ、休みの日には玉を連れて都会に出かけた。そんなだから、駐屯地内ではすぐに噂になった。

狭山「聞いたぞ?兵長。アンドロイドを囲ってるそうだな?」

食堂で狭山が本田に詰め寄る。

本田「はい。それが?」

恋。ソレは人を強くするのかもしれない。

狭山「恥ずかしいやつめ。わかっているのか?彼女はアンドロイド、この駐屯地の所有物なんだよ。」

本田「これから、現場に行きますので。」

本田が食堂を後にすると狭山は近くの椅子を蹴り上げた。


その夜、本田は玉の夢を見た。玉は質素な着物姿だ。

玉「晃一さん、我らの子ですよ。」

は?たしかに玉は誰かを連れてきた。その子は人の形だが光っていてよく見えない。

本田「そーか、そーか、では小玉と名付けよう。元服したらもっといい名前をやるからな!」そう言うと、本田は小玉を抱き上げ、玉もその光景をニコニコしてみている。

俺もなんだか口調が変だ。夢だからな?


それからというもの、昼も夜も幻聴に小玉が出てくるようになった。

「お父さん、お父さん。」とついて回ってくる。

本田はそれが楽しかった。

西尾や摩耶も本田が幻覚行動を取るのを、生暖かく見守るのだった。

狭山との一件以来、玉とはあまり会えなくなった。

寂しさから、本田も幻覚にのめり込んでたのかもしれない。


摩耶「隊長。最近、一人で笑ってるけど、いいことあったの?」

本田「そんなに笑ってるか?」

そうだよ、と西尾も言う。摩耶の肩のレーダーが相槌するかのようにカシャカシャなる。

西尾「大将、メンタルチェック受けたほうがいいんじゃないか?」

自分では、受け答えもできてるし、思考も正常だし、

大丈夫だと思うんだけどなぁ。

摩耶「あ、玉さんと会えてないからかな?」

西尾「だいぶ派手にやってたからなぁ、玉さんと大将。」

摩耶「狭山大佐ってあぁ見えて、嫉妬深いとこあるよね。」

西尾「既婚者なのにな?」

伊勢「こら!テメーらゴチャゴチャ話ししてねーでさっさと現場にいかねーか!邪魔だし、うるせーし、他の兵員輸送車が出られねー!」

朝から怒られた、萎える。

幻聴の小玉が励ましてくれる。いい子だなあ。


小玉「……父さん、お父さん。」

これは夢か?霧の濃い古い町並みに光る子供。

本田「どうした?厠か?小玉。」

小玉「違うよー。僕にも体ができたんだ!」

本田「おぉ、そーか、お前も現世に行けるのか!よかったな!」

小玉「僕、お父さんを守れる立派な人になるよ!」

そこで本田は目を覚ました。ここはベッドの上、小さな窓のカーテンの隙間から光が差し込んでいた。


それから幻聴にも夢にも小玉はでてこなくなった。

寂しい。急に元気をなくした本田を見て西尾と摩耶も心配になった。

摩耶「隊長、休んだほうがいいんじゃない?」

西尾「医務室で紹介状書いてもらってメンクリ行ってこいよ。」

本田「大丈夫だよ二人とも。」

これ以上、心配もかけられない。本田は言う通り、その日は休むことにした。

といっても、体は元気で、タバコも今はやめてしまって喫煙所で時間をつぶすわけでもない。

本田「言われた通り、精神科の予約でも取るかな?」

そんなことを考えていると向こうから玉が歩いてきた。

本田「玉、久しぶり!今度どっか行こう!」

玉は本田を避けるように速歩きで通り過ぎていった。

本田はあげた手をおろせずにその場に固まった。

フラレタノダロウカ?思考が停止する。

玉にも相手にされず、いろいろ構っていた、構ってくれていた小玉もいなくなった。

さすがに本田は寝込んでしまった。


摩耶「やりすぎじゃないかな?隊長。」

西尾「またヘッドショットかよ。」

それからというもの本田は現場で害獣を見つけるとすぐに処分していた。どんなに遠くても頭に2発撃ち込んでいた。

本田「……元スナイパーだからな。」

八つ当たり。そうかも知れない。本田は職務に没頭した。他のことを考えないように、1人の時間も図書室で哲学書を借りて読みふけった。


ある日、また玉と廊下であった。

本田は玉の反応が怖くて下を向いた。しかし、今度は

玉が本田の胸の中に飛び込んできた。

玉「……何も聞かないで、アナタ……」

本田は震える玉の方をそっと抱いた。

自分はフられてはなかった、安堵感。まだ、必要とされてる。その事が嬉しくて、本田は声を出して泣いた。


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